第2話 希望の光
今日の授業は、午前で終わりらしく
授業が終わり全員が素早く教室を出ていく中、教室に残ったニックはまた魔術の本を読んでいた。教室にはニック以外にも炎のような赤い髪を腰まで伸ばしたリナがいる。
前の席で反対に座りニックの机に両手で頬杖をついているリナは不思議そうな顔でニックを見ている。
「ねぇ、ニック」
「ん? なに?」
本に視線を向けながら応える。
「授業なにかあったの?」
「なにかって?」
「なにかはなにかだよ。ニックがあれだけ注意されるって珍しいから」
たった一回の謎の鼓動のせいで授業に集中出来ず注意されること十回。さすがに注意され過ぎだとニックも思う。
「……何でもないよ」
「本当?」
「うん……」
こんなことをリナに言っても意味がない。というより自分でも何がなんだか分からない。だから、ニックはリナに嘘をついた。
「……そっか」
その声が何故か寂しそうな声に聞こえたのは気のせいではないだろう。しかし、リナは気にしていないような表情で赤い瞳を本に向ける。
「んじゃ、さっきからニックは何読んでるの?」
「あー、これ? これは、上位魔術の本だよ」
「なんで、上位魔術?」
「えっ? そりゃ~……使いたいから」
「下位魔術使えないのに?」
ニックの心に何かが刺さる。天然とは恐ろしい。
「……」
「ちょっと見せて」
ニックは、片手で言葉という剣で刺された胸を押さえながらもう片方の手で持っていた本をリナに渡す。受け取ったリナはページを適当にめくり始めた。そして、めくっていた手が止まった。
「どうしたの?」
「あのさ、これならニックも出来そうじゃない?」
そう言ってニックに見やすいように本を回転させて机の上に置く。ニックは、開かれていたページを見てその魔術の名前を読みあげる。
「使い魔……召喚?」
その魔術は、そう書いてあった。そのページには必要な道具ややり方がこと細やかに記されていた。どうやら召喚魔術の一種のようだ。
「で、なんでこれなの?」
ニックは、
「この魔術、魔力をあんまり使わないで出来るって書いてあるんだよ。なんか、道具を揃えれば
そう言いながら、ページに書いてある文を指でさす。ニックは、その文を読んで驚く。
「ホントだ……」
ニックの顔が徐々に輝いていく。
希望が見えたのだ。自分もすごい魔術が使える!
そう考えていると、あることを思い出す。
「でも、これ……上位魔術の本だから、そこに僅かな魔力でもって書いてあっても僕にとってはものすごい大きい魔力だよね……絶対」
ニックは、重い息を吐きながら落胆する。だが、目の前に座っていたリナがいきなり立ち上がった。それに、ビックリしたニックはリナの顔を見上げる。
「そこは、私が力を貸すよ!」
自分の胸に手を置いてニックに笑顔を向ける。その笑顔は、すごく眩しく頼もしく可憐だった。思わず見とれしまい目を
「えっ、でも……」
「魔術、使いたくないの?」
リナの問いかけは、とうに答えが出ていた。
ニックは少し俯いて黙っていたが口角を上げて立ち上がる。
「……使いたいに決まってるじゃないか!」
全然使えない魔術を使えるようになるには、何も自分一人で頑張る必要は無い。誰かの手を借りて成し遂げればそれをきっかけに他の魔術も練習すれば使えるようになるかもしれない。今は、二人でもいずれは一人で魔術が使えるようになればいい。
「よし! それじゃー、この使い魔召喚とかいう魔術を使ってみよっ!」
「うん! じゃあ、まず道具を探しに行こう! この学園なら全部揃ってそうだし」
ニックは
「ニック!」
急に名前を呼ばれて危うく
「な、なに?」
「魔術使えるようになって、あいつらを見返してやりましょ!」
あいつらというのは、朝からかってきた人たちのことだろう。いや、それだけでは無いのかもしれない。
太陽のような笑顔でリナは
少しビックリしたニックも笑ってリナの元まで近づく。
「うんっ!」
ニックとリナの拳が強く合わさった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます