負けず嫌いのふたり

 早くも2回目の体験会の日が来た。

 相変わらず、私は一人も誘えていない。

 自分のコミュニティーの狭さはどうにかしないといけないとは思っているが、どうしたら良いのかわからない。むしろ、どうにかする手段が部活に入ることなのではないだろうか。

 このまま、女子一人だったらどうしよう。

 前回の体験会後、優希ちゃんが、誰か誘ってくると言っていたが、本当に連れてきたくれるのだろうか。また「実は男でしたー」というパターンだったらどうしよう。

 不安を抱えたまま、レンジの門を開いた。

 すでに、何人か集まっている。


「明日実ちゃん!」

 どこからか優希ちゃんの声がする。

 肩をポンポンと叩かれる。

 顔を叩かれた方に向けようとしたら、頬にムニっと何かが刺さる。優希ちゃんの人差し指だった。

 優希ちゃんはえへっと笑う。

「久しぶり。」

 今日も女の子の格好だ。

「ボクね、ちゃんと連れてきたんだよ!」


 優希ちゃんの後ろの方をみると、二人、女の子が立っていた。

 優希ちゃんが紹介してくれた。

 ハーフアップにした茶髪がくるんくるんになっていて、華やかなオーラが出ている子が神田 美姫、あまり飾り気があるとはいえない黒髪ショートの子が南谷 千裕。


二人が、体験しているところを眺めながら、私は優希ちゃんと話していた。


「優希ちゃん、本当にありがとう!」

「いいのいいの。」

「どうやって誘ったの?」

「千裕ちゃんは、アニメに詳しくて、『まりる』の話をしたら、ついてきてくれて、美姫ちゃんは、アーチェリーに興味なさそうだったけど、あの子の、ちょっとプライドが高いところを利用したら、ついてきたの!」

 なんか、優希ちゃん、かわいい見た目で、結構ずる賢いというか、怖いところがあるな……

「二人とも、入部すると思うよ。」

 優希ちゃんは自信ありげに宣言した。

「二人とも、負けず嫌いだからね。」

 そして、私にウインクした。


「えー、それでは、入部したい人はいますか?」

 体験会の最後に、本柳さんがきく。

 真っ先に手を上げたのが、あの二人だった。


「ねえ、どうして入部する気になったの?」

 美姫ちゃんが、こちらをギロっとみた。

「あいつに負けたのが悔しいのよ。私は、いつも完璧でいたいの! わかる? 他人に負けるなんてことが私にあってはだめなの!」

 たしかに、かなりの負けず嫌いだ。それにしても、この場で負けただけで、普通は入部するものなのだろうか。

 一方、「あいつ」とよばれた千裕ちゃんは、

「……攻略しないと気が済まない。」

 とだけ、スマホを横持ちにして高速でタップしながら言っていた。


 まだ、二人とそんなに話したことはないが、上手くやっていけるのかすごく不安だ。なんと表現すれば良いかわからないが、殺気のようなものが感じられて、怖かった。

 仲良くなれるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る