第2話
海面にはブスブスと焼け焦げた後のスモールワイバーンが漂っている。船上の海上自衛隊魔法士隊の魔法士の中には吐き気を催しているものもいた。
そんな中、2人は鼻につく焼け焦げた臭いに眉一つ動かさずモーターボートに乗り、湾岸へと姿を消す。
「やっぱり、お爺様が下さったこの刀の扱い方の訓練しなくちゃね」
「けど、動きは良かったと思うけど?」
エメラダが不思議そうに東眞を見つめる。
「あいつらの首チョンパした時の刀の切り口が乱雑だったし、
「けどまぁ、この年代の技術じゃトップクラスだと思うけど?」
「けど俺は高校二年生として入学するからな。他と比べりゃハイレベルだろうが、姉さんが当主になった時に護衛するのは僕だろうから、もっと頑張らなきゃな」
理由は簡単。エメラダを守るためと既に魔法技術が一年生レベルでは無いからである。
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4月8日、始業式を行う講堂に退魔高校2・3年生が集まっている。
「
「どっから手にいてれきたんだか……。いいかい零士? 根も葉もない噂を信じるんじゃ「それでは、転校生の紹介です」」
千石 彩純は頬を赤らめ、自慢げに胸を張る清嶋 零士を睨みつける。
現れたのはやや強面の長身の男と、金髪碧眼の絶世の美女。講堂の空気は一気に変わる。
「それでは紹介します。四ツ木東眞さんお願いします」
四ツ木と聞いただけで周りがどよめく。
「皆さんおはようございます。四ツ木東眞です。四ツ木家は確かに『御三家』等と言われる家です。魔法士にとって血筋とは大切なものです。だけどここは魔法や技術のみねで研鑽し、練磨する場所。お互い仲良くしましょう」
『御三家』からの予想外の声に会場がザワつく。
「それでは続いてエメラダ=四ツ木さん、お願いします」
「ご紹介に預かりました。エメラダ=四ツ木です。義弟の東眞の方とは血縁関係は御座いません。先程、我が家の名を聞いて動揺する人も居たと思います。しかし、義弟の言う通りに距離を置いたりせず互いに切磋琢磨していこうではありませんか」
挨拶というより演説に近い形で2人は話し終える。会場から拍手喝采が送られる。
そして2人は舞台袖に消えてゆく。
「これで少しでもイメージアップに繋がれば良いけどね」
「ホント、ココ最近風当たり強いからね~」
人の悪い顔で2人はコソコソ喋る。
何か異質なもの、異様なものを扱うものにはあまり良い感情を持たれることは無い。魔法士もその例外では無い。
「続いて、学院長からのお話です」
司会の透き通った声で呼び出されたのは、魔法学の権威のニュージェネルカ大学魔法学部を首席で卒業し、全国魔法士協会という魔法士達を纏める立場にある組織の副ヘッドをやっている女傑、古手川 紫乃である。
一礼し、ショートカットのいかにもできる女の雰囲気を出している。
「まず先に伝えておきます。皆さん、先週のアップデートの影響で一部授業を変更することをお知らせします。」
先週のアップデート、それは『ダンジョン』を各国に一つあるいは二つ設置するとして、エデンは全世界同時発表した。
「具体的に言いますと、陸上自衛隊魔法士隊のご協力を得て、ダンジョンでの実習を行います」
心底面倒臭がるもの、喜ぶもの、そもそも寝てて気づかないものが見受けられる。
「特に多くは語りませんが、ここでの経験が将来活きるよう改めて魔法に勉強に部活に励んで下さい」
再び一礼すると学院生は座礼する。そして、ぞろぞろと退場していき各学年の階に張り出されてあるクラス分け表を目指して行軍する。
「東眞はB組だったよね?」
「そうですお姉様。終業しましたら僕が迎えに行きます」
「確かにあんたは護衛だけど家では普通にしてよね? それじゃ、A組で待ってるよ」
エメラダはそう言い残すと廊下を歩き出した。それに合わせ東眞もてくてくと歩き出す。
一部実力主義であるこの学院はA.B組は成績優秀者で一部の特権が与えられる。その特権は模擬戦闘場の貸し出し優先など細々としたものである。C.D.E組はそこそこの成績、F.G組に至っては成績不良者が入るクラスとなっていて、日本魔法士のレベルの底上げの為にカウンセリング等のサービスは充実している。
学院のプロフィールをここに来て思い出し、教室のドアに手を掛ける。教卓前に立ち、自己紹介を始める。
「先程紹介しましたが、改めて紹介させて頂きます。四ツ木東眞です。義姉のエメラダの護衛の為、15歳ですが2年生のクラスに編入させて頂きました。何卒、宜しくお願いします」
スラスラと喋る一歳年下にB組の面々は感嘆せざるを得なかった。
何せ一つ下の子が成績優秀者として編入するという才覚を見せているのだから……
それを見た彩純と零士はただただ目を見開くしか無かった。
世界は一部ファンタジー化しました 木原 @Kiruhara810
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