カタログ

「……自分の弓を…使うのは…もうちょっと先だけど…注文してから届くまで…結構時間かかるから…そろそろ考えておいて…って本柳先輩が…言ってた」

 そういうと、千裕ちゃんは、水をちょびっとだけ飲む。


 目の前のカタログに手を伸ばす。

 意外と厚みがある。5,60ページくらいだろうか。

 パラパラとめくってみる。

 色んなものがありすぎる。

 どうやら、パーツごとに買うらしい。弓の本体のような部分がたくさん載ったページや、しなるところが載ったページ、備品が載ってるページもたくさんある。ありすぎて、何を見たら良いのか全然わからない。


「ねえねえ! 変な形の弓がある!」

 優希ちゃんが指差したページには、先輩方が使ってる弓とはちがうものが載っていた。本体のようなものに対して、しなる所が小さく、その先には滑車がついている。コンパウンドボウと書いてある。

「色々な弓があるのね。私達が買うのは何て言うのかしら。」

 美姫ちゃんがペラペラとめくって探す。

「あった。リカーブボウって言うのね。」

「……リカーブボウは…オリンピックで…使われる」

 千裕ちゃんはスマホで検索したらしい。

「……そういえば…本柳先輩から…メモ…もらってた」

 千裕ちゃんが取り出したメモには「最初に購入するもの」が書かれていた。


 ハンドル

 サイト

 プランジャー

 センターロッド

 ボウスタンド

 クイーバー

 チェストガード

 アームガード

 ボウケース

 弦

 ストリンガー

 矢

 タブ

 スリング(靴紐で代用可)


「うわっ、横文字だらけー。」

「そりゃそうでしょ、アーチェリーって海外のなんだから。それにしても、必要なもの、結構あるのね。」

「……上達したら…他のものも…必要になる…らしい」

 え、まだ必要なものがあるの?

「……あと…おそらくハンドルでみんな悩む…だから…どんどん相談してね…って本柳先輩…言ってた」

 なるほど。カタログの大体のページをざっと見たが、ハンドルが一番種類や色などがたくさんあったように思われる。

 ありすぎてどれを選べばいいのかわからない。だから、相談しろということなのか。

「……ハンドルは…まあ…重さとか…値段とか…色々あるけど……見た目から直感で選んでも…いいんじゃない?……って野崎先輩が言ってた」

 野崎先輩らしいアドバイスだ。

 見た目か…

 全体的にかっこいいものが多い。男の人のほうが競技人口が多いからだろうか。でも、ちょこちょこかわいいものもある。確か、宮野先輩の弓は可愛かったな…名前のとおりの空色だった気がする。

 悩む。

 かわいい色の物で、候補を絞り込んでいく。

 候補が少なくなったところで、値段に目が移った。

「あ……」

「え、どうしたの? 明日実ちゃん?」

 優希ちゃんが声をかけてくれているのだろうが、あまり耳に入らない。

 入部するときに、お金がかかると言われていたので覚悟していた…つもりだった。

 ハンドルだけでこの値段なのか……

 想像していたよりも、お金がかかりそうだ……

 考えることを放棄しようかと思ったところで、目の前に「ぷりぷりエビのトマトクリームパスタ」がやってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る