第7話 新たなる試み!

やあ、皆さんこんにちは。アドルフ・ヒトラーです。

士官学校に入学してから二年目となりました今日この頃……私、正確に言えば私たちはある事に悩んでいます。その悩み事とは我々の将来に大きく関わる大事な大事なことなのです。


その悩み事とは………







「全っ然!うまくいかないぞぉ!!!」

「………」

「ま、まだ二年目だからね?だ、大丈夫だよ!」

「やっぱり俺たちは出来ない落ちこぼれなのか……」

「お前ら元気出せ!何とかなるって!全然飛べなくても何とかなるって!」


アドルフこと俺とヤーコブ、エドガー、フォルカーの顔は芳しくない。と言うかヤーコブは顔面蒼白になってるし、エドガーらしからぬ後ろ向きの言葉が出ているし、唯一前向きなフォルカーも声が震えている。

フォルカー、俺は大学で四年間経験したけどあっという間に終わったぞ?


そう俺たち四人は、まるで成長できていないのだ。

飛べないのだ。航空魔導士なのに飛べないのだ。

正確に言えば飛ぶことはできる。遅くとも飛ぶことはできる。

だが戦闘機動がまるでできない!俺は魔力の無さで、ヤーコブは高所恐怖症で、フォルカーは空戦機動ができず、エドガーはアドルフと同じ理由である。

正直に言おう………これ、もうダメなんじゃないかな……魔導師なのに空飛べないって……もうダメだぁ、お終いだぁ!


「今日はここまでにしようぜ。日も暮れてきたし」


そうベネディクトが言い、正直に頷く俺たちはとぼとぼと重い足取りで、兵舎へ帰った。







その夕食を食べ、入浴を済ませみんな大好きな自由時間が訪れた夜、アドルフは一人部屋で机と向き合っていた。

日課としている日記に今日起きたこと思ったことを書いた後、前世の記憶と知識を忘れない為のメモを読み返す。

そしてあるページで手を止める。

そのページに書かれていたのは、前世大好きであったリアルロボット物の独立戦争を挑んだ公国が使っていた、具体的には一つ目の緑色の17.5mの量産型。


「そうか――――飛べないなら歩けばいいんだ!」


そう声を上げて嬉しそうに立ち上がる。

しかしすぐに顔が戻り着席。


「魔導士の利点が潰れるじゃん……」


魔導士、とりわけ航空魔導士はその航空機以上の機動力と展開力、歩兵と同等の柔軟性、戦車と比較できる程の防御力、と言う万能性使い勝手の良さが売りなのに、歩くとはそれらの利点を台無しにする事になる。


ではどうするか?

アドルフは考えた。時間にすれば僅か15分ほどではあったが、彼は決意した。一度決めたことは必ずやり遂げようとする粘りず良さ、頑固さを持っている彼は、今考えうる最善の飛行手段を明日試してみようとそう決めた。

そして忘れぬように、日記とメモに書き込んだ。


「やってみよう。神様、どうか明日はいい天気になりますように」


そう願いを口にした後ベットで体を横にし目を閉じた。







翌日


アドルフのささやかな願いが届いたのか、天気は晴れ。青空と言うキャンパスに白い雲がいくつか浮かんでいた。


「いい天気だな……まさしく絶好の実験日和だ!」


そう意気込むアドルフは、早速、自分の航空補助魔道具を倉庫からグラウンドへ運び、身体に装着する。一つ一つ安全確認を声を出しながら行い、装着し終えるともう一度安全確認をした後、目を閉じる。


「イメージは地面を這うように低く、スケートみたいに」


何度か呟いた後、目を開け自からの足を見る。

そして魔力をゆっくりと込めていく。

本当にゆっくりと、徐々に込めていく。額に汗がうっすらと浮かび上がってくる頃に、やっと地面から足が離れた。

本来ならここまでは普段のアドルフでもできる。

しかし今日はここからが本番なのだ。


「ゆっくり……ゆっくり……」


徐々に体の重心を前に腰を少し落とし、そして膝を少し曲げ倒れないようにする。イメージ通りの型を造り、足の裏に魔力を集中する。


「イメージは……よし」


ゆっくりと進み始め、徐々に速度を上げていく。そしてイメージしたとおりに身体を動かす。右へ左へ足腰を使って方向を変える。


「これは、いけるのでは?」


そう思いながら訓練を続けるアドルフだった。







一通りやりたいことをやって得たことをノートに書いていくが、その顔はあまり良い顔ではなかった。


「速度が遅い、バランスが取りづらい、方向転換が難しい。魔力消費は抑えれる………こんなところかな」

 

まず速度が思った以上に出なかった。勿論、歩兵よりは断然早いが航空魔導師よりは明らかに遅かった。次にバランスが取りづらかった。慣れていないと言うこともあるが、航空補助魔道具を想定されていない使い方をしているためであった。方向転換が難しい。これは地面に浮いているため、足首をいちいち曲げなくてはならず、さらに角度がずれれば違う方へ向きあらぬ方へ進むことになった。浮いているが三次元機動が出来ず、二次元機動しか出来ず、浮く意味があまりなかった。

良かった点は、魔力消費があまりなかった。浮くだけであるし移動するのも足首で方向転換をするので、常にそれを飛び回る事がないので魔力消費が抑えれた。


「うん………欠点の方が多く感じるけど魔力を使わないってのは良いな。またいろいろ試してみよう」


こうしてアドルフの試みは幕を閉じた。




しかしアドルフにとってこれが始まりだったのだ。

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