十人十色

 私は下げていた頭をゆっくりとあげた。

 みんなが私をみている。恥ずかしくて、顔が熱くなる。


「あすみん。」

 将平くんが、私の肩に手をおいた。

「言い出してくれて、ありがとな。」

「あ、うん。」

 そして、将平くんがみんなの方を向く。

「オレは、玉城 将平。中高で、アーチェリーやってたから、なんか聞きたいことがあったら、オレかコイツに聞いてくれ!」

 そして、将平くんの隣に立ってた目つきの悪そうな男の人を指差した。

 目つきの悪そうな人はチッっと舌打ちをする。

「ほら、そんな舌打ちすんなよ。ただでさえ、目つき悪くて怖がられやすいのに……」

 目つきの悪そうな人は将平くんを睨む。

「ほらほら、こっちを見るんやなくて、自己紹介しろよ。」

「……わかったよ。」

 目つきが悪いまま、みんなの方をみる。

「俺は、上林かんばやし 凌。以上。」

 うん。怖い。

 すごく不機嫌そうにみえる。

「もっと他に言うことないんか?」

「ない。」

「いや、あるやろ?」

「ああ?」

「ごめん。」


 なんというか、将平くんに怒っているのだろうか。この人も、中高でアーチェリーをやっていたみたいだし、将平くんと昔何かあったのだろうか。


「まあまあ、そんなに怒らないで。」

 凌くんの隣にいた金髪の人が間にはいる。

「なんだテメエ。」

「僕は、成海なるみ ノエル。女の子たちが、怖がっちゃうだろ?」

 そして、「女の子たち」(もちろん私も含まれている)の方へウインクした。


 どうやらハーフのようだ。先ほどから、自分がかっこいいというのをわかっているような仕草をしている。ナルシストというやつなのだろう。イケメンではない人がナルシストだと、残念になることが多い。しかし、この人は、本当にイケメンだ。全く残念になっていない。彼のグレーの瞳を見ながら、こんな人が本当に存在するということに驚いている。いや、私は何を考えているのだ。違う。今はそんなことを考えるべきではない。でも、なぜだろう。この人、輝いて見える。

「どうしたんだい、明日実ちゃん? 僕に見惚れちゃった?」

 否定はできないが、今の一言にちょっとムカついたというか、悔しい。これは、真のナルシストだな。そうなのだろう?

「いえ、そんなことないです。」

 冷たく私は嘘をついた。そして、そのトーンのまま続ける。

「それよりも、自己紹介の続きをしましょう。その隣の方お願いします。」

「え、僕の持ち時間もう終わり? 名前しか言ってないよ? いっぱい話したいことあるんだけど……」

 みんなの視線が、ノエルくんの隣に移る。

「え、ちょっと待ってよ……」

 隣の人は背がすごく高かった。

「植松 まこと。」

 無表情のまま、そう言った。

「え、おわり? じゃあ、僕が自己紹介の続きを……」

「彼は、恥ずかしがり屋なんだよ。」

 ノエルくんが喋ろうとしていたところに、真くんの隣の男の人が割り込む。

 真くんとは正反対で、身長が低い。(私よりは高いが)

「たぶんね、彼、SNSとか、文字媒体になったら喋ると思うよ。」

 真くんが「なぜ、わかった?」というような表情で隣をみる。

「ぼくは、土屋 流星。霊的なものが視えたり、オーラのようなものがわかったり、いわゆる、霊感ってやつがあるのかな? だから、彼の伝えたいことが、ぼくにはわかるんだ。文字媒体じゃないときは、ぼくを頼ってくれてもいいからね。」

 そう言いながら、流星くんは真くんを見上げる。そして、視線をみんなの方に戻す。

「趣味は、占い。当たるかもしれないし、当たらないかもしれないね。まあ、興味があるのなら、いつでも占うからね。」


 これで、私が初めて会った人の自己紹介は全員分終わった。

 いや、あと一人、見たことがない人がいる。違う。喋ったことがある気がする。

 誰かを忘れているような気がした。

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