Music in Love
星原佐梨奈
第1話 First Contact
「ねー!昨日のミューファン見たー?」
「見た見たー!凄かったよね…。エスポワとフュースタ!」
「コラボした新曲!しかも、エスポワの
「声の相性良かったし…あぁ、CDの発売超楽しみ~!」
廊下を歩いていく女子がそう言って騒いでた。
(あんなののどこがいいんだろ?かんがえらんねー。)
俺は、
一昨日の入学式を終え、3度目の登校。俺は正直、憂鬱でしかなかった。
それは、さっきの女子の会話に出てきたことと、少し関係ある。
実は、さっきの会話に出てきた罫斗君は、俺の兄貴。
史明さんは、俺の親父なんだ。
《エスポワ》とは、兄貴の所属するユニット《espoir(エスポワール)》の略
(ちなみに、espoirってフランス語で《希望》って意味らしい。)で、兄貴はエスポワのリーダー兼ギター担当。
親父は、フュースタ…《Future Stars(フューチャースターズ)》のドラム担当らしい。
『ミューファン』てのは、『ミュージックファンタジー』という年二回ある、とても有名な歌番組だ。
そんな有名な番組に出ている位、二人とも有名で人気がある。
しかも『輝神』なんて珍しい名字だ。俺が二人と血が繋がっていると言うのが初日でバレない訳なくて。そのせいで、話し掛けられても内容が大体、『兄貴か親父の話、聞かせて。』しか聞かれないんだ。
しかも、俺は正直兄貴も親父も、大嫌いだから、余計嫌だったんだよ!
教室に入ると、いつもの如く女子に囲まれ、「ねぇねぇ、罫斗君のこと何か教えて」とか、「史明さんのサインもらってきてー!」言われた。
俺は3日目にして、とうとう堪忍袋の緒が切れてしまった。そして、思わず
「俺は、あの人達と、血が繋がってねぇんだよ!そもそも、一緒に住んでもない!」
そう言ってカバンと、《とあるケース》を持って屋上に行った。途中、チャイムが鳴ってた気がしたけど、そんなこと、心底どうでも良かった。
俺は屋上に着いたら、早速とあるケースからトランペットを出した。そして、思い切りトランペットを吹いた。
父さん…母さん…
昔のことをふと思い出していたら、涙が出てきて止まらなかった。
~♪
(…ん?)
耳をすますと、懐かしいベースの音がしてきた。
そして、その音は俺の吹いていた曲と、同じ旋律を奏でながら、近付いてきた。
「もう泣かないで。大丈夫、大丈夫。」
その音を奏でていた人物は、俺の頭を優しく撫でてくれた。
その人のゴツゴツした温かい手が、《父さん》の手みたいで、とても落ち着いた。
だが、そんな心の温かい感覚は、すぐに肝が冷えるような感じに襲われた。だって、ソイツは…
「あっ…!?
「あっ!輝神、大丈夫。このこと誰にも言わねーし、サボりも大目に見るよ。」
「!?…サボり?」
「今、一応授業中だぜ。」
「あっ!そっか。今、ホームルームの時間か!」
「あはは、気付いてなかったのかよ。…それはさておき輝神、もう大丈夫か?」
「へ?」
「その様子なら大丈夫そうだな。…良かった。」
「…何?」
「何でもない。…それより、一時間目はこのまま一緒にサボらねぇ?このまま授業受けんのめんどいし。」
「じゃあ、そうしよっかな。」
(コイツ思ってたより、いい奴…なのかも。)
なんて、明日樹を見直してた時。
「そんなの認めらんないねー!」
生徒会副会長(別名、生徒会の白き
…何か、嫌な予感。
俺のその予感は見事的中し、副会長の後ろから、
「とりあえず、事情聴取といくか。」
という低い、そして面倒くさそうな声で、生徒会長(別名、生徒会の黒き
「とりあえず、「「何で今、こんなところにいるの?」」
と、一気に詰め寄られたが、明日樹はそれにも怯まず、それどころか
「先輩方こそ、今ここにいるのはおかしくないですか?」
なんて、返してる。
それだけでもかなり驚いたけど、先輩方の次のセリフには、もっと驚いた。だって、先輩方は…
「別に。」
「俺達もう単位取ってるから、別に授業出なくても良いんだよ。」
(※俺達の通う私立美音咲高校は、各定期テストの結果だけでも単位があれば、授業に出なくても進級できるのです。しかしテストオンリーで単位を取るには、定期テストで学年トップ10に入らないとダメらしいのです。)
つまり前回の期末テストがこのお二方は、トップ10だったってことになる。
(す、すげぇー!)
俺には、はっきり言って無縁の『トップ成績の方』というイメージが会長達にすっかり植え付けられた。
でもこの人達は、実はかなり無茶苦茶で、我が儘で。
……俺達のこれからの未来に、必要不可欠な存在になるってことを、このときの俺は知らない。
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