第21話 決戦 上
6時のチャイムが鳴る。私達は移動する。住宅街の中はどの家も同じ作りでとてもきれいな家が並んでいる。その中に他とは違う作りの大きめの家があった。
(この家でいいんだよね?)
(ええ。あなた達の目の前にある家よ。扉を開けて入って。)するとユヅキちゃんは
(あ~緊張してきたー!)それに反応してミオちゃんが
(確か掌に“人”って書いて飲み込んだら緊張がほぐれるんだよね)それを聞いてユヅキちゃんは本当に実行していた。
(二人とも、そろそろ入ろう。)私は声をかける。
((はい!))二人の元気な言葉が頭に響く。案外扉は普通だった。ドアノブ手をかけて押してみる。音もたてずに静かに開いた。そして、〔ガチャン〕小さな音を立ててドアが閉まったと思ったら、さっきまでは普通の家の内装だったはずなのに、急に闇が広がった。壁も天井も何もかもがなかった。あるのは白い一本の道。それをたどって私達は慎重に歩く。そしてその先に私達よりはるかに大きい女性が座って眠っていた。その女性は黒く長い髪と真っ黒なドレスを身にまとっていた。そして何よりも足が人のものではなかった。タコのような触手だったのだ。しかし、ピクリとも動かない。
と、次の瞬間ゆっくりと女性の目が開いた。私達の存在を認識すると、口が弧を描きゆっくりと開いた。歯はサメのような尖った歯でとてもヤツが人間とは認識できなかった。ゾクッ、背筋が凍る。するとヤツは
『あら、来たの。いらっしゃい。さあ遊びましょう。』と言って立ち上がった。確かにその声はあの時私に声をかけた女神の声だった。でも、その声はどこか私達を嘲笑っていて、これから起こることが楽しみだという愉快さが滲み出ていた。その声と同時に私達が立っていた白い道はガラスの破片のようにパラパラと崩れていった。これで、どこを見ても闇しかなくなって、上も下も右も左もわからなくなってしまいそうだった。
『本当のことは聞いているでしょう。そのことは知っているわ。あの子の言ったことは間違っていないわ。すべて本当よ。でも、あなた達は信じたくないのでしょう?』とニヤついた顔でヤツは言った。
恐怖で足がすくむ。でも、やらなくちゃ。きっとほかの二人も同じ思いで武器を構えている。まず、ミオちゃんが槍で攻撃をする。ユヅキちゃんがパンチを、キックをぶつける。私は二人が戦っている間に剣に魔力を込めて足を踏ん張ってみんなに声をかける。
(行くよ!)そう言って。
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