第3話努力と失望
湧き上がる歓声。
それを受けるのはヒトミ。
ひれ伏すハナコ。
ハナコは歓声を受けることも応援も受けることはない。
『ワルモノ』だから。
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「こんにちは。元気? 近くにタバコを吸っている人がいるから、火傷には気をつけて」
ハナコは白い杖をついた青年に話しかけた。
「ありがとう。気をつけるよ。ああいうのは空気でわかるから大丈夫」
「そうなんですか。勉強になりました。あ。東側の信号が青になりましたよ。私はそちら側に用があるので、さよなら」
「ありがとう。さようなら」
今日は週に二回あるボクシングジムでトレーニングの日。
ちゃんとプロからパンチの受け流し方の練習や、流れるようなスパーリングの打ち方や、痛くなくかつ派手な音の出るパンチの出し方など、その他の魅せる戦い方を学びに行く。
受け手が攻め手のどちらかがちゃんと学ばないとエンターテイメントではなく、ただのじゃれあいになってしまうような気がする。
それに加えて次の日はボイストレーニングとスピーチ教室に行き、マイクパフォーマンスの練習。
そして、月2でメンタルのコーチングを受けたりもしている。
頑張れ頑張れと自分を鼓舞している。
負けるのが仕事だから、こうでもしないと立ち上がれないような気がしていた。
「ねぇ〜コーチぃ〜良いでしょー」
どこかで聞いたことがあるこの声は。
振り返ったら巨大なラブホテル。そこに見慣れた2人。
ヒトミとコーチ。
血が、沸騰した気がした。
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