第6話 いやな決断

そして今、目の前にいるおかんは、最後に会った4ヶ月前よりさらに別人のようになっており、その状態を見るとよりやり切れない思いが込み上げてきました。

とにかくも、せめても救いはいわゆる畳の上で死ねるということです。

元の元気な状態に戻るなど、望むべきもありませんでした。


看護師から色々入院に際しての準備品とかの説明を受け、明日準備してくることを伝え今日は帰ることにしましたが、ひとつ手続きの最後に署名するものに、延命治療を望むか望まないかと言うものがありました。

一瞬固まりました。

看護師の説明では、具体的に、「いざという時に、酸素マスクを付けて延命するかどうかです。」

つまり一旦酸素マスクを付けると、外すことは出来ないということでした。

ちょつと間をおいて私は、「延命治療はのぞみません、自然の成り行きにまかせます」と返答しました。

この事は、後々までこれで良かったのかどうか悩まされました。

とにかく、もう90才で十分生きた。

元気な状態であれば少しでも長生きして欲しいが、今の状態で生き長らえても、決しておかんのためにならないと無理からに自分に言い聞かせ納得しようとしました。

何と悩ましいことを聞くのかと思いましが、これも病院のルールなのでしょう。

仕方ありません。

しかしこの決断は、この後、そしてこれを執筆している今現在でも「本当にこれで良かったのかどうか」の罪悪感があるのも事実です。


取り敢えずこれでこの日は帰宅しました。

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