第1話ヒールガール

テクノポップが会場内に流れる。

おおおおーっと歓声が湧く。


「赤コーナー!永遠の処女!西門、ヒートーミー!!」


リングに上がってロリータファッションの美少女が手を振ってお客さんにアピールする。


「みんなー!元気ー?アフターファイブのアイドル!ヒトミだよー!仕事疲れてるのに、来てくれてありがとー!楽しんでってねー!」


次に、ラテンロックが流れた。

途端にブーイングの嵐。


「青コーナー!ひがみの悪魔!正月谷ハーナーコー」


特攻服の私は息を短く吐いて、パンパンと二回頰を叩いてから、リングに上がった。


「とりあえず、このブスぶち殺すから!」


「ブスなんてひどーい!ヒトミ、泣いちゃう。えーん」


ヒトミンを悪く言うなブス!オメーが死ね!


「いいの!平気!ヒトミ、頑張って勝つから!」


頑張れー!応援してるよー!

と野太い声がする。

コーチがリングに上がり、二人にグローブをはめた。



「レディー?ファイッ!!」



ヒトミが先制パンチを繰り出す。

正直痛くない。けど、大げさに痛いふりをする。


ヒトミは続けざまにお腹、肩、顔を殴る。


彼女のグローブは派手でいい音が出るタイプのものを使っているので、結構大きくて痛そうな音が出る。

避けない。

優しめにヒトミの肩を殴る。

「きゃあ!痛ーい!」

ヒトミンがんばれ〜!負けるなー!


これは一つのショーだ。

私はこのヒールの役を与えられた。

だからそれを演じるのみだ。


ヒトミンが猫のようなパンチを繰り出す。

そろそろかな。

私は大げさにリングに倒れ、コーチがタオルを投げ、試合が終了した。





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