第2話サボり部屋からのMusicが
5月のGWが終わった頃、清々しい朝と共にやって来たアイツの返却日。
アイツって何だと思う?
ヒントは俺的には、もう一生返ってきて欲しくないもの。
そう、『新入生テスト』が返ってきて来るのだ。しかもこの学校『勉強に対する関心を上げる為。』とか言って毎回テストの結果は、学年ごとに場所を変えて、貼り出しあがる。自分の点数、赤点か、そうでないか。自分の順位から、学年トップとの差とか全て。
今回の1年生のテスト結果の貼り出しは、体育館だったので、早速体育館に入ったのだが…。
「スミマセン、ちょっと通して下さーい!」
(何なんだよ、この異常なまでの混み具合は!?)
この学校は入試が他の学校に比べて特殊だから、普通の高校なんかより生徒は少ないはずなのに。にもかかわらず、この人混み。おかしいでしょ!?
……あっ!!
思い出した。テストの貼り出しは、どの学年の人でも見れるんだ。だから、別の学年の先輩方も見に来てるんだ。
理由が分かった途端スッキリしたのも束の間。また人混みに押し潰されそうになってしまう。
すると、
「輝神!こっち!」
いきなり、誰かに腕を引っ張られた。すげぇ痛かったけど、ソイツのお陰でとりあえず俺は人に押し潰されず、済んだ。
「ありがとう…」
そう言ったときには、ソイツもう歩いていってしまっていた。でも、上履きの色からして同じ学年だというのは分かった、顔は見えなかったけど、代わりに名札は見えたんだ。
『
あっ、黒川って同じクラスの。
(後でお礼言っとこう。)
俺は、そう思って自分のテスト結果を見る。
数学は赤点ギリギリだったけど、それ以外は普通だった。でも、正直明日樹が総合でクラス2位だったのは、驚いた。というか、ムカついた。アイツバカだと思ってたのに。
人混みに酔いそうだし、教室行こう。そう思ったとき、聞こえてきた噂に俺は目玉が飛び出そうになった。その噂は…
「なぁー。聞いたか、アイツのウワサ!」
「あぁ、聞いた聞いた!1-Aの黒川って奴のことだろー?」
「マジすげーよなー。オール満点とか。」
「アイツの頭ん中どうなってんだろうな?」
は…?今の…幻聴じゃあねぇよな?
俺は事実を確かめるため、人と人の間の隙間から1-Aの結果を見た。
国語…100点満点中100点(満点)
数学…100点満点中100点(満点)
理科…100点満点中100点(満点)
社会…100点満点中100点(満点)
英語…100点満点中100点(満点)
実技教科(50点満点)
音楽…50点満点中50点(満点)
保健体育…50点満点中50点(満点)
美術…50点満点中50点(満点)
技術家庭科…50点満点中50点(満点)
実技テスト…判定SS
…嘘だろ…!?マジで!?
しかもあの超ムズかった実技テストの判定SS!?
(※実技テストの判定は、良い方から、SS→S→A→B→C→Dとなっている。)
クソッ、ムカつく。俺なんて実技テスト、Aだったのに…。
悔しさを感じながら、教室に入ると、
「あっ…」
「向こう行こう」
色々な女子や男子がそう言う。
あのぶちギレた日から、俺は完全に避けられるようになってしまった。でも、明日樹は俺を避けたりとかしなかった。むしろ、あれから少し仲良くしてくれてる。…正直意外だった。
…そういえば、アイツは?
そう思って教室を見渡すと、人の群れが見つかった。
…多分あん中にいるだろう。近付いて見るとアイツはこの世の終わりみたいな顔で、自分の席に座ってた。すると、アイツの周りにいる女子が、
「ねぇあす、大丈夫?」
「そんなにへこむことないって。」
って慰めてる(ぽい)。
(アイツ、まさかクラストップじゃないだけで、あんな表情してたのか?)
そうと知った俺は、腹を抱えて笑いそうだった。
…だってアイツだぜ?あの超が付くほどカッコつけで、チャラいアイツが。こんなことごときであんな顔…ぶっ!笑える。
「あっ…!?輝神!…ちょうど良かった。…ちょっと話がある。」
そう言って、明日樹は俺の腕を引っ張りながら、保健室ヘ歩いていった。
「話って何だよ?」
「頼む!昼休みに俺と、黒川の調査に付き合って!」
保健室に連れていかれ、突然頼まれる。
「は!?…調査って何すんの?」
いきなり調査と言われても、俺全然勝手がわかんない。
「黒川の秘密を探ってみたいんだよ!…なぁ、頼むよ!」
「…わかった。その代わり、俺もずっとぼっち飯は流石に堪えるから、一緒に弁当食って。」
「オッケー。…マジ、サンキュ!助かる。」
そう言って、明日樹が笑う。…流石、クラス一のモテ男。
男の俺でもカッコ良いと思うし、背も高いから女子の間からの告白が絶えない理由も分かる。
(今の笑顔、女子が見てたらどうなったんだろ?すげぇ気になるけど、恐ろしいことになりそう。)
俺は、それから教室に戻り授業を受けた。…密かに、昼休みを楽しみにしながら。でもまさか、あんなことになるなんて知るよしもなかった。
~キンコーンカンコーン♪~
この学校お手製の鈴からつくられた鐘が昼休みを告げる。
…やっと授業終わった。俺は明日樹を呼ぶ。
「明日樹、いける?」
「あっ、ちょっと待って!…よし!OK!…行こう。」
「あぁ。」
二人でさっき教室を出た黒川の後を追おうとすると、
「あす今日はそいつと食べんの?」
と女子に引き留められる。
明日樹は、
「うん、悪いな」
と返し、すぐに教室を出て、黒川を追った。
「えっ!?…今黒川ここに入ったよな?」
「うん、入ってった。…ここってサボり部屋だよね?」
黒川があの後入ってったのは、サボり部屋とか、物置部屋と呼ばれているサボりが溜まることで有名な第3音楽室だった。
あまりにも衝撃的で呆然としていると、
~♪
そこから、キーボードとギター。そしてドラムの音が聞こえてきた。そして、扉の隙間から覗いて見ると、その曲を弾いてるヤツが見えた。なんとそれを弾いてるヤツは、ドラムを黒川が、ギターが副会長、キーボードを弾いてるのは生徒会長だった。
「「…!?」」
俺も明日樹も放心状態になったまま、動こうとしたから、お互いが見えてなくて俺と明日樹はぶつかってしまった。
その音で、3人に俺達の存在がバレてしまった。3人はすんごいどす黒い笑顔で、
「「「君たち、今の見たね?」」」
と俺達を見た後、俺達を半ば無理やりサボり部屋に入れた。俺達は呆然としたまま3人の方を見た。副会長は、
「見られてしまったから、全部話すけど実は俺達今、軽音楽部の設立の為にメンバーを募集してんだけど、メンバーが全然集まらなくて困ってたんだ。こうして、空いた時間にこういうことしてるけど、やっぱもっとメンバーが欲しいんだよ。…なぁお前らさ、軽音楽部のメンバーになってくんない?頼む!」
と、最終的にそんな事を頼んできた。
(はぁ!?俺達も悪かったけど、この人図々しいにも程があるでしょ!?)
俺はあまりの図々しさに軽い苛立ちを覚える。それでも、その軽音部(仮)に少し興味があるのは、父さんもボーカルをしていたから…だと思う。
(…明日樹は音楽について、どう思ってるんだろう?)
俺は少し気になって、明日樹を見た。明日樹はもの凄く驚いた顔をした後、
「別に音楽は好きなんで全然良いんですけど俺、母親が体弱くて、幼い妹の面倒見たりとかで、抜けてしまうことが多々あると思うんですけど、それでもいいなら、全然いいっすよ!」
と、応えた。
(はぁー!?マジで!?…でも、明日樹も音楽好きなんだ。)
この学校は音楽(吹奏楽や、合唱部)で有名だし、音楽が好きなのは割りと普通なんだけどでも、何でだろ?…ちょっと、嬉しいとか思ってる俺がいる。
「ああっ!でも俺楽器とか…ベース…そうだベースなら、俺出来ますよ!」
明日樹はそう言っていて、かなりやる気満々だ。
(俺はどうしようかな?)
そう思っていると、
「はい、じゃあ二人共これ!入部届け書いて!」
と、副会長が入部届けを渡して来た。
「…はぁ!?俺入るなんて言ってないんですけど!」
「えぇ!?入んないの!?何で!?…あっ、ごめん、忙しい?…でも、来れるときだけでいいから。」
「だから、そう言うことじゃなくて…!」
「だったら良いじゃん…って痛っ!?」
「こら!話を聞く。=《イコール》拒否してねぇつー捉え方、いい加減止めろ。…それで、別に無理強いする気は一ミリもないけど、軽音楽部に入んの?
(…この流れ、確実に俺の拒否権はほとんどねぇんだろうな。)
生徒会長は、にこやかにしているけど、無言の圧がある。こういうのを
て言うか途中から、もうイエスとしか言えない雰囲気出来てたし。
…まあ、別に嫌じゃないし。
「…分かりました。入りますよ、軽音楽部。ただし、俺が何をするかは、先輩方で決めてください。」
「マジ!?サンキュー!じゃあ、輝神には…キーボードは俺だし、珠凛はギター。夏博はドラムだろ?で、明日樹君がベースになったから…よし!輝神朝日!今日から君はボーカルだ!」
こうして、俺は軽音楽部に半ば無理矢理入った(入らされた)んだけど、もし俺がここで軽音部に入ってなかったら、あの五人と楽しく過ごすことも、兄さんを見つけることも出来なかっただろう。そして、大切な人と結ばれることもなかったと思う。そうやって考えたら、こん時の俺は、メチャクチャラッキーで、いい選択をしたな。なんて思いながら、今でも俺は音楽を続けてる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます