023.美味しい朝食
◆◇◆
朝は寝起きすっきりで目が覚めることが出来た。
夢ではないのを頬っぺたをつねって確認してからベッドから降りる。
二度寝したいくらいの誘惑に駆られたけど我慢だ。
「……とりあえず、歯磨こうっと」
昨夜も寝る前に一度磨いてはいるけど、手持ち無沙汰だしね。
しゃこしゃこと磨きながら、今日作る予定のピッツァの構想を練っていく。
また一からだけど、トマトソースは外せない。
ジェノベーゼは見た目もだけど、ニンニクとバジルのクセもあるから先にアナさんとセヴィルさんに好き嫌い聞いてから確認しないと。ダメだったら、トマトソースベースでいくつか具材変えればいい。
そこで僕は、昨日フィーさんの小屋で彼に聞いた食材を思い出した。
(卵……どうせならマヨネーズソースもやってみるか?)
昨日聞いた時は別の事考えてたけど、そっちもいいかもしれない。お昼ご飯にだけど、ジェノベーゼよりは簡単だし早く作れる方がいいよね?
具材も見せてもらってからだけど、大まかに考えとかないと。
ひとまず、歯磨きが終わったので着替えに行く。あらかじめ、動きやすいズボンと上着は確保済み。
着替え終わると同時に、コンコンとノックが聞こえてきた。
「はーい?」
「カティアさん起きてられまして?」
急いで扉を開けに行くと、もう昨日の法衣を着込まれたアナさんが立っておりました。
「まあ、もうご準備が整いまして?」
「今終わったばっかりですけど」
髪とかは適当に櫛で梳いただけだしね。
「お早いですのね。それでしたら、朝食に向かいましょうか」
「はい」
朝だからいきなりコースとかはないだろうけど、どんなんだろう。あの絶品パンを今日は完食したい!
基本お残しはしない僕なので、昨日は悔しかったのです。
僕とアナさんは廊下を歩きながら、たわいもないことを話していた。
「カティアさんはお料理が出来るのですね?」
「はい。向こうでは仕事だったので」
「まあ、そうですの。宮廷にお勤めでして?」
「い、いえ。ごく普通の料理屋です……」
宮廷って、日本で言えば天皇の料理番だよね?
とてもじゃないけど、あんな神クラスの腕前なんてありませんよ! まだまだひよっこの調理人でしかないです。
「あら、エディお兄様とフィルザス様があれだけ楽しみにされてましたもの。わたくし、楽しみにし過ぎて昨夜はあまり寝れませんでしたわ」
「そ、そこまで期待しないでください」
ごく普通に美味しいだけですよ。
過小評価も過大評価もしません。小さい頃から作って食べてを繰り返してきたもの。自分の力量は十分に分かっております。
「よう」
VIPルーム前でエディオスさんと合流です。フィーさんとセヴィルさんはいませんでした。
お寝坊さんだろうか?
「あいつらなら、低血圧だから起きんの遅せぇぞ」
「あらら……」
セヴィルさんは聞いたら納得出来たけど、フィーさんは意外だ。てっきり、しゃっきり起きる人かなぁって思ったけども。
「おはようー……」
と思ってたら、のろのろとした足取りで件の神様がやってこられたよ。
眠そうに目をゴシゴシこすっていた。ぴょんと後毛があったりするけども、神々しさが抜けて可愛らしい印象を受ける。……何されても美少年は絵になります。
「フィー、珍しいな? いつもならもう
「しょうがないでしょ? カティアが料理するのはいいんだけど、蒼とこっちじゃ器具が違いすぎるらしいからね。僕がフォローに入らないとさ」
「へぇ……そうなのか?」
「あ、ありがとうございますっ」
それは物凄くありがたいです。
昨日みたいな窯だと、まだ魔法の素質もわかってない僕じゃ火とか点火出来ないもの。
「っつーと、加えられそうなのは料理長と副料理長か? あとの奴らはフィーとはあんま話すの難しいしな」
「そだねぇ」
部屋に入ると、人数分の朝食セットが既にありましたよ。パンはいつ用意したかわかんないのにほんわか湯気が出ていた。
「カティアさんお腹が空かれまして?」
「うっ……」
どうやら顔に出てたみたいだ。
小さく頷くと、フィーさんとエディオスさんに笑われたよ。
席順は昨日と同じになりました。
と言うのも、物に宿る魔力のパターンが登録されてるから、セヴィルさんが来てないので書き換えが出来ないからだってさ。なかなか面倒ですね。
朝食セットは昨夜と同じくメインのお皿はなくて敷き皿があるのみ。スープもないから、あったかいのは席に着いてから出す仕組みみたい。
冷たいものはもう出てたよ。オレンジジュースみたいな飲み物とグリーンサラダとかは。
「んじゃ、食おうぜ」
エディオスさんの合図で食事が始まる。
セヴィルさんはまだ来ないみたいだけど、いいのかな?
「カティアさん。ゼルお兄様でしたら時期に参られますわ。召し上がってくださいな」
「え、あ、う」
正面だから、ばっちり見られていました。
ああ、顔に出やすいって恥ずかしい。フィーさんとエディオスさんは声押し殺して笑ってるし!
「まあ、アナの言う通り時期に来るぜ? それよか、お前腹減ってんだろ?」
「うぅ……」
エディオスさんにも畳掛けに言われてしまう。
たしかに、お腹は非常に空いております。小さくだけども、ぐぎゅぐぎゅって腹の虫も活発に動いていらっしゃる。これはもう、我慢出来ない証拠だ。
「…………いただきます」
欲望に抗うことは出来ません。
セヴィルさんすみませんが先にいただいております。
他の皆さんもいただきますをしてから、パンなりジュースなりに手を伸ばす。
僕は、愛しのパンちゃんにですとも。
こんがり焼けたフランスパン風な丸パンちゃん。ちぎって口に入れるとなんとも言えない芳ばしさが口いっぱい広がっていく。今日も良い仕事されてますねと内心この後に会うであろう料理人の皆様方に賛辞を贈った。
セヴィルさんが来たのは、メインのチーズオムレツもといカッツオムレツが来る辺りでしたよ。
目の下は隈にはなってなかったけど、頭押さえられてたよ。偏頭痛じゃないかとちょぴっと心配になった。
「……おはよう、カティア」
「お、おはようございますっ」
大丈夫か声をかけようと思ったけど、セヴィルさんが挨拶してくれた時のお顔で吹っ飛んだ。
朝から美形の微笑は眩しいでふ。
「まあ、ゼルお兄様……」
「珍しいでしょアナ?」
「ええ、もう。惜しむらくは、カティアさんのお姿だけですが」
「うーん。思ったよりも泉の力が影響してるか封印のせいか、もうちょっと調べなきゃだけどね」
外野が騒がしいけど、僕は再び朝ご飯を制覇しようと頑張っております。
普通ならペロリといける量だけども、サラダがちょいと多かった。しゃくしゃく歯ごたえあって酸味が絶妙のドレッシングとマッチしてるけども、レタスみたいな葉野菜が若干多くてオムレツ残しそうだよ。
「カティア、無理をして全て食べなくてもいいぞ?」
サラダに悪戦苦闘している最中、セヴィルさんが言ってくれた。
ですが、僕は基本お残し出来ないタイプ。出来る限り食べたいのですよ!
このサラダも美味しいもん。コーンみたいなポタージュでなんとか流し込みます。
「だって、全部すっごく美味しいですもん」
「くく、そうか。こりゃマリウスとかに言わなきゃなぁ?」
「ええ、そうですわね。マリウスを呼んできてちょうだいな?」
「かしこまりました」
僕が賛辞の声を上げると、アナさんが給仕のお兄さん(と言っても、実際はアナさん達より大分歳上っぽい)に頼み事をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます