五、
八千代トンネルは、以前より増して、薄暗く、生臭かった。気の所為だろうか。いや、妖怪世界で起こっている事件を想定すれば、十分にあり得る。この生臭さは、妖怪に喰われてしまった、人間の血の臭い。綺堂と夏芽は、手をつないで、トンネルを抜けていた。綺堂は半妖半人、妖怪の臭いが多少はある。夏芽の臭いを隠す手助けになるだろう、との事だった。
綺堂と手をつなぐのは、何回目だろうか。思い返す。去年の夏に、助けてもらった時、冬に蟲男から逃げた時、そして由宇奇を助けに向かった時……四回目くらいだろうか。こんなに手をつないでいれば、仲を疑われても仕方がない。夏芽だって、綺堂に気がないわけではない。しかし、そうだ、と言ってしまったら、折角できた沢山の輪が、崩れてしまうような気がした。だから、“確信”に至るまで、決して頷かまい、と決めていた。例え、誰にどう、謝意だ意気地なしだと馬鹿にされようと、決して「はい」と言わずにおこう。それが夏芽の中で勝手に取り決められた法則だった。その方が、縛りもなく、夏芽も楽だった。
綺堂はこうやって手をつないだり、命がけで夏芽を救ったり、両親にあいさつをしたり、夏芽に一生懸命“尽くして”いるように見える。しかし、真実はどうなのだろうか。彼の気持ちは、本当にわからない。顔にも表れない。感情を黒い布で覆っている様だ。そんな綺堂を見て、夏芽は時々不安を感じるのであった。夏芽は不安を感じているという事を感じ取らせないように、平静を装うのも一苦労だ。
八千代トンネルを抜けると、曇天のじめじめした中央通りが二人を迎え入れた。妖怪たちが、彷徨い歩いている。西洋のサイコホラーや、“ゾンビ”を思わせた。夏芽は「ひっ」と息を呑み、綺堂の後ろに隠れた。
「夏芽さん、これから、人喰い女の家に行くまで、決して喋るな」
「わ、わかりました」
綺堂と夏芽は、彷徨う妖怪たちの間をぬって歩いた。時偶、妖怪たちが綺堂に近づいて臭いをかごうとする。
「人間の臭いがする」
その度、綺堂はそれをかわしながら、
「気の所為だ」
と言った。
夏芽と綺堂はぴったりとくっついたまま、中央通りを抜け、波奈野目優子の家に向かう不気味な細道にたどり着いた。転がるマネキンの生首を避けながら、尚も妖怪を警戒しながら歩く。夏芽も、冷や汗が頬を伝うのを感じながら、やっとの思いで、優子の家の前まで辿り着いた。
インターホンを鳴らす。
「はいよ」
中から優子の声がして、勢いよくドアが開いた。
「あんたたち、よく来たね。早く入んな」
優子に招き入れられるまま、綺堂と夏芽は優子の部屋に入った。優子は辺りを見回すと、ドアを閉め、鍵をする。それからふう、とため息を吐くと、真紅の着物を直しながら、二人をリビングへ案内した。
「他の妖怪たちは、みんなおかしくなっちまったよ。辰之助も、もうだめだね、言葉が通じない、ただ、人間を食べる食べるって言って、聞かないんだよ。恐ろしいことだよ」
優子は肩をすくめた。
「人間を食べる、とな」
「ああ、そうさ」
優子はいつもより少しやつれて見えた。
「妖怪は人を脅かしてこそ妖怪、それが美学って奴なのに、食べるなんて、殺すなんて、間違っているよ。あたしゃ、見てられない」
「この世界の秩序を乱した奴がいるという事だな」
「その事なんだけどね」
優子はそれから、はっとしたように、
「話の前に、紅茶でもどうだい」
と立ち上がって、キッチンへ向かった。キッチンで優子が紅茶に湯を注ぐ音か聞こえる。その間も、綺堂と夏芽は黙ったままだった。少しして、優子は紅茶をトレーに乗せて運んできた。今日は何を思ったか、レモンティだ。いつもは自分の好きな色であるローズヒップティであるというのに。
「今日は気分が乗らなくてね」
優子は夏芽の表情を見て言った。
「それで、その、秩序を乱した奴ってのがね」
すうっと紅茶を啜ると、
「うちに来たんだよ」
「え!」
夏芽は驚愕して飲もうとしていたレモンティを危うく溢すところだった。
「うちに来たって、なのに優子さん、平気なんですか?」
「相手もそれを不思議がってね。どうしてお前は、俺を見ても正気なんだい、なんて言い出してね、過去の話とかをさせられたよ。適当に話をして、でも一時間くらいかねえ、結構話して、一方的に帰っていった。あの子は一体何だったんだろうねえ」
「そいつは、長髪で、派手な着物で、右側の頬に包帯を巻いていたか?」
「ああ。どうして知っているんだい」
「向こうでね、妊婦が出産直前に殺されて、産まれてくる筈だった子供が連れ去られるという狂事件が起きていてね、その重要参考人が、そいつだ。というより、確実にそいつがやっているようだ。そして、夏芽さんの友人のお母さんが、次の犯行の餌食となりかけている」
「なんてこったい。人間世界と妖怪世界、両方ともおかしくしちまおうってのかい、あの子は」
「あいつの話は聞いたか」
「いいや、一方的に話をさせられて、自分の事は何にも言わずに帰っちまったよ。不思議な子だ。ただ、“洗脳”せれない妖怪がいることに驚いていたね」
「洗脳か」
「その子を見ると、何故か洗脳されるんだそうだよ」
「その洗脳って、治らないんですか?」
夏芽は不安になった。辰之助が、もう二度と、元の辰之助に戻らなかったらどうしよう。人を食べる悪魔になってしまったらどうしよう。
「これは僕の予想だが」
綺堂は言った。
「その男は、この“喪”という妖怪の妖力が弱まっている期間を使って、妖怪を操っていると言ったね。だから、この“喪”が過ぎれば少なくとも解決される問題ではある。そして、その男の“妖力”をなんとか解けば、妖怪たちは正気に戻るだろう。だから夏芽さん、安心しなさい。ぎょろ眼は、元に戻るよ」
辰之助を心配する夏芽の心情を察しての言葉だった。よかった、辰之助は元の優しい辰之助に戻る日が来るのだ。少しの我慢と時間が必要だが。
「それにしても、なんであたしは“洗脳”されないのかねえ」
「それは要するに、“妖怪”ではなくなってきているからだ、と僕は推測する」
「あたしゃ人喰い女だよ?妖怪さ」
「それは分かっている。だが、人を喰わなくなって何年になる」
「もう数百年に……」
「だろう。妖怪としての能力を使わなくなった妖怪には、拾の能力は効かないんだよ」
「でも、優子さん、初めてであった時私を襲いました」
「でも人は食べていないだろう?」
「はい……」
「そういうことだ」
綺堂はやるせなそうに言った。
「妖怪の世界にも、既に妖力を失った妖怪がいるとはな……」
「あたし、妖力が失われているっていうのかい?」
「全くというわけではない。少しは残っているだろう。だが、それは僕と同じ程度でしかない。だから人喰い、お前には効かないんだ、拾の“妖怪を操る力”が」
「でもなんで、あの子はあたしを襲ったりしなかったんだい。そんな使えない妖怪、消しておいた方が後々いいだろう」
「いや、半妖半人に、妖怪を消す力はない。そんな大それた力は持っていないんだよ。だから消したくても、お前を消すことは出来ない。第一に、奴の目的は”人間に復讐すること”だ。だから、妖怪を消したところで意味が無い。ただお前の元を訪れたのは、暇つぶしか好奇心によるものだろう」
綺堂は咳込んだ。
「それより言いにくいのだが、そいつに、由宇奇がやられた」
「秋人の坊やが」
優子が身を乗り出す。
「何があったんだい」
「分からない。とりあえず、とてつもない妖力で傷つけられたようだ。あの由宇奇が、三日間も目を覚まさずに、今もなお、病院から出られずにいる」
「あんなに力の強い半人でも、押し負けるなんて」
「押し負けるどころじゃない。ずたぼろだ。まあ、由宇奇の事だ、戦う前に、隙を取られてやられたんだろう。間抜けな奴め」
「何が間抜けな奴め、だい。死んでたら元も子もないじゃないか」
優子は項垂れた。
「秋人の坊やは、昔から優しい子だったからね」
「その拾って男は優子の従兄弟でもあるらしいからな。情が移ったんだろう」
優子はちらりと綺堂を見た。
「あんたは、そうはいかないよね?」
「勿論だ」
綺堂は即答した。
「あの血の量から察するに、僕に値するほどの半人では無いように思われる。しかも、身体が妖力に耐え切れず、妖力が顔面にはみ出してしまったなど言語道断。僕は身体に妖力を封印することに成功している。しかも拾という奴は、由宇奇と同じクオーターであるようだ。だったらハーフの僕の方が、優位だ」
「でも、油断はいけないよ」
優子はティーカップをテーブルに置いた。
「凄い“気”だったから。あたしの話を聞くときのあの子。恐ろしかったよ。殺されるんじゃないかって、まあ妖怪は死なないけれど、そんなことを思ったよ。だから、綺堂の坊やは兎も角」
そこまで言うと、優子は夏芽を見た。
「夏芽ちゃんは、気を付けなきゃいけないよ」
「は、はい」
優子の勢いに圧倒されて、夏芽は頷いた。きっと、優子の事だ、自分の妹のように、夏芽を思っているに違いない。その夏芽が危険にさらされることを、何よりも恐れているに違いない。由宇奇がそうであったように、そして辰之助がああなってしまったように、夏芽にまで何かあったら。
優子は頭が痛くなった。
「ちょっと、体調が悪くてね。部屋で寝てくるよ。好きな時に帰っていいし、好きなようにキッチンを使っておくれ」
優子はそういうと、ゆっくりと立ち上がった。螺旋階段へ歩く。一段目を上ろうとした時、ふっと振り返った。
「そういえば、明後日、道が開かれる、とか、なんとか、拾って子が言ってたよ。道って、なんのことかわからなかったけど、トンネルの事かねえ、あの」
「何だって、それはいつの話だ」
「一昨日だよ。だから今日、道は開くらしいよ」
「いけない、夏芽さん、急ごう、奴は今日、決行する気だ!」
綺堂は立ち上がった。
「でも、綺堂さん、たかねの弟さんは、まだ生まれませんよ」
「無理やり取り出すつもりだ。今までもそうだったように。夏芽さん、急ごう!病院だ」
「は、はい!」
夏芽はまた綺堂に手を引かれて走り出した。
「人喰い!世話になった!」
「だからその呼び方!」
優子は後姿を見て、ほっと息を吐いた。二人だけでも、無事でよかった。
「その言い方、いい加減やめなよ」
言い終わるのと同時に、優子の豪邸のドアが閉まった。
*
ひつじがいっぴき
ひつじがにひき
ひつじがさんびき
ひつじがよんひき
ごひきめのひつじは、こんやのばんごはん
さあ、みちよひらけ
にえをくらい
いにしえのひとがたてとした
かべをこわし
みちを
ふっかつにみちびくのだ
*
夏芽は綺堂に手を引かれて、八千代トンネルまで来ていた。綺堂が突然立ち止まる。
「夏芽さん……だめだ」
「え?」
「トンネルの霊道が、塞がっている……」
「そんな!私にはいつものトンネルにしか見えないですけど……」
暗闇は、永遠に続いているように見えた。
「よりによってどうしてこんな時に」
綺堂は珍しく取り乱した。頭を掻き乱す。
「急がないと、二つの世界が終わるというのに……」
「終わるって、どういう事ですか?」
「拾は、八千代トンネルを開いて、狂気に狂った妖怪たちを人間世界に傾れこませ、喰らわせる気なんだ。その為の生贄として、五人の胎児を捧げる、そんな昔話が、こちらの世界にはあってね」
―――フタツノ クニヲ ワカツ ミチ イツツカラナル イキナガラニシテ シンダ タマシイガ アツマルトキ ヒラカン―――
「まさか本気にしている奴がいたとはな」
「イキナガラニしてシンダ魂ってなんですか?」
「水子、つまり、お産で死んだ子供の事だよ」
「じゃあ拾って人が集めてたのは、妊婦さんの死体の方じゃなくて!」
「赤子の方だ」
つーん、と脳天をつんざくような耳鳴りがして、頭を押さえた。苦しい、痛い。これは、誰の痛みだろうか。殺された妊婦の痛みだろうか、それとも、母体から無理やり取り出された、赤子の痛みだろうか……。
夏芽はその場に倒れるようにしゃがみ込んでしまった。
―――たすけて。
―――たすけて。
―――たすけて。
頭の中で、悲鳴が響く。脳味噌が割れそうだ。止めてくれ、止めてくれ。これ以上、苦しめないでくれ。夏芽は心の中で懇願する。すると、悲鳴の主は突然叫ぶのを辞めて、こう言った。
『じゃあ、代わってくれる?』
「夏芽さん」
綺堂が心配そうに夏芽によりそう。
「……大丈夫です。でも今」
今“視えた”ことは、もしかしたら、何かを暗示しているのかもしれない。以前も、こんなことがあった。蟲男の事件の時に、二人のキャッチボール姿が見えたり、逆に死体が錦鯉に見えたり……。人間の脳味噌はその大きさの割に十パーセントしか使われていないという。もし、その十一パーセントが夏芽に語りかけているとしたら……。
「綺堂さん、行きましょう」
「何を言っているんだ、霊道は閉ざされている。誰が見ても明らかだ。死層に入るようなものだぞ。危険だ」
確かに、トンネルの向こう側は深い闇だった。何の光も見えない、暗い闇。
「でも、誰かが呼んでるんです」
夏芽は言った。
「たすけてって、呼んでるんです」
夏芽は、綺堂の手を強く握った。
「大丈夫、絶対に、帰れる。信じれば、帰れます。綺堂さん、向こうの世界で、私たちの助けを待っている人が、沢山いるんです。行かなきゃ」
深い闇に心まで持って行かれそうになる。夏芽は、出られるかわからない暗黒のトンネルに足を踏み入れた。無言で、綺堂が着いてくる。綺堂は夏芽の手を放すことなく、夏芽の一歩後を歩いた。初めて、夏芽が綺堂を先導したかもしれない。それ程、綺堂は驚いていた。この小さな少女の持つ、正義感と“力”に。やはり、夜崎夏芽は何か“力”を持っているに違いない。それが“妖力”や“霊力”とは違うものだとしても、夏芽のその力は、半妖半人の綺堂をも圧倒させた。
出口がない。いつまでも、出口が見えない。
二人は信じて歩き続けた。この先に、世界が開けると……。
突然、眩しい光が差し込んだ。遠くに見える人混み、寂れた公園……。
戻ってきたのだ、元の世界へ。
「綺堂さん!」
夏芽は綺堂を振り返った。
「やりましたよ!」
綺堂は笑っていた。
「私達、戻ってきました!」
「そうだね、夏芽さん。それでは、やらなければならないことをやろう」
綺堂は、病院に続く坂道を見上げた。
「僕たちはメシアだ」
「メシア?」
「ヒーローさ。助けに行くんだよ。今から、可哀想な籠女を」
「籠女」
「とある地方に伝わる話さ。女の人は昔ね、男の人に嫁ぐと、元の家に一切返してもらえなかったんだよ。そして旦那の家という“籠”の中で、こき使われてね。昔は何人も妻を作っていい時代だったから、女たちは籠の中で、子供を作る為だけに集められたようなものだった。子供が出来てもね、すぐに取り上げられてしまって、愛しいわが子の顔さえ、拝むことが出来なかったんだよ」
「そんなむごい話が、あったんですね」
「とある地方にだけどね。逆に、籠なんて知らない女性たちも居た。海女たちだ。彼女たちは自由に恋愛をし、自由に生きていた。何故なら、自分が収入源なのだからね。女性は虐げられていた、なんて話が一般的だし、農村地域だとそういうのが当たり前だったけれど、例外もあったんだよ」
「そうだったんですか。幸せな人たちも居たんだ」
「夏芽さんは、これから文学の世界に入っていくのだから、女性の作り上げた美しい仮名文字文化や、しかし女性が虐げられていた時代の話をきっと耳が痛くなるほど聞くことになるだろう。決して、過去から目を背けてはいけないよ。過去があるから、今の自分たちがいるんだからね。籠に縛り付けられて、子供を産むためだけに集められた女人たちのことも、決して忘れてはいけない」
「そういえば、かごめかごめって歌がありますね」
「かごめ、かごめ。あれは恐ろしい呪いのうただ、なんて言われているけれどね、そんなことはないよ。ただの幼稚な皮肉を込めて作られた歌さ」
「皮肉?」
「いろんな説があるがね。かごめ、とは、籠目。籠の中の鳥というのは、自分。処刑される人間、若しくは、籠から出られない御姫さまのうた、なんて説もある。僕が思うに……」
綺堂はそこまで行って扇子で口を覆った。
「長く喋りすぎたね」
「あっ!忘れてました、行かなきゃ」
二人は病院に向けて歩き始めた。
「それで、綺堂さんが思うに、何なんですか?」
「妊婦が流産する話、と言ったらありきたりだね」
綺堂は意味深気に笑った。
「僕は、所謂“女郎”、遊女の歌だと思っている。籠にとらわれた女性、まさしく遊女だ。遊女は籠から出られない。子を産むことも許されない。遊女が自分の人生を呪った歌だよ、かごめかごめは。昔はね、子を産むことも、おろすことも、命がけだった。だからこそ、恨みを込めて、後ろの正面だあれ、で終わるんだよ」
夏芽はぞっとした。背筋に悪寒が走る。学校で何となく遊んでいたかごめかごめに、こんな裏話があったなんて、信じられなかった。
「怖いですね」
「だろうね。本当だとしたら怖いね」
「本当じゃないんですか?」
綺堂は居悪戯っぽく笑った。またからかわれた。夏芽がそう思った時、岐山会病院の入口まで辿り着いた。今の所、いつも通りのようだ。
「たかねのおかあさん、無事かなあ」
夏芽は呟いた。
「無事じゃなければ困るだろう」
綺堂は夏芽の背中に手を置いた。
「さあ、行こう。由宇奇もいるし、安心だ」
小春日和の太陽が、二人の影を映し出す。影はすうっと静かに、病院に飲み込まれていった。
*
くくくく。
男は笑った。
そろそろ、宴が始まる。
この二十八年間、ずっと胸に秘めてきた思いが、今、この世界に発信されるのだ。
今更反省するがいい。
今更懺悔するがいい。
今更生まれてきたことを後悔するがいい。
そのくらいの苦しみを、味あわせてやる。
あと一匹の羊で、全てが始まり、終わる。
俺の苦しみが、終わる。
男の掠れた微笑は、古びた神坂公園に響き続けた。小春日和の空は段々薄暗くなり、小雨が降りだす。男を警戒しているのか、追い出そうとしているのか。構わない。今更、手遅れだ。
男は笑いながら歩き始めた。雨に濡れながら。目指す先は、岐山会病院、唐沢まなみ。
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