第8話 邪竜との戦い
男が身に付けている黒い鎧から血がポタポタと
ニックの所からでも血の独特な鉄のような臭いが
そして、静かに風が吹いて砂煙がゆっくりと消えていく。
通常ならばあの一撃でペチャンコだが、その場に男は居なかった。その男は、
「あの人、さっきからなんだあの移動速度は! まさか、あれも魔術なのか!? でも、そんな魔術聞いたことが……」
「ニック、あれってもしかして……
「転移魔術……って……あの転移魔術!?」
「う、うん。たぶん、そうじゃないかな? じゃなきゃ、あんな早く移動できないよ」
「転移魔術っていったら、確かに一瞬で移動できる魔術だけど…だとしたらあの人、上位魔術をさっきから無詠唱でやってるってことだよ? そんなのもはや魔法の領域だよ」
上位魔術の無詠唱は、誰もが憧れることだ。けど実際、上位魔術の無詠唱を実現するのはとてつもなく難しい。どんなに優れた魔術師でも3節がやっとなのだ。だから、もし上位魔術を無詠唱でしていたならそれは、魔術ではなく魔法だと前にロゼリア先生は言っていた。
「それにあの人は、
「じゃあ、あの移動速度はどう説明するの」
「そ、それは……」
説明できない。
あんな速度で移動できるのは、本当に転移魔術しかない。
「けど……そんなことって、本当に……」
「どこ探してんだ。俺は、後ろだ」
男は、
その声に反応した
「なっ……」
あの至近距離で、炎を吐かれたら普通避けられない。だが、避けられる方法があの男には、あった。
「転移魔術なのか……本当に……」
「さて、そろそろ終わらせるか……」
そう言って男は、大剣を持ち上げ
するとその大剣から、禍々しいほどの魔力が放出されその黒い刀身は徐々に長く大きくなっていく。
「確かに、お前は強い。さすが伝説の邪竜ってところか…。だが、相手が悪かったな」
男の持つ黒い大剣は、目の前にいる
上空に浮いて剣を上げている黒い鎧を身につけた男は、冷たい目で
「───眠れ」
小さくそう言って黒く長い剣が
二つに割れたその体からも蒸気のようなものがたっていた。
「あっ……」
言葉が出てこない。
さっきまで炎を吐いて町を破壊していた
男は、ゆっくりと上空から降りて来た。さっきまで持っていた
怖い。
ニックは、心の底からそう思った。けど、恐怖心より何故か興味の方が気持ちは大きかった。自然と口は動き言葉を発していた。男の背中に向かって今、自分が一番聞きたいことを率直に聞いた。
「あなたは……何者なんですか……」
その言葉が聞こえたのかゆっくりと男は、振り返る。
男は、ニックに向けてハッキリとした口調で喋った。低い声がニックに届く。
「俺の名前は、シルヴァ」
シルヴァ、と名乗ったその男はさらに続ける。
「魔王シルヴァだ」
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