変人だらけの一回生
「じゃあ、つちやんの隣の人も自己紹介してくれる?」
将平くんがつちやんと呼んだのは、土屋 流星くんのことだった。
その流星くんの隣の男の人は、中性的な顔立ちをしていた。
……中性的?
あれ、まさか……
「将平くん、ボクのこと、忘れちゃったのかなあ?」
この喋り方は……でも、声が違う気がする。
将平くんはポカンとしている。
「ボクだよ、ボク。」
オレオレ詐欺ならぬ、ボクボク詐欺みたいになっている。
「神楽坂 優希だよ。」
やはり、そうだったのか。そして、将平くんは、「優希ちゃん」と面識があったのか。
「え、えっと、え、でも、え?」
将平くんは、混乱している。
「だって、あの子、え、女の子やったやん? 顔もちょっと違うし……」
「メイクだよ。」
「声も違うし……」
優希くんは、軽く咳払いした。
「この声のことかなあ?」
先程のやや低い声とは違う、「優希ちゃん」の声だった。
「そんな……」
将平くんは、ショックのあまり、へなへなと座り込んでしまった。
「騙すつもりはなかったんだよ? 言うタイミングを逃しちゃって。」
彼の声は「優希くん」に戻っていた。
女の子じゃないということを伝えるって、かなり重要なことだと思うが……
「改めて、自己紹介するね。ボクは、神楽坂 優希。趣味は、コスプレ。アニメもゲームも好きだよ。よろしく。そして、この子は千裕ちゃん。」
「え、あっ……」
千裕ちゃんは、急にみんなの視線が自分に集まってきてびっくりしている。
「……南谷 千裕です。…同じく、アニメやゲームが好きな、いわゆるオタクってやつです。……音ゲーは負けない。…挑戦者待ってる。」
下を向きながら、恥ずかしそうにボソボソと言った。
「もっとしっかりしないさいよ。私を見てなさい。」
千裕ちゃんの隣にいた美姫ちゃんがそう言って、くるんくるんの髪の毛を、サラッと(いや、フワッとの方が近いかもしれない)流しながら、みんなの方を向く。
「私は神田 美姫。全てにおいて完璧を目指す女よ。」
なんだこの人は? 性格に問題がありそうだが。
「見た目も悪くないし、勉強もできるし、スポーツもできるの。」
いや、だから、性格に問題が……
「だから、アーチェリーでも、誰よりも上手くなってみせるから!よろしくね!」
いろいろと、まずいぞ、この人は。仲良くできるか本当に不安になってきた。
「あと、自己紹介してないのは、そこの彼のだけかしら?」
俊也くんのことだ。
「そういえば、僕はまだだったね。僕は、大澤 俊也。うーん…そうだな……趣味は、読書かな。みんなと仲良くなりたいな。これからよろしくお願いします。」
すごく俊也くんがまともにみえる。
今日、一回生は変人だらけとわかったってしまったが、彼はとても貴重な常識人だ。常識人であってほしい。いや、絶対に常識人。
本当にこれからどうなってしまうのだろうか。初めての全体練習が近づいてきている。
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