男の娘……?
「あ、ボクの番だ!」
優希ちゃん?優希くん?が、射ち始めた。
これはどういうことなんだ?
全然男に見えない。完成度が高すぎる。ワンピースの下から見える脚も、本当に男性のものなのか疑ってしまうくらい綺麗。この声の高さも本当に男なのだろうか? 男の人が頑張って高い声を出したときの気持ち悪さがまったく感じられないというか、むしろ、女の人より綺麗で聞きやすい。
優希ちゃん(こちらの方がしっくりくる)が弦を引く。
先ほどから、他の女の子が引いてるところをチラチラと見ていたが、ほとんどがまったく引けてなかった。それに対して、優希ちゃんはよく引けている。顔のそばまで引いてきている。
ということは、筋力の観点からだと、やはり、男なのだろうか。
「わーい! 黄色だー!」
飛び跳ねている優希ちゃんを、考え事をしながらぼーっと眺める。
男……男……
男なんだ……受け入れろ、私。
ん?
じゃあ、私は、さっき男の子を誘っただけで、結局は、女の子一人も誘えていないということなのか!
どうしよう! このままじゃ、まずい!
いや、まだ大丈夫。それに、この体験会に、数人女子が来てくれている! 大丈夫!
「明日実ちゃん!」
「はいっ!?」
「ボク、上手だったでしょ!」
「うん、すごく上手だったね。」
ごめんなさい。まったく見てなかったです。
優希ちゃんを改めてよく見るが、やはり信じられない。
「どうしたの?」
心配そうに私の顔をのぞきこむ。
「……本当に優希ちゃんは男なの?」
「そうだよ。全然違和感ないでしょ。」
「その髪は?」
「ウィッグだよ。」
ウィッグとは、こんなにも自然にみえるものなのだろうか。
「ボクね、コスプレが趣味なんだ。」
「こす…ぷれ……?」
「そう、これ見て!」
優希ちゃんはスマホを取り出して、SNSを見せてくれた。
優希ちゃんがアニメやゲームのキャラクターの格好をして、いろんな人と撮った写真が何枚もある。
「こんな感じでね、いろんな人とコスプレをして集まるの。」
写真を見ていくと、今日のような女の子の格好をした優希ちゃんだけでなく、男性キャラクターの格好をしている優希ちゃんもいる。これをみると、確かに男なんだなと納得できる。……かっこよすぎる。
「普段から、女の子の格好してるの?」
「毎日というわけではないけど、よくするかな。外見だけじゃなくて、仕草も女の子らしくするにはどうしたらいいかなって考えた結果、女の子として過ごす日を作った方がいいんじゃないかなって。女の友達もたくさんできて、乙女心というものを最近理解し始めてる気がするんだ!」
なるほど?
体験会の後、入部を希望するものは何人かいたが、女子は一人もいなかった。
優希ちゃんが入部宣言をしたとき、女子部員がすごく喜んだらしく、男だと告白するのに罪悪感を感じたらしい。
「ボク、次の体験会に、絶対女の子連れてくるから!」
そう、私に宣言して、彼は帰っていった。
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