第20話「愛しぬくこと」


休日ーー明日は、彼女とデートをする予定

だった日。


関係が停止して、予定も空き、今日と明日と二連休を過ごす。

「今は、心を休めよう」と、休日をゆったりと過ごすことを選ぶ。

久しぶりに、神社へ行こうと思った。

熱心な信仰があるわけではないが、子供の頃からの親との習慣で、

時折、神社へ足を向けたくなる。

参拝し、100円のおみくじを引いて帰る。

その習慣があった。


天気は、悪かった。

外に出ると、もう、冬の寒さだった。

上着はフード付きのパーカー。その下にはTシャツ一枚。

昔からそうだった。

冬でも、そんな格好で外へふらっと出かけて、

薄着で寒さを体感することが、冬を感じる習慣…なんでも習慣とは言えないか。

簡単な服装が好きな理由が一番か。

車を走らせると、すこし、雪の降り方が増していった。

「まあ、なんとかなるさ」と思って、そのまま神社へ

薄着の服装で向かった。



目的の神社は、駐車場もあり、地元では広い敷地の神社ではある。

駐車場に向かう道のり。

降り積もる雪が、遠近感を与えて

境内の木々に奥深さを与え、遠目に見えるものに神秘的な雪が掛かった。

手前と、奥。その距離感を徒歩以上の距離に変えた。

実際の参拝までの距離は、駐車場からは遠くない。歩いて3、4分くらい。

カメラを首に掛けて、早速、その遠影を撮った。

参拝へと向かう道、財布のなかには500円玉があるのを知っていた。

いつもは100円玉を入れるのだが…願掛けするのだし。でも少ないのか。

薄着の格好で、手袋も履かない手の冷えを感じながら、参拝のため社殿へ。

参拝者の記帳を済ませ、思い切って、500円玉を賽銭箱に入れた。

彼女との関係に、力を貸してくださいと。

普段の参拝では、自分の現状を報告することだけで、

これまで願掛けは、誰かの病気以外ではしなかった。

身勝手な願いだよな…と、思いながらも、今の自分が一番求めていることを

求めても良いのだろうと思って、参拝を終えた。


おみくじを引きに社務所へ。

おみくじは、社務所の窓より外に置かれている。

社務所の窓をノックし、

「これ引きます」と100円玉を片手に示し、ちらつかせて、

巫女さんなのか、窓口の女性に確認を取った。

いつもは、さっと

取りやすそうなおみくじを引くのだが、

今回は、すこし選んでみようと思い、固まったおみくじの中を崩して、引いた。











中吉




大ではないが、末とか小とかが多い僕としては、ホッとした。

おみくじの中身には、

「時を待つべし」

「今は人のしらぬ胸の苦しみがありますがさわがず信神して時の来るのをまち

 身をつつしんで行いを正しくすれば必ず幸いを得る時が来ます」

「願い事 

 無理に事をなすは悪し 時をまて叶う」

「待人

 来たらず 音信はなし」

「恋愛

 愛しぬくこと」

「縁談

 相手の話もよく聞き自己主張を抑えよ」


100円のおみくじには、裏面もあり

「恨むおもいは炎となって人も己が身もやきつくす

 波立たぬ平らかな心の海には、神様の御光理が澄み入って清々しい。

 人を恨み、憎む心は、先ず我が胸をこがして、炎となり、刃となって先方を

 きずつける。

 それが又目にこそ見えぬ 木霊の様に再び自分に返り来つて身を害なう。

 まず恨みの炎を打消し、心の波を静めよう。」




願掛けが通じたような、おみくじに思えた。


待つこと、胸の苦しみ、音信なし、愛しぬくこと、相手の話もよく聞き自己主張を抑えよ、恨む思いは炎となり胸を焦がして先方を傷つける、恨みの炎を打消し心の波を静めよう


全て身に覚える応えが来たと。


そして、「愛しぬくこと」




相手の心を変えられないことに、やきもきして

先が見えない


この間の停止したメールのやり取りで

「愛しています」と送った








だから、せめて、クリスマスまでは、待とうと思った。








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