第2話  舞い降りる女神

私が急に真っ暗などこかへ一人取り残されているようなきもちになった。しかし、一向に魔獣が襲ってくる気配がない。私は怖かったけど、ゆっくり目を開ける。おかしい。いつもの私の町であることは間違いない。けれど、どこかおかしい。その『おかしさ』に気づいたのは、さっきまでコンビニだった建物を見た時だった。あのコンビニの色は、たしか赤と白と黄緑だったはず。看板もその色だったはずだった。でも看板は黒と白とグレーになっていた。『おかしさ』は色がないだけではないようだった。魔獣に近づいてみても、魔獣はピクリとも動かない。さっきまで殺そうとしていた相手が目と鼻の先にいるというのに。まるで私一人だけの世界のようにも感じられる。

すると、そこに一人の女性が舞い降りてくる。人が舞い降りてくる、なんておかしい。きっとそう見えただけだ。そんなことを思っていると、女性がこちらを見て微笑み、ピンク色をしたきれいな唇からありえない言葉が私の方へと飛んでくる。

長尾千春ながお ちはる。」

「どうして私の名前を知っているんですか?」驚いて相手の話も聞かずに質問をしてしまう。女性は笑ってごまかす。

「そんなことより、あなたにひとつ提案をしたくて参ったのです。」

「提案?」

「ええ。その内容はというものです。」私は混乱した。妹はさっき死んだのだ。生き返らせるといったその女性の認識が変わり女神と認識する。わたしは妹とまた暮らせるのなら何でもする。そう思って私は女神にこう言った。

「お願いします。妹を生き返らせてください。」けれど女神は

「けれど、生き返らせたなら、あなたは義務を負うことになりますがかまいませんか。」

「もちろんです。妹が生き返るのなら、何でもします。」そう言うと、女神は私の方へ手を伸ばし、肩に手を置いた。すると私の恰好は瞬く間にきれいな赤い色をした衣装へと変わっていった。

「なにこれ?」気づくと私の手には大きな剣があった。女神は

「あなたはこれから魔獣と戦ってもらいます。もちろん生身の人間では勝てないので、変身した時だけ身体能力を高めていますが。」なるほど。と思ってはいるが、ぜんぜん理解できていなかった。そんな私など見えていないかのように女神は話を続ける。

「もしあなたが戦うことを放棄したり、負けを認めた時にはあなたの妹は灰となって死んでしまいます。また、あなたが大きなダメージを負った時にはあなた自身が灰となって死んでしまいます。」

「あと、変身した姿でダメージを負っても、変身していない時間でそのダメージは回復します。」

「魔法少女には一人一つ特別な力があります。あなたの場合、防御結界ガードです。けれど上半身を覆うほどの大きさしかないので気を付けてください。」

「それでも、本当にこの提案を受けますか。」何と言われようとも私の気持ちは変わらない。だからこう答える。

「もちろんです。」と。

「分かりました。」と女神は答えると、妹の方へ歩いて行って妹の体を光っている球体の中へ取り込んでいった。そして球体の中から妹を取り出して、元居た場所へ戻すと、

「では、頑張ってください。」そう言った女神は空へ吸い込まれていくように消えって行った。


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