考え方

 フォークでパスタをくるくると巻き取る。

 ハンドルやセンターロッド、ボウケースなどの値段を考えると…これは6桁になりそうだな……

 くるくると巻く。

 親に頭を下げていくらか援助してもらいつつ、バイトを始めなければ……

 くるくると巻く。

 くるくると巻き続ける。

「ねえ、明日実、いつまで巻いてるの? 食べないの? 冷めるよ?」

「え? あっ、そうだね。」

 視線を前に移すと、美姫ちゃんが不審な目で見ている。そして、パスタの方をみる。しまった。巻きすぎた。フォークの周りにはパスタが大量に絡まっている。フォークを揺らして、絡みついたパスタをある程度はずす。

「ねえ…あのさ…結構値段高いね……」

 口に出してみる。

 そして、少し、パスタを口の中にいれる。

 もちもちしておいしい。

「まあ、確かにちょっと高いよねー。でも、これくらいなら大丈夫かなー。普段からコスプレでお金使ってるし。」

 優希ちゃんは、値段に対してまったく動じていない。

「……私も…課金…するから……そんなに抵抗はない……」

「私は、パパにお願いするつもりよ。」

 千裕ちゃんと美姫ちゃんもなんとも思っていないようだ。

 この人たち、金銭感覚狂っていないか? いや、私の方がおかしいのか?

 エビを口にいれる。

 ぷりぷりしている。

 でも、純粋に味や食感を楽しめない。

「私もね、確かに、ちょっと高いかなとは思うよ。」

 美姫ちゃんがコップの縁を指でくるくるとなぞりながら喋りだした。

「でもね、どのサークルや部活に入っても、結局はかなりお金がかかるんじゃないかなって思うの。全然道具とかが必要じゃないサークルでも、飲み会がすごく多かったらそこでお金がかかるし、他のスポーツでも、靴とか、ラケットとか、結構高そうだし。アーチェリーの場合は初期投資がすごく高いだけなんじゃないかな。全然知らないけどね。」

 美姫ちゃんはそういうふうに考えているのか……

 確かに他の部活でもお金はかかりそうだ。

 初期投資…か……

 流石にハンドルとかは、毎年買い替えるとかはなさそうだし、引退してからどうするかはわからないけど、最低3年間は使うはずだ。年とか月単位で考えると、そこまででもないのかもしれない。

 考え方…なのか。

 なんだか、弓について、前向きに考える事ができる気がしてきた。

「あのさ、そのカタログ、もう一冊部室にあるとか、先輩、言ってなかった?」

「……ネットに…カタログのPDF…あるらしいよ……」

 ネットで探すために、表紙の写真をスマホで撮った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る