064.情報の共有-①
◆◇◆
「俺が知らないことが多いけど、どれから話してくれるの?」
事態収拾しまして、とりあえずはユティリウスさん優先にすることになりました。
ユティリウスさん若干不貞腐れております。
(まあ、しょうがないよね?)
自分だけ蚊帳の外状態だったもの。
だけど、よくよく考えればそれはクラウのことだけで、他はまだ情報共有してないことの方が多い。
それが、僕とファルミアさんのことだったりだけど。
「あー……お前らに言うか悩んだのは、クラウがまだ今日生まれたばっかだからだ」
「それ……じゃなくて、クラウがなの?」
「お前が一度報せに来た時に言ってただろう? 力の解放とやらが、おそらくクラウの誕生についてだと俺やエディオスは見解しているが」
「ああ、
『是』
ユティリウスさんがしきょうさん達に聞けば、同時に同じ答えが返ってきた。
「へぇ。こんなに小ちゃいのが神獣?」
「ふゅ?」
話題の中心に今なってるクラウは僕からチーズケーキを食べさせてもらいながら聞いてる状態。
一回下げようとしたらお目々をウルウルさせたので仕方なくです。
「で、なんでカティと一緒なの?」
「うちの相棒がカティアをクラウの卵んとこ連れてって、
「僕も許可出したしねー」
「
ここはファルミアさんにも知らせてない情報だったから、わかって納得されたようだ。
「じゃ、次にいってもいい?」
「いいぜ?」
「どーしてカティのドレス姿にゼルが珍しくあんな表情になったの? と言うか、カティはいつからこの城にいるの? 前来た時はいなかったし」
「後の方はともかく、先のは聞く必要あるか⁉︎」
セヴィルさん、今のお顔さっきくらい真っ赤だ。
僕のことも話さなきゃとは思ってたけど、まさかセヴィルさんの赤面状態のとこから突っ込まれるとは。
「大有りだよ。ゼルが鉄仮面剥がしちゃうくらいああなるなんて俺初めて見たし」
「あれは俺も初めて見たなぁ?」
「僕も」
「わたくしもですわね」
「私もね」
どうやら、これだけ感情を露わにさせてるセヴィルさんは大変珍しいようです。
僕は初対面の時にちょいちょい見てからなんとなくわかってるのでそんな不思議じゃないけども?
でもこの場合、誰から話せばいいのだろうか?
僕からなんて恥ずかし過ぎて言えますか!
「と言うか、これだけ滅多にない色彩だからカティって
「僕は普通の人間ですよ⁉︎」
だからなんで神格化されちゃうんですか⁉︎
「我も聞きたいことがあるのだが」
「
ここで初めてしきょうさんから手が挙がった。
まとめ役?のきゅうきさんからだったよ。
「カティアとセヴィルの結びつきが異常に強いのだが……」
「我もそれは感じている」
「魔力とも違うな」
「もっと強い結びつき……そう、まるでファルとリースのような」
「私と?」
「俺って……もしかして、ゼル⁉︎」
しきょうさん達の言葉に僕はだんらだんら冷や汗を流していたら、ユティリウスさんが斜め向かいにいるセヴィルさんに詰め寄った。
「な、なんだ」
「もしや、それって君達が『
「ユティせいかーい!」
ぱちぱちと彼の隣に座ってるフィーさんはのんきに拍手していた。
確実に面白がっていますね、この神様は。
「ゼルとカティが
「え、ちょっとミーア何それ?」
「もうどこから話します?」
また更にこんがらがるような事態になっちゃった。
実はさっきの説明の時はファルミアさんに僕とセヴィルさんの関係の事は一切お伝えしていない。気恥ずかしさと信じてもらえないのもあったから。
「一旦落ち着いてくださいまし、御二方」
ぱんぱんと手を叩かれたのは、ほぼ黙っていたアナさんだった。
僕らはびっくりして彼女の方に視線を向けた。
「色々とお話すべき事は多いですが、順に参りましょう。フィルザス様、わたくしからご説明させていただいてもよろしくて?」
「いいよー?」
と言うわけで、アナさんの口から僕が一週間前からこのお城に厄介になってる経緯が説明されたのだった。
「…………カティが異界渡りで数日前からこっちに来たのは、わかった」
一通り説明が終わってから、ユティリウスさんがおもむろに口を開いた。
ファルミアさんはまだ何か考えられていたけど、旦那さんの次の言葉をとりあえず待ってるようだ。
「だけど……なんで親友のそんな大事な瞬間に立ち会わせてくれなかったんだよエディ⁉︎」
「アナと同じ事言うなよお前は‼︎」
距離があるので、エディオスさんは怒鳴ることしか出来なかった。
それにしても、エディオスさんよりセヴィルさんの方が親友なんだ?
「けど、それでゼルがあんな表情をする説明にはならないわよ?」
ファルミアさん考えてらしたのそこですか?
「……何故言う必要がある」
「そんじょそこらの女性を袖に振ってばっかなあなたが、外見年齢は置いとくにしてもカティに一目惚れはおかしすぎるわ」
ビシッと指を突きつけてファルミアさんは淡々と言い放った。
「え、あのー……僕一応いるんですが」
聞いてていい話?
クラウ抱っこして退散すべきでしょうか?
「いいえ。カティも聞くべきよ? だって私、ゼルから初恋の話聞いてるもの」
「ファルミアそれは⁉︎」
「はつこい……?」
それと僕とどう関係が?
「ふゅ、ふゅ⁉︎」
クラウの声が何故か遠くに聞こえる気がする。
僕にしがみついているのはわかるのに、どうしてか。
(なんで、こんなにも……?)
痛い。
胸の奥底が。
視界までもが歪んできて、クラウの姿がよく見えない。
「ーーーー…………ゼル」
それを地を這うような低い、滅茶苦茶ひっくい声によって現実に引き戻された。
呼んだのはユティリウスさんじゃなくて、
「なんで従兄弟の俺が知らずに、40年程度の付き合いしかねぇはずのファルの方がそんな重大な事知ってんだよ?」
「そ、それはっ」
エディオスさんだった。
振り返れば、ものっそい形相とご対面でしたよ⁉︎
初日に僕がフィーさんの小屋で見た比じゃなかった!
「ふゅぅ⁉︎」
クラウもそれに気づいて怖くなったのか更に僕にしがみついてきた。
「エディお兄様のおっしゃる通りですわ。何故わたくしにもお教えくださらなかったのですか!」
ご兄妹で僕らをサンドイッチしないで⁉︎
こんな剣幕の中にいたら、さっきの悲愴感なんか彼方に吹き飛んで行っちゃったよ!
「ミーア、いつそれ聞いたの? 俺にだって教えてもらってないのに」
「ちょっと訳ありでね?」
「ミーア、僕も聞きたーい」
「あら、フィーは知っているんじゃなくて? だって導いてあげたんでしょう? この二人を?」
「「「は?」」」
「ふゅ?」
ファルミアさんの意味深な発言に、こっちサイド全員ぴたっと止まっちゃったよ。
クラウも鳴くのをやめてくりんと顔を彼女に向けた。
正確にはファルミアさんが呼んだフィーさんの方にか。
「相変わらず勘がいいねぇ、ミーアは」
かく言うフィーさんは相変わらず自由人マイペース。コフィーのカップを手の中で遊ばせながら、ふふっと笑っていた。
「カティの記憶を読んでからゼルとの相性を調べただけにしちゃ、あなたにしては詰めが甘いと思うわよ?」
「まあね。でも、僕から言っても意味ないでしょ?」
「そうね。そこはゼルからの方がいいわ」
「っ⁉︎」
セヴィルさんの方を向けば、ゆでダコって単語がバッチリ当てはまるくらい超真っ赤になって固まっちゃってました。
念の為くいくいと僕がマントを引っ張っても反応ナッシングです。
これって、初日にも似た状況になったよね?
「おーい、ゼル?」
こんこんとエディオスさんが頭を軽く叩いても無理でしたよ。
「え、てことはさー……ゼルの初恋の相手がカティなの?」
「そう言う事よ。この二人初対面じゃないらしいから」
「はぃいいい⁉︎」
ヴァスシード国王夫妻の会話に、今度は僕が赤面になる番だった。
思わずクラウをぎゅーって強く抱きしめちゃったけど、嬉しそうにきゃっきゃと声を上げたのは置いといて。
「ぼ、ぼぼ僕が、セヴィルさんの……えぇっ⁉︎」
初対面じゃないってことは初日にもちゃんと聞いていたから知ってたけど、そこはまだセヴィルさんから結局は話してもらえていない。
(どうして僕が、その……セヴィルさんの初恋の相手になるんだ⁉︎)
ぷしゅー、ぱたり。
「ふゅ⁉︎」
何の音かと言いますと、僕がクラウを抱っこしたままテーブルに突っ伏してしまったんです。
「「カティア⁉︎」」
「カティアさん⁉︎」
「え、カティ⁉︎」
上から慌てる声やなんやらが聞こえてきてはいたけど、キャパシティオーバーになった僕は段々と意識が遠のいてしまっていたから気にすることも出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます