第2話 転生先は、幼女の世界でした
統一暦 1904年 ヴィーン
この世界に生を受けて、早五年。身体もある程度の事が出来るぐらいには成長した。父も母も優しく俺の事を愛してくれる。比較的に裕福な中流階級の家庭であり、不自由なことは無い。
ただ問題があった。
一つ目はこの世界についてだ。俺や父に母が住んでいる国の名前は
………完全に幼女戦記の国々なんですけど?
確かに俺は幼女戦記が好きだ。ふつうは大歓喜して「原作知識とチートで無双!ハーレム!」とか言うだろう。
あいにく、俺には原作知識がほとんど無い!何故ならアニメを見てはまった人間だからだ!アニメを全て見た後、直ぐに近くのアニメショップに行って小説全巻買った!だが仕事とかあるから読むペースは遅い。そして死ぬ前の日まで読んだ巻は三巻目、しかもほんの十ページほどだ。
つまりほとんどアニメの所までの知識しかない!小説の知識はほとんど無い!原作知識は全くない!
原作知識を活かした無双なんできるわけが無い!もしこの世界が原作軸の世界だったら、俺は何にも出来ない役立たずだ!なので、出来ればアニメの世界でありますように、毎日神様達にお願いしている。軍事知識を持っているがゼートゥーア閣下やルーデンドルフ閣下、レルゲン少佐のような作戦を立てれる自信は無い。それ以前にこの世界の主人公である幼女の皮を被ったオッサンであるターニャ・デグレチャフさんみたいな膨大な魔力も戦闘能力もカリスマ性も持っている自信が無い!
魔力に関しては身体検査をまだ受けてないので何とも言えないが、あんな恐ろしい機動をしながら空中戦をやれる自信は無い。
これ以上この世界に対して文句を言っても仕方が無い。神様達に生きたいとお願いしか結果がこれなのだからどうすることも出来ないし、諦めるしか無い。
次に問題なことは、俺自身の名前だ。
俺の名前はアドルフ・ヒトラー。
史上最悪の独裁者と言われた人間と、名前のみならず苗字までも完璧に同じだ。
………正直なところ縁起が悪い名前なので今すぐ変えたい。変えたいが父も母も独裁者のアドルフ・ヒトラーを知らないし、知るわけが無い。初めて生まれた我が子の名前だ。吟味に吟味を重ねて愛情を込めて付けたのだろう。それを変えるとなると、すごい罪悪感に襲われる……ま、まあ独裁者と名前が同じなだけで大丈夫か………
………名前が同じだけだよね?それだけだよね?
しかし、それにしても……
「どうすればいいんだろう……」
思わず口から言葉が漏れてしまう。これから始まるであろう戦争の時代、しかもこの世界で初めて起こる世界大戦。そして帝国が連合国軍に敗北して終わるとされている戦争、原作や小説ではそうなっていた。
まず生き残れるのか?そんな地獄の総力戦の中で、ただの一兵士になるであろう俺が?
死にそうだなぁ……死んじゃうだろうなぁ……後方で勤務したい気持ちが、良く分かる。テレビや本で見ていた傍観者の立場から当事者になった途端、戦いたくなくなった。ターニャ・デグレチャフさんのように大戦果を上げてネームドに成りたいという英雄願望が前世はあった。今はむしろ、出来るだけ目立たないで後方勤務に就きたい気持ちが強い。もう死にたくないからね!
「アドルフ~!何やってんの?」
「あ、ベネディクト。少し考え事してたんだ」
河川敷で黄昏れているところに、現れたこの子は近所に住んでいるベネディクト・アーノルドくん、5才。
この世界で初めての友達だ。
金髪のフワフワヘアーでとても可愛らしい男の子だ。別にショタコンとかそう言うのではないぞ。ただ単に幼く可愛らしいと思っているだけだ。
「考えごとってなに考えてたの?」
「将来どうしようかな~って考えてたの」
「将来?」
「大きくなったら何をしようか考えてたの」
そう言うとベネディクトは、腕を組んで考え始めた。正直、その考える姿も可愛い。子どもってこんなに可愛い生き物だったとは……俺も子どもだけど。
「ん~~~……魔法使い!」
「そっかー魔法使いかーがんばれ」
ベネディクトくんに魔力があることを祈りつつ、後方勤務になりますように。
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