過去の話
過去編 女神様が生まれた理由
これは昔、日本のある村で起こった出来事。
うん?父上とだれかが話してる?
「次の・・・はあんたのとこの・・」
「分かってる。」何の話だろう。
「会いたかった。惣兵衛さん。」
「ああ、僕も会いたかった。今日は何する?」
「そうだな。今日は・・・」
「楽しかったわね。」
「そうだね。」この人は親に内緒で付き合ってる恋人の惣兵衛さん。とっても愛してる。離れたくない人。
「あ、私そろそろ帰らなきゃ。」
「そっか、じゃあね。」
「ええ、またね。」
「ああ、ちょっと話があるんだが。いいか?」
「ええ。なんですか?父上。」
「お前にニエをしてほしいんだ。」
「ニエ?嫌です!」
「だめだ、拒否権はない。」ニエっていうのはこの村の大切な儀式の生贄のことだ。生贄ってことは死ぬってこと、それはもう惣兵衛さんに会えなくなるという事。
「そんなのってないよ。」力なく呟く。
ニエは儀式の一週間前には蔵みたいなところで一人で居なければならない。蔵では巫女以外は近づくことも入ることも許されない。儀式前日は何も食べられず、胃を空っぽにして儀式を行う。儀式当日は、呪術師が呪文を唱えて神様を起こす。それから崖の上から海へ健康な若い男か女を神様に捧げる。儀式というのは、こうすることで村に災害を起こさないように祈願するものらしい。しかし、今はもう儀式の一週間前の前日だ。いうのが遅いと心の中で怒る。けど、拒否権はないのだから、何を言ってもダメだから、心の中で抑えておく。
__次の日___
「さあ、行くぞ。」腕を引っ張られて蔵まで連れていかれる。
「待って!」掴まれた手を払いのけ一目散に走る。目的地はそう、惣兵衛さんのところ。
「はあはあ。惣兵衛さん!」
「ああ、君か。聞いたよ。ニエに選ばれたんだってね。」
「ええ、そうよ。だから今日は白装束を着ているの。えっと、最期に伝えたくて、愛してるって。」
「そうか、もう君とはお別れなのか。」
「泣かないで。もう一つ、私のことは忘れて幸せに生きて、お願い。」
「君を忘れることなんてできないよ!」
「いたぞ!さあ、戻るぞ!」
「さよなら、惣兵衛さん。」
「待って、行かないでくれ!」辛い。苦しい。でも、耐えなきゃ。
一週間後。
怖い。でも、ここから飛び降りるまで儀式は終わらない。一歩前へ出る。あ、落ちてる。私。海の中って、寒いなあ。海の中でも落ちていくのを感じる。きっと皆これで笑顔になってるのかな。笑顔?そんなのおかしい!どうして、私ばっかり辛い思いをしなくちゃいけないの?あいつらが憎い!許せない!
「許せないか、では君に力を与えよう。」
「誰?」
「私はこの村の神だ。生贄を捧げている神だな。でも、私もそろそろ隠居したくてな、後継者を探していたんだ。君にはそれを受け入れられるほどの器がある。どうだ、神になってみないか?」
「これで、アイツらに痛い目見せられる?」
「ああ、見せられるとも。」
「やる。私、人の死で笑うアイツらが許せない!」
「では、これを。」そう言って透明の宝石のついた首飾りを私に渡す。
「これは?」
「これは、君の核だよ。力の源。これが壊れれば君は死ぬ。」
それから、私はこの神に力の出しかたを習い、津波を起こした。もちろん、惣兵衛は助けた。その後、しばらくして何度も人間の綺麗な部分を見てきて守ろうって思えるようになって村を守ることにした。
それで、現在に至る。これが、女神様が生まれた理由。
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