065.情報の共有-②
◆◇◆
次に目を開けた時、僕は何故かベッドの上でした。
「ふゅぅう‼︎」
そして顔面にいきなりクラウがしがみついてきた。
一瞬何が起きたの?ってはてなマークが頭いっぱいになったけど、ああそう言えばと段々気絶する前の事思い出してきた。
そうして直前にわかった?事実がフラッシュバックしてきて、僕は顔に張り付いたままだったクラウを剥がしてからぎゅーっと抱きしめた。
「まあ、カティアさん気がつかれまして?」
「カティが起きたの、リュシア⁉︎」
部屋に僕とクラウ以外の人がいる事に気付けたが男性陣は一人もいなくて、アナさんとファルミアさんだけだった。
「いきなり起き上がって大丈夫、カティ?」
「どこか痛むことはありませんか?」
「え、えーっと……大丈夫です。なんともないですよ?」
精神面ではまだダメージと言うか羞恥心が高ぶっちゃっているけども、心配させちゃったのだからそこはなんとか抑えた。
そうしていれば、お二人は安心したかのようなため息を吐いた。
「四半刻程度でしたが、どこも異常がないようでしたのなら良かったですわ」
「そうね」
「あ、あの……僕どうやってここへ?」
部屋は僕がお借りしているゲストルームなのは間違いない。
だけど、ここには誰が運んでくれたのだろうか。
アナさんやファルミアさんが運んでくれたとは思えないけど。
「ああ、運んだのはゼルよ」
「はぃいい⁉︎」
「あれだけ固まっていらしたのに、カティアさんがお倒れになられてからすぐに気がつかれましたの」
なら、セヴィルさんにお姫様抱っこされてここまで?
(ーーーーって、ぇええええええぇっ⁉︎)
新たに分かった事実に僕の頭の中が沸騰しそうなくらいその場面を妄想してしまい、堪らずクラウを抱っこしたままお布団に突っ伏した。
「ふゅ?」
「カティアさん⁉︎」
「カティは経験皆無だったのね。あちらでも」
「……いえ、運ばれたのは初めてじゃないんですが」
初日にフィーさんと出会ってからの、ジェットコースター並みな移動速度の中でだけども。
あれは今よりももう少し小っちゃい身体でいたもんだし、余計に三半規管とか弱かったからな……って、そうじゃなくて!
「ほ、他の皆さんは今は?」
「うるさいから追い出したわ。多分エディの部屋に行ってるでしょうね」
「呼びに行きましょうか? 特にゼルお兄様は付き添われるおつもりでいらっしゃいましたし」
「そうねぇ。一番やきもきしているのはゼルでしょうから」
「え、どうしてセヴィルさんが?」
「……カティ、それは素で言っているの?」
ふぅー、っとファルミアさんはまたため息を吐いた。
「カティ、気絶する前のことどこまで覚えてる?」
「え、あ」
けども、大事な事なので僕は赤いであろう顔をクラウの頭で半分隠した。
「えと……セヴィルさんの初恋の相手がってとこですよね?」
「そうね。その後急にあなたが気絶しちゃったのよ」
「す、すみませんでした」
大変ご迷惑をお掛けして申し訳ない気持ちでいっぱいになってきた。
そしたら、ファルミアさんが僕の頭をぽんぽんと軽く叩いてきた。
「あなたが謝る必要はどこにもないわよ。むしろ、こちらがあなたを追い詰めてしまったもの。謝るのは私の方よ」
「え、いえ。そんな⁉︎」
勝手に気絶しちゃったのは僕なんで、お願いですからそんな深く腰折らないでください⁉︎
「ふゅぅ」
「え、クラウ?」
もぞもぞとクラウが僕の腕の中から抜け出して、ぽふっとファルミアさんの頭の上に飛び乗った。
「クラウ……?」
「ふゅ、ふゅぅ」
「……気にする必要はないって言いたいのかしら?」
「ふゅ」
誰とも意思疎通出来ないはずだけど、本当にクラウがそう言っているような気がした。
それから少しして、ファルミアさんはクラウを頭から降ろしてベッド脇に座らせた。
「守護獣のあなたがそう言ってくれるのならば、私も深く自分を責めないわ」
「ふゅ」
「ですが、誠にカティアさんがゼルお兄様の初恋のお相手でいらっしゃいますの?」
「あ、アナさん⁉︎」
和んでいるって言うのにいきなりそんな爆弾投下させないでください⁉︎
が、ファルミアさんも気を取り直したかのように頷かれていた。
「ほぼ間違いないわよ。あの態度が何よりも物語っていたじゃない」
「ぼ、ぼ、僕が……?」
「カティもゼルに負けず劣らず鈍いわねぇ。それに、
「あう……」
だって、
それをもそもそと言えば、お二人はさっきと違った呆れたようなため息を吐いた。
「この似た者同士をどうわからせてあげればいいのかしら?」
「時間に任せて……でしょうか?」
「ふゅ」
「クラウまで……」
恋愛なんてからっきしだった僕にとって、セヴィルさんには嫌われていないなとしか思っていなかったのに、まさかの事実。
(は、初恋? それが、僕………?)
やっぱり、僕とセヴィルさんは初対面じゃなかったが……わかった事実が事実だけに頭が追いつかない。
これまでの彼の尋常じゃない態度の表れは、どうやらそこに起因しているようだ。
御名手だからか女だからで気にかけられてると勘違いしていたが、何故かそれ以上の理由。
本当にいつ出会ったのか全く記憶にないが、今日まで彼の仕事を理由にして聞けていない。
とは言え、あの超絶美形さんに僕のどこが恋心を抱くきっかけになるんだ?
(それに、僕は……)
何故嬉しいと思っちゃってるんだろうか?
コンコン。
と、結論に行こうとしたとこで扉の方からノックが。
「アナー、ミーア。カティア起きたー?」
なんと言うタイミングにフィーさんが。
「わたくしが開けますわ」
「お願いね。カティはまだベッドから出ちゃダメよ?」
「……はい」
出ようかとしていたらファルミアさんに止められちゃった。
「どーう、カティア?」
「先程お目覚めになられましたわ」
「本当か⁉︎」
「ぴ⁉︎」
やっぱりセヴィルさんがいらっしゃったぁ⁉︎
ぽふっとお布団を頭から被って、僕は恥ずかしさで真っ赤っかになってるだろう顔を見られない様に対処した。
「ふーゅぅ?」
「カティ、ここで逃げても無駄と思うのだけれど」
「そ、そうは言いましてもっ」
だけど、僕の抵抗も虚しくファルミアさんの手によってお布団から引きずり出されました。
お布団から出れば、セヴィルさんがこっちに駆け寄ってくるのが見えた。
「カティア⁉︎」
「ふぇ⁉︎」
脱兎の如く逃げたい気持ちにかられたと思ったその時。
スパコーンッ!
「うっ⁉︎」
セヴィルさんの背後から白い紙の束?のようなものがにゅっと出て来て、彼の頭を叩いてきた。
そしたら、セヴィルさん当然足がカクンとなってその場で倒れちゃったけど。
「えっ……ハリセン?」
倒れたセヴィルさんの後ろから見えたのは、巨大な紙のハリセンを持ったフィーさんのお姿があった。
「起きたばっかなんだから、余計な刺激与えようとしちゃダメでしょーが」
ぱんぱんとハリセンを持っているフィーさんは呆れたようにため息を吐いていた。
「カティア、調子はどーう?」
「えっ、あ、と、とりあえずは大丈夫です……」
そう言えばフィーさんとセヴィルさんだけ?と扉の方を見たら、ぽかんと口を開けてらっしゃる残りの面々がいた。
「エディ、俺今日ゼルの意外な一面いくつ見た?」
「安心しろ、ユティ。俺だってカティアが来てからここまでは見てねぇ」
「あ、そうなんだ?」
そう言いながらお二人やしきょうさん達も中に入ってこられた。
セヴィルさんは頭を抱えながら立ち上がったけど、あのハリセンってただの紙製だよね?
フィーさんはそのハリセンをぱって消えさせてからこっちにやってきたけど。
「そんなに長い時間じゃなかったから安心したよ」
「ちょうど呼びに行こうとしてたけど、なんで全員来てるの?」
「んー? 最初は僕とセヴィルだけだったけど結局は全員来ちゃったんだよね」
「追い詰めたのは俺にも責任があるからね。本当にごめんよ、カティ!」
「ゆ、ユティリウスさんそんなに腰折らないでください⁉︎」
ファルミアさん以上だからやめて!
(一国の王様がそんな簡単に腰折っていいの⁉︎)
そうしたら、またクラウが頭に飛び乗ってナデナデしたんだよね。
「ふゅ、ふゅぅ」
「……守護獣になだめられちゃあ、俺もやめるよ」
「ふゅ」
ぽふっとユティリウスさんの腕の中に収まり、クラウはいい子いい子されながらこっちもナデナデ。
少ししたら、僕の腕の中に渡されたけど。
「で、中途半端にしてたのここで解決しちゃうの?」
「ぴ⁉︎」
「うっ」
切り替え早いなぁ、この王様!
「ユティ、お前なぁ……」
「ああ、カティとゼルのことじゃないよ? ミーアがデザート前に言ってた方だよ」
「私? ああ、そうね」
と言うことは、ファルミアさんが転生者と言うことをここで話すのかな?
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