新生活の章

第6話  あの人の隣に

午後5時。陽が西へ傾き始める。公園で遊ぶ子供。犬の散歩をするお爺さん。いろんな人のそれぞれの日常。そんな平和な街には似つかわしくない不気味なサイレンが流れる。人々は慌てて近くのシェルターを探す。親は子を守り、兄は弟を守りながら。人々の流れる向きとは反対を向いて私は走る。途中、警察の人に声を掛けられる。

「君、危ないからシェルターへ急ぎなさい。」と。けれど私は無視して走る。私は戦わなければならないのだから。

「遅いよ。ハル。」

「ごめん。委員会があって学校出るのが遅くなっちゃって。」

「二人とも、敵が目の前にいるのよ。」

「「ごめんなさい!」」

「気が引き締まったところで、変身しないとね。」ミコトさんの言葉を合図に私たちは変身する。今日の敵は大きい。10メートルあるんじゃないだろうか。その大きな魔獣は私たちめがけてがれきを投げてくる。私たちは慌てて魔獣から距離をおく。私は最後尾で二人をガードで守る。

「危なかったね。これからどうしよう。」リンが口を開く。

「今回大事なのはリンね。離れたところからどれだけ攻撃できるかにかかっているわ。」

「でも攻撃するとき、多くのダメージを与えるには時間がいるよ。」

「その時間稼ぎは私たちでやるわ。」そのあと作戦会議を少ししてからもう一度、敵に挑んだ。

あれ?小さくなってる?10メートルの体はいつしか5メートルに、5メートルの体は3メートルになっていた。

「よし、これなら勝てそう。」

「そうね。リンにも伝えておきましょう。」小さくなっていることを遠くで攻撃しているリンに脳内会話テレパシーで伝える。

(リン。敵が小さくなってるみたい!)

(ホント!?じゃあ、このままいけば勝てるかも?な感じってこと?)

(うん。そうみたい。もう少し頑張って。)

(わかった。そっちも頑張ってね。)

よし。頑張ろう。私は気合を入れなおす。すると、魔獣の手がミコトさんの体へ伸びる。あわてて、魔獣の手を体から剣を使って引きはがす。

そのあとも攻撃を避けながら、魔獣を攻撃して小さくしていった。2メートルより少し大きいくらいで魔獣がそれ以上小さくなることはなくなった。

「ラストスパートよ。ハルちゃん。」そうミコトさんが声をかけると、思いっきり魔獣がミコトさんを遠くへ飛ばす。ミコトさんの悲鳴が聞こえる。魔獣は私たちよりも大きいのに私より数倍速く動いている。ミコトさんのところへ行った魔獣は私になんか目もくれず、ミコトさんを攻撃していた。

「やめて。ミコトさんから手を放して。」私は剣を構える。ミコトさんが魔獣の手につかまっていた。ぎゅうっ。強く握りしめていて生身の人間だったらきっとしんでいるだろう。助けなきゃ。苦しそうなミコトさんを助けなきゃ。剣を振りかざし、魔獣へ攻撃しようとする。しかしその時、

(駄目よ。攻撃しては。私にはまだが残っているから。こいつから逃げて。)ミコトさんからの脳内会話テレパシーだ。

「でも!ミコトさんを置いてはいけません!」私は叫んだ。すると、私の体がフワッと持ち上がる。リンが私を持ち上げていた。すると、リンはミコトさんから離れるように隣のビルへ隣のビルへと飛び移る。

「だめ!リン!まだミコトさんがっ!」そう言うと、リンは、静かにわたしをその場におろし、こう言った。

「ミコトさんの言葉を信じようよ。」こう言われたら私は何も言えなくなって、ただ、うん。と小さくつぶやくしかなかった。

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