063.伝来されてない食材
なんだっけ?と首を傾げていれば、ファルミアさんが僕の耳にこそっと話しかけてきた。
「麻雀でやるようなポンジャンと似たものよ。パソコンのフリーゲームとかであったやつね」
「ああ……」
チェスなんかもあったけど、それよりは比較的に簡単でソリティアと同じくらいオーソドックスなゲームだった。
しかし、それと似たゲームがこっちの世界でもあるんだ?
と言うか。
「ファルミアさん大変失礼ですけど現在のご年齢を伺っても?」
「ああ、そこはたしかに変と思うわよね? 時間軸が何故かズレてるのかわからないのだけれど、私の現在年齢はエディ達とほとんど同じよ」
「と言うと……えぇっ⁉︎」
「「ん?」」
「あら?」
「お?」
「あ、ミーアにカティおかえりー」
僕が思わず声を上げちゃったら視線が全員こっちに向いてしまった。
ユティリウスさんはのんきにひらひらと手を振ってくれたけど。
「お、もう出来たのか?」
「ええ。今給仕達に切り分けとかお願いしてるところよ」
「ところで、カティアは何故声を上げたのだ?」
「え、あ、えーっと……」
どう言えばいいのかなぁ……。
だって、このメンバー全員がファルミアさんの事情知ってるかわからないもの。最低ヴァスシード側の皆さんはご存知だろうけど。
「それはデザートの後にでも話すわ。リュシアやエディにはまだ話してないことだから」
「俺とアナ?」
「まあ、夕餉前におっしゃっていたことですの?」
エディオスさんとアナさんにはまだ話してないと?
だけど、セヴィルさんはご存知らしいときた。フィーさんは薄々気づかれてるかもってファルミアさん言ってたから多分そうなのかもね。
「お待たせ致しました」
ここでタイミングよく給仕のお兄さんお姉さんがやってきたので、チャイルを片付けるなどをして皆さん席に戻った。僕とファルミアさんもそれぞれ席に着いたよ。クラウは起きてアナさんの膝上から僕の膝上にチェンジ。
飲み物は紅茶かと思ったらコフィーでした。
「久しぶりにカッツクリームのケーキかい?」
ユティリウスさんは少年のようにライトグリーンの瞳をキラキラさせた。
……なんだか頭とお尻に犬っぽい耳と尻尾があるように見えたの僕だけ?
「「え?」」
「カッツのクリームって言やぁ」
「つい先日カティアさんがお作りになられた? よろしかったですのカティアさん?」
こちら側の面々は疑問に思って当然だもの。
マリウスさんとライガーさんと決めてしばらくは秘密にしようってことも話してあるからね。
「うちのヴァスシードやツェフヴァルとかじゃ庶民でも使ってる食材だったのが、どうやら輸送ルートだと出回りにくいからかこっちまであまり知られてなかったみたいね」
「そうだったのかい? 俺達は普通に食べてるけどなぁ」
「不思議に思うわよねぇ。とりあえず、マリウス達には作り方の一つは教えてきたけど」
「おっかしいねぇ。神の僕も食べてない食材がこの国で食べられてないなんて?」
そう言えば、この世界を管理するフィーさんが口のしたことがないなんてのも変だ。
僕が作ってきたのじゃなくて、ファルミアさん達のお国やその近郊でごく普通に扱われている食材が。
クリームチーズはてっきりないのかと思っていたのに、まさかお隣の国では出回っているとか変だもの。
なのに、なんでこのお城じゃ食べられていないのか。
「城下にゃついこの前行ったが、カッツクリームなんて市場どころかバルなんかの店にもなかったぞ?」
「お前が言うのなら未だこの国では誰も作っていないということか?」
「ちょっと封鎖しよっか」
パチンとフィーさんが指を鳴らして、初日の夕食の時のようにバックヤードの出入り口が黒い壁で覆われた。
ちなみに給仕のお兄さんお姉さんはとっくにおりません。
「え、そこまで重要?」
ユティリウスさんはきょとんと目を丸くされた。
これにはさすがに僕含めて彼以外の全員がため息を吐いたよ。
「あのよぉ、ユティ。お前んとこの国はうちと距離はあっても一番近いとこだろ? なのに交易抜きにしても伝達されてねぇ食材とかがあんのはおかしいだろうが」
「あー……そう言えば、そうだね」
たらり、と、ことの重要さをようやく理解されたユティリウスさんは冷や汗を流した。
「でも、そうすると俺が見かけないなぁって思ったのとか割とそうだったりする?」
「まだあんのか⁉︎」
「私はこちらの城下の事情はよく知らないけど、リースが言うのならきっとそうね」
僕はまだ日が浅いので政治や文化関係とか全然わかんないからとりあえずは黙っております。
たった一つの食材でこの盛り上がりようだもの。
他の食材って一体なんだと言うのが気になっちゃってるのもあるけど。
「とりあえず、ケーキ食べながら話しましょう? せっかくカティが手伝ってくれたもの」
「「「「あ」」」」
「ちょこっとだけですよ」
本当に大して手伝えていない。洗い物以外は詰める作業ばっかりだったから。
「そんなことないわよ。若いとは言えさすがは調理人のプロって動きだったもの」
「大袈裟過ぎますよ。まだ卵ですから」
過大評価しないで!
「コフィーも冷めるし、とりあえず食ってから話すか」
「そうだねぇ」
なので、改めていただきますをして全員ミニスプーンを手に取る。
ひと匙掬って口に入れると、
「「お」」
「まあ」
「へぇ」
「やっぱり美味しいよミーア!」
『やはり美味い』
「美味しいです!」
ホワイトチョコとクリームチーズがこんなに合うなんておっかなびっくり!
土台のクッキー生地はタルトのようにサクサクで、チーズケーキの部分はしっとりなめらかで甘さ控え目。
一ホール12ピースで分けてるから量は少ないのが残念だけど、作り方がわかったから僕でも作れなくない!
焼き加減だけは要練習だろうけど。
時間操作の魔法なんて出来ないから自力でやります。
「ふゅぅ?」
「クラウ?」
今日生まれたばっかりだから食器の扱い方など到底わかんないクラウは、ミニスプーンとケーキを交互に眺めていた。
僕は半分食べてから自分のスプーンを置いて、クラウのお皿のスプーンを手に取った。
「クラウじゃ手が小ちゃいからすぐは無理だろうけど、こうやって掬うんだよ?」
「ふゅ」
そして、おやつの時と同じくあーんをしてあげる。
「ふゅゆぅ‼︎」
「気に入ってくれたようね。神獣のお口に合うようなら良かったわ」
「「「あ⁉︎」」」
「ファルミア何故それを知っている⁉︎」
「え、それって神獣だったの?」
「あー……実はファルミアさんには先にバレていまして」
そう言えばお伝えするの忘れていました。
そして知らないのは旦那さんのユティリウスさんただ一人。
話題が転々転がっちゃうけど、どれから解決していこうか?
だって、まだファルミアさんが僕と同じ世界と言うか日本出身で、こっちの世界には340年以上前から転生されていた事とか色々と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます