第4話 決して幸せとは言えない

実はこの時、おかんはひとりでいた訳ではありません。

さすがに90歳の老人を一人暮らしさせるのは気が引けます。


私は元々4人兄弟でありました。

しかし長男は、32歳の若さで、病により亡くなりました。

父親は亡くなって20年が過ぎ、その頃から長女は引きこもり、そして昨年亡くなりました。

私は、末っ子の三男ですが、兄の次男がおり、この次男とおかんは二人で暮らしておりました。


当日も次男はその場におりました。

一体次男は何をしてたのかと言う疑念が湧くのですが、実はこの次男、知的障害があります。

ただ、生活に支障をきたすほどでもなく、就業していた事もあり、特に障害の認定は受けておりませんでした。

この様におかんは、4人の子供のうち、2人を亡くし、障害のある息子とほそぼそと

生活する状況で、自分の親ながら、なんと不幸なのかと、他人ごとの様に思うこともあったり、自分なら到底耐えられないだろうと思うこともありましたが、おかんは常に前向きにいきておりました。


しかしこの辺がかえって仇となった気がします。

あかんは決して私を頼ることなく、私もおかんなら多少何があっても大丈夫と言う気があってほとんど構っていませんでした。


当日実家を訪れた妻は最初この兄に「お母さんは」と尋ねました。

すると兄は「トイレで寝てる」と答えたのです。

「いつから」と聞くと、「昼から」と兄が言い、ただごとではないと感じ、妻はトイレへ駆け寄り、ぐったりしたおかんを発見したのです。

妻も兄に対して呆れ果てましたが、私も真夏の炎天下でしかも屋外のトイレで何時間も居たらどうなるかと言う判断すら出来ないほど能力が低いとは、何十年も兄弟してきて初めて気が付きました。。

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