第2話 夏休みっていつだっけ。。。
遠い昔の様な昔とも言えるし、昨日とも言いたくなるほど最近とも言える。
それくらい、僕らの時間感覚はなくなっていた。壮介くんは久しぶりにバラバラにされていた。いや、外側は全く変わらない。でも、内側がバラバラにされていた。みんなが心とか精神とか言うそこ。一週間くらいは静かだったと思う。わからないけど、そんな気がする。音がそう言っている。あの日、望ちゃんが反抗的だった。
「きゃー。」でも、「ぎゃー。」でもない独特で初めて聞いたような少し聞き慣れた様な、変に懐かしい声だった。
今日、それはまた起こった。一番上の美樹ちゃんが喧嘩を仕掛けた。そしてうるさかったからだろう。主が下りていた。そして壮介くんと尚人くんが連れていかれた。
そうこうしないうちにまた、望ちゃんのときよりも低いけど、似たような声が聞こえた。
壮介くんが戻ってくると皆駆け寄りたそうにしていたでも、出来なかった。
壮介くんはいつもの壮介くんじゃ無かった。こういうときは皆、わかっている。話しかけたら殺されると。実際に美樹ちゃんは殺されかけた。壮介くんはここに来てからのストレスのせいか、多重人格になっていた。普段はとても優しいけど、もう一人の壮介くんはとても凶暴で、おっかない。
ぽつりぽつりと語る目の前の少年は僕と同い年だ。姉貴とも。
少年は、僕に目をやって、こう結んだ。
「あのとき、圭介が休んでてよかった。僕ね、望ちゃんと圭介のことが大好きだった。だからね、死んだ姿を見たときはね、もう僕も一緒に死にたかった。でもね、圭介に会いたかったのと、壮介くんに怒られてね。」
「ごめんな、いやな過去思い出させて。」
「いいんだ。僕はね、今すごく幸せなんだ。10年前の記憶はね、確かに怖いしもうしたくないし、思い出したくもない記憶だけどね、圭介が立ち直ってくれて、本当に幸せなんだ。」
照れるし、とてもクサい台詞を赤くなりながらも語る親友の姿がとても頼もしかった。それでも、これだけ聞いてしまったんだ。謝罪ないし礼はすべきだ。
「さ、嫌な話は忘れて、甘いものをひとつづつ俺のおごりで食べよ。」
「うん。」
それからまた20分くらいすると、一枚の紙をよこした。
それは、電話番号と住所と名前が書かれていた。
「これ、使って。」
『50−21 田中コーポレーション102号室 高村愛(当時7歳)」
「あ、ありがとう。」
礼を言って家路を急ぐと、急に目の前が暗転した。
それからの記憶はいっさいない。
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