第2話

「なあなあ、何でそんな鞄なんか持ってくるんだ?ただ邪魔なだけじゃないか。」

今の時代学校に必要なものは、量子タブレットを出現させる小型端末[QTST]のみである。わざわざあんなでかい袋を持ってくるのは理解に苦しむ。

「そんなのファッションに決まってるでしょ。オシャレよ。」

ナターシャは我慢だと言わんばかりに口を尖らす。

「そんなことよりもノクトが言った見せたいものは何よ」

「それは言ったろ、お前の親父さんにも見てもらわなきゃいけないんだ。」

見てもらわなきゃいけないとはどう言うことなのか、ナターシャには想像できなかった。

「それで、名門戸村家の娘さんはまともに魔法を扱えるようになったのか?」

「馬鹿にしないでよ、当たり前でしょ!話をそらさ…!!」

ナターシャの言葉が途中で消えた。いや遠くて聞こえなかったのだ。自覚した時にはノクトの体は地上9メートルの高さにあった。下からはナターシャが戸惑いの視線が送られている。さっきまで自分の立っていた場所に男が立っている。

「ナターシャ!そいつから離れろ!!」

ノクトの言葉は僅かに間に合わず、男の両掌に出現した竜巻によりナターシャも打ち上げられる。

「なるほど〜そうゆうことか〜。よし、ナターシャ!お前には少し早く見せてやる!」

「何を?」

「見せたいものだよ」

そう言うとノクトの体を風が包み込む。ナターシャを風に乗せると、ゆっくりと降下を始める。下の男は魔力の規模の違いに足を竦ませ膝をふるわせている。

「ほい、着地〜にっしし!」

「ちょっと!どうゆうこと?!何であんた魔法が!使えないんじゃ!」

ナターシャが戸惑うのも無理はない、というよりも当然だ。ノクトは同じスクールに通うものなら知らぬものはいない、[非魔術者]だからだ。事実を言ってしまえば世界で唯一魔法が使えない一族、鷹鬼一族の後継者である。

「そうゆうことだ、これを見せたかったんだよ。」

ナターシャは尚も驚きに言葉を詰まらす。

「とりあえずこの男が風使いで良かったな、他の属性だったら無事じゃなかったぞ。」

ノクトは膝を曲げ尚も震える男に近づくと、スラれていた私物のQTSTを奪い返しその場を立ち去ろうと歩き出す。

「ちょ、ちょっと…待って!!」

自分の知っている姿からかけ離れたノクトに対する恐れと戸惑いでいっぱいのナターシャが慌てて後を追う。大通りの脇道を通り、山の方へ進んでいく。次第にそばに立っているものが巨大な建物から巨木へと変わっていく。整備された山道、きちんと測られた石階段を登り戸村家の大きな門が現れる。

「10年ぶりだな」



to be continued


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る