第8話「冬の花」
「スミ、どうしたのその顔……」
やってきたスミは宣言通りライトを手にしていたが、その顔がさっきまでと違っていた。ぼさぼさの髪の下、右目は泣き腫らしたのか赤くなっていて。
左目、いや顔の左側が、青く大きく腫れあがっていたのだ。まるで、誰かに殴られたみたいに。
「なんでもねぇよ。それよりカード書いて来た?」
「なんでもないわけないじゃないか。どうしたのそれ! 何があったの!? 商店街の人たちにやられたの? 警察が来てたからやっぱり……」
「うるせぇ! 大丈夫だって。こんなんいつものことだって」
こちらを見ようとしないスミの手を掴み、どうにか引き寄せようとした僕だったが、その手は力づくで振り解かれてしまった。
沈黙が、あたりを包む。冬の夜、公園には風に揺れる竹林の音だけがしていた。
「なぁアキ。俺たち、やれたよな。クリスマスの奴滅ぼしてやってさ。そんで、そんな俺たちがクリスマス乗っ取って、今からやってやるんだもんな」
「うん」
「なぁ、やっぱり燃やしちまうか? クリスマス。そっちの方がスカッとしそうじゃね」
「嫌だよスミ。僕は、スミとならクリスマスをやりたい」
「そっか……」
スミは静かに顔を上げた。その顔つきは、いつもと同じように見えた。
「なぁ、この世界を滅ぼさねぇか? それとも――。
俺たちが滅んじまうか?」
彼女は屈託のない笑顔で晴々と、そう笑っていた。
いつものように。
でも――、僕には泣いているように見えた。
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