アリスと読書

 アリスに本を薦められてから本を読み始めた。


 最初は文章だけの世界は苦痛だ。


 目も疲れる。


 一日一冊ペースで読んでるせいである時アリスから「そんなに一気に読まないの」と笑いながらドクターストップして紅茶を入れられた事がある。


 目に良く効くらしい紅茶とか言ってたが本当に美味しくて目の疲れが吹き飛んだ。

 

 そもそも何処から紅茶を出したのか謎であるがアリスの力の一つだろうと強引に納得とした。


 そもそもアリスの存在事態が十分にファンタジーの領域である。


 漫画ならもうそろそろ魔術師やら何やら追加で現れると思うのだがそんな気配はなかった。


 相変わらず現実の方はクソッタレな現実が続いている。


「で? WEB小説とか読んで楽しいのか? 


 ふと俺はアリスにその事を尋ねた。

 アリスはWEB小説に興味があるらしい。


『うん。図書室に置かれている本は完成度が高いわ。だけどそう言う物語をずっと見てると、完成に至る前の物語も見てみたくなる物なの』


「軽くWEB小説馬鹿にしてないか?」


 何故だか自分はWEB小説を擁護していた。


『そうね。たぶん馬鹿にしていると思う。見下していると思う。私は本の化身だもの。ありとあらゆる本を読んで来たわ。だからどうしても採点基準が厳しくなってしまうの。だけど私はWEB小説から目を離せない』


「どうしてなんだ? 馬鹿にしてるのに見続けるなんて意味分からないぞ」


『作品を自分の思い通りに書いて見せ合って書く。その事態の行為は素晴らしい物だと思うの。私は本の精霊で物語は語れる口はあるけど、物語を作ることは出来ないのだから』


「う、うん。なんか苦労してるんだな・・・・・・」


 本当は何言ってるのか分からなかったがテキトーにその言葉で誤魔かした。

 本を知り尽くしているのに物語は作れないと言うのはどう言う事だろうか。

 今の時代、PCかスマフォ持ってれば誰だってその気になれば――自画自賛ではないが自分だって作れるし、発表者になれる時代だ。


 本の精霊なら原稿用紙とペンをサイコキネシスで操って幾らでも書き出せそうな物だが・・・・・・にしては道具が無いからダメと言う感じではなさそうだが。


『いわゆる批評家の限界と言う奴なのよ。だから困難に挑み続ける創作者と言うのは素晴らしい物なのよ』


「はあ・・・・・・」


 批評家。

 

 困難に挑み続ける創作者が素晴らしい。


 それがWEB小説を見る理由。


 なら馬鹿にする理由とは?


「あ、そうか――図書室の本って名作揃いなんだ」


 その事に気付いた。

 図書室の本は過去の、本の偉人達の本が集う場所なのだ。

 漫画で例えるなら大ヒットを飛ばした漫画のみが集められているような状態だ。

 そんなラインナップの本を読み続けていればどうしても目も肥えてくる。


 WEB小説を馬鹿にした言動を取ったのはそう言う理由があるのだろう。

 同時に羨ましく思ったのは――分からなかった。


 まだそこまで結論を出せる程に俺は本を読み込んではいない。


『きっと分かる日も来るわ』


 また口に出していたのだろうか。

 そんな事を何時も通りにクスクスと笑みを浮かべながら言われた。

 


 

 


  


   

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