洋弓部のブースにて
人気の少ない奥の方に洋弓部のブースはあった。
テントの下に長机があり、その前に弓が置いてある。
初めて見る弓。
真ん中の部分は赤い金属のようなものでできており、そこから長い棒のようなものが突き出している。その棒から、横にさらに小さな棒が2本。他にも何やら小さいものが複雑そうに、色々ついていた。
これが、アーチェリーの弓……
ブースにいるユニフォームを着た女の人がこちらに気付いたようだ。
「ねぇキミ! アーチェリーに興味あるのぉ?」
こちらに向かって歩いてくる。
「はぇ!? えーっと……」
ぼーっとしているところに話しかけられたので、変な声がでてしまった。
「ん? 興味ないの?」
「いや、あ、ありますっ!」
「じゃあ、ブースへレッツゴー!」
女の人は、私の手をつかんでブースへ案内した。
「さぁさぁ、ここにお座りくださいな。」
用意してくれた椅子に腰をかける。机を挟んで向かい合うように、女の人も座った。私の隣には、すでに男の人が座っていた。
「ちょうど今、彼も来たところだから、一緒に説明するね。」
男の人が、ちらっとこちらを見た。私が軽くお辞儀をすると、向こうも返してきた。
「いやぁ、それにしても、自分から来てくれるなんて、キミたちは、良い子だね。」
「は、はぁ……?」
「自分から来る子なんて、あまりいないんだよ? アーチェリーって競技人口少ないし、知名度意外と低いし。みんな弓道の方に行っちゃうんだよね。」
やっぱりみんな弓道なのか……
「袴、かっこいいですもんね……」
ついさっきまで思っていたことを私はつぶやいた。
「本当にね! 袴! 袴かっこいい! 」
女の人が目を輝かせてきた。
「洋弓部もさぁ、ユニフォーム、袴にしちゃえばいいんじゃないのってすごく思うんだよねぇ。それ主将に言ってみたら規約上だめだって怒られたけど。まぁ、それはさておき、説明しますか。あ、その前に、良かったら、ここに名前と連絡先書いてくれる? 新歓の情報送るから。」
出された紙に私は名前と連絡先を書いた。
小笠原 明日実
長い名前だと自分でも思う。文字数が多い。枠の中に名前を書くとき、大概、他の人より字が小さくなってしまう。
隣で男の人も名前と連絡先を書いた。女の人が紙を回収する。
「明日実ちゃんと、俊也くんね。私は、3回生の野崎愛弓。」
そう言いながら、今度は小さい紙切れを渡してきた。
「これ、私の連絡先。何かあったらここに連絡してね。どんなことでもいいからね。」
綺麗な字で名前と学年、学部、連絡先が書いてあった。
関西などの一部の地域では、学年を、1年生や2年生ではなく、1回生や2回生と表現する。
「それじゃあ、うちの部について、説明するね。」
野崎さんは、部の活動時間、自主練について、テスト前のオフについて説明してくれた。
「あと、うちは、男女混合で練習するからね。試合は別なんだけどね。」
「試合ってどんな感じなんですか?」
先ほど俊也くんと呼ばれていた人が質問した。
「個人戦とかもあるけど、基本的には大学同士の団体戦なんだよね。ちょっと意外でしょ。地区によって、ルールは違うんだけど、関西では、男子は8人、女子は5人の合計点数で競うんだ。」
「団体戦……」
「とりあえず、今からアーチェリー、体験してみようよ。すぐそこでやってるから。」
野崎さんが指さした方向に、小さな人の集まりができていた。
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