敗戦の章
第22話 一方的な
すると、また触手が伸びてきて今度はユヅキちゃんを捕まえた。そして別の触手で殴った。何度も何度も。顔を。腹を。
「やめて!痛い!もう殴らないで!」ユヅキちゃんは泣き叫ぶ。許しを請う。
「やめてください。ごめんなさい。」段々声は弱々しくなっていく。それでも触手は殴り続ける。私達は助けたかった。でも、足がすくんで動かなかった。ユヅキちゃんが終わったら次は自分の番かもしれないと思うと、怖くて動けない。
『あら。仲間がやられてるのに助けないの?あなたの仲間はひどいのね。助けないってことは死んでもいいってことよね。』
「いや。死にたくないよ!助けて!誰か!」私達に向かってユヅキちゃんは最後の力を振り絞って叫ぶ。
『何もしてこないってことはイエスってことよね。』と言った。
「やめて。柚月ちゃんから手を放して!」ミオちゃんは、槍を手に取って怒りのこもった声で叫んだ。
『フフフ。そうよね、大事なお友達が死ぬところはもう見たくないでしょうね。』
『でも、こいつを殺すことは決まっているの。だって、こいつ私の周りを蚊みたいに飛び回ってうざかったのよ。あなた達だって部屋に蚊がいたらこうやって潰すでしょ。』そう言いながら弱ったユヅキを2つの触手で潰してしまった。それでもユヅキちゃんはギリギリで避けたのか生きていた。
『そうよね。蚊ってそうやって全然倒せないのよね。』
「っわたし、は、蚊じゃない。」と言いながら私達の方へ走って逃げようとする。でも殴られたせいなのか、足を引きずりながら走る。
『まあ。そうよね。』と言いながら触手はユヅキちゃんを掴む。そして、ほかの触手でユヅキちゃんの体を突き刺した。
「ぐはっ。」ユヅキちゃんは大量の血を吐く。
『あら、もう動かなくなったの。さっきまで生命力に満ちていたのに。』そして触手はユヅキちゃんの体を私たちの方へと投げてくる。ユヅキちゃんの腹には大きな穴が開いていて、その穴から体の中が見えている。
「柚月ちゃん、いやだよおお」ミオちゃんはユヅキちゃんの体を抱きしめて泣いていた。ユヅキちゃんの血がミオちゃんの桃色の服を真っ赤に染めていく。ミオちゃんの涙がユヅキちゃんの動かなくなった体を濡らしていく。その光景を私は涙も流さず呆然と見つめていた。
「よくも、よくも柚月ちゃんを!」ミオちゃんは槍をたくさん作り、大きくして驚くことに宙に浮かばせて、ヤツをその槍で囲んだ。そして、一斉にヤツの体を突き刺していく。その攻撃を何度も、何度も繰り返していく。
『そんな、大きくしたところで槍で刺された穴などすぐ塞ぐことができるというのに。』ミオちゃんはヤツの言葉など聞こえていないように何度も、何度も攻撃を繰り返す。
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