Magia Medicina 或る魔法医学者の生涯 碩 輔様

 社畜は今日も普通に働きます。


 少し疲れた様子で、トイレに入る。


 人のいない瞬間、ほんのひと時の静寂が訪れる。


 ふっと息をついたその時。


 ズボンのファスナーが壊れました。


 地味な不幸……。


 けれど本当に終わっていたのは。


「参ったな……これネタになるなあ(マジキチスマイル)」


 瞬時にネタになると判断した私は、そろそろ終わっていると思います。


 空いたファスナーで二時間かけて自宅に帰りました。


 これが、


 私なりの露出プレイ(不可抗力)。




 Magia Medicina 或る魔法医学者の生涯 碩 輔様


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883880130


 こんなふざけた前置きから始めることが、非常に申し訳なくなります。


 魔法と医学の探求の道を志す少年のストーリー。その目指す先や、生涯とは誰の生涯なのかと、今の段階では判断は難しいのですが、すでに素晴らしい。


 魔法と医学の融合がまだ、体系化されていない時代を描いています。


 寿命以外で亡くなってしまう病という正体不明の状態が、まだ何によるのか認知されていない時代に、或る魔法医学者は病というものに言及し、医学者を志す者達の成長ストーリーとなっていくでしょう。


 世界の理が認められるまでには、とても苦難が伴うものです。重力の存在、量子の発見、相対性理論など、常識をぶち壊すまでには、様々な艱難辛苦を乗り越えなければいけません。正しいことも認められずに、その生涯を終える方はごまんといるのですから。


 そして何より、文章がいいです。


 ライトノベルの流れを汲む軽やかで爽快な文章。


 SFやファンタジーにある重厚かつアクション性の高い文体。格好良さを強調する難解な言葉遣い。


 情感たっぷりな心情描写。まっすぐな感情表現。


 どれも素敵です。


 ただこの作品、純文学的な、文字に並びや言葉遣い自体を芸術として表現するような、とても優美な文体なのです。


 ジャンクフードやイタリアンに舌鼓を打つのも一興ですが、


 たまには洗練された日本食を食べたいのです。


 三島由紀夫先生とかたまに読んでみると、すごいですから。なんだか高尚になった気分になれますから←この発言が高尚ではない。


 すごく綺麗で文字の羅列の余韻だけで、次の文字次の文字と引っ張られる物語を、たまには読みたくなるのです。


 ライトな文体よりも純文学的な言葉選びが好きという作者様のおかげで、ある意味いい気分転換となりました。


 すーっと言葉が染みるようで、とてもいい響きであると感じました。





 エンタメではなく、ライトノベルでないので、この評価をすること自体がもうお門違いであることはもうわかってはいるのですが、


 最大の売りである魔法医学の研究にかかるまで、具体的には学問として学び舎へ行くまでがどうしても長いです。


 そこに至るまでの人物の動き、流れの美しさも物語の醍醐味であるため、なんだかいちゃもんのようですが、おそらくこのペースで進むのであれば、50万字ぐらい必要になるのではないかと、密かに心配してしまいます。


 そして、どうして物語運びがうますぎるため、先の展開にあまり驚きがないのです。


 もともと、そういった狙いを秘めたタイプの物語ではないのですがね。




 いい物語がどういったものであるかは私にはわかりませんが、より多く読まれる物語は、少なくとも幸せの可能性が高いのではないかと、思います。


 とはいえ、作者様の確かな力量と発想の素晴らしさに、これから時代を切り開いて行く姿を、ワクワクとした無邪気さで、心待ちにしてしまう魅了で溢れていることは確か。


 優雅に美しく、


 新たな価値観の創設を試みても、良いのではないでしょうか。





 あえて素敵さを抽出するというよりは、文体の美しさから世界を表現する技術、私も磨いていきたいものです。


 まあこの感想を書いている時も


 私のファスナーは壊れ続けているのですがね←着替えろ。


 いつでも探しているよ


 トイレで用を足したあとの、


 ファスナーの行方を←着替えろ。


 ……。


 次いってみよー。






 ↑着替えろ。

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