第2話おじいちゃん

着替えてから、家までランニングしながら帰った。

途中、白い杖をついた男性がいたので、軽く声をかけた。カツカツカツとそれが音を立てる。


「どこまで行かれますか?案内しましょうか?」

「大丈夫。家に帰るだけだから」

「そうですか。もう夕暮れなので、お気をつけて!」

「ありがとう。綺麗な声をしているね。きっと美人なんだろうな」

「ありがとう」

家に帰ると、カレーの香りが鼻をくすぐる。

「おかえり。晩御飯できてるよ」

「ありがとう。いただきます。」

カレーを食べていると、おじいちゃんが帰ってきた。

母は議員バッジをスーツから外し、ファブリーズをスプレーする。

「おお、ありがとうな」

「ハナコ、仕事辛くないか?」

「大丈夫」


☆☆☆

リビングじいちゃんが一人、タバコをふかしていると。

「ただいま」

「おかえり」

父が帰ってきた。

スーツに特注のバッヂがキラッと光る。

「おお。カッコエエのつけとるの」

「ありがとうございます」

「もうすぐ、じゃからな」


二人しかいないリビングで、じいちゃんがタバコの火をそっと灰皿で押しつぶした。


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