第7話  夕日に照らされて   A

私たちはミコトさんのいる方を向いた。すると、夕日に照らされた影が二つビルの上に見えた。一つは人間の影。これはミコトさんだろう。もう一つはそれより大きい影。これは魔獣の影だろう。大きな影は小さな影を捕まえている。二つの影は何かしているようだが、こちらからは分からない。何か聞こえた。ミコトさんからの脳内会話テレパシーだった。

(___二人とも。____ね。あr______。s____ら。)ノイズがすごく何を言っているか聞き取れなかった。けれどミコトさんは笑っていたような気がした。

次の瞬間、二つの影はビルから真っ逆さま。どんどん落ちていく。すると、ドーン。あまり大きくない爆発音がする。二つの影は粉々になっているように見えた。きっとミコトさんは自分を犠牲にして魔獣を倒した。

そう頭では理解してても、心は理解できない。ただ茫然としているしかなかった。すると何を思ったのかリンが

「ミコトさんのところへ行こう。」と言って、走っていったので私も慌てて追いかける。

ミコトさんのいたところへ着くと、そこは火薬の臭いと血の臭いなどが混ざって悪臭がしていた。足元は魔獣の血とミコトさんの血が混ざって黒い液体が流れてきていた。リンは何かをじいーっと見つめていた。駆け寄ると、そこにはいろんな肉片が散らばっていた。けれど私が一番に目についたのは、少し焦げた紫色の布だった。それはもうミコトさんは生きていないのだと物語っていた。リンは黙って飛んで行った。私も追いかけようとしたとき、ミコトさんだったものが灰になっていた。一瞬で灰になったかと思うと、そこには光るものが見えた。綺麗な紫の宝石だった。あ、これは。魔法少女には左の手の甲に宝石がついている。これは魔法少女が戦いを諦めると土になっていくのだという。何度も諦めると、魔法少女自身も灰になるとミコトさんがいつか言っていた。まずい。リンを追いかけなきゃ。私はその場で手を合わせると、リンを追いかけて行った。

その後ろで光るミコトさんの宝石を拾う影がちらっと見えたが、今はリンが気がかりだ。早く追いかけなくては。

リンは案外近くにいた。公園のベンチでうなだれていた。

「リン。」

「私が悪いよね。ミコトさんの言葉を信じようなんて言ったせいでミコトさん死んじゃったんだよね。」

「そんなことないよ。ミコトさんきっと信じてくれて嬉しかったと思うよ。」

「そうかなあ。」

「そうだよ。」そう言うと、リンは泣き出した。

「何でミコトさんみたいな優しい人が死ななきゃならないの?今も犯罪者や魔獣みたいな悪は死んでないのに。うぅ。」

以前リンはトークで、

【私、美琴さんみたいな魔法少女になりたいな。】と言っていた。リンにとっては憧れだったのだろう。だから余計に悲しいのかもしれない。私はその時、リンと一緒に泣くことしかできなかった。

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