第5話 新世界へようこそ

苦しい、、、

なんだ此処は。

暖かいようで、でももう出ないとダメかもしれない。


なんか狭い光が見えてみた。

女の人のうなり声が聞こえる。


「うー、ひぃひぃ、」


なんだか自分より苦しそうだ。

とりあえず助けるには此処から脱出しなければならない。

ただ出口が狭すぎる。


「うぅー、早く出ておいで。」


ん?自分呼ばれてます?

いや、ただ出口小さいんだけど、、

くっそー。手も足も塞がってるし

まさに八方塞がり状態だよ。

でも助けないと。

って、うわぁ!!!


暗闇の中の小さい光から一気に

視界が眩しくなった。


「おー!お母さん頑張ったね!

女の子だよ!おめでとう。」


ん?お母さん?

まって、眩しいようで目が開かないってば。


「やっと会えたね。」


なんだか女性から泣きながら抱かれている自分。

ただ目が開かない。

どうしたら良いもんか。


「お父さん、この子名前は何にしようか。」


「由香にしよう。」


「五体満足、元気に産まれてくれてよかった。」


暫く自分は女性に抱かれた状態で日々を送った。

目が開くようになり視界が漸く解りやすくなった。


あぁー、お腹すいた。

牛丼食べたい。


でも女性に抱かれたままだ。

何故か乳をしゃぶる自分。

女性は助かったようだ。

良かった良かった。


しかし此処病室なのか?

この女性、、、


お母さん!?


え?なんていうか若いようで疲れてる。

もしかして自分のせいで疲れてる?


あれ?なんで自分、赤ん坊なんだ?


待てよ、たしか何かあったような、、、

思い出せん。

けど記憶はある。

遥か昔、人生に失敗して、その後が思い出せない。


自分は女性を母と理解してしがみ付いていた。


月日は過ぎ、自分は何故か周りから可愛がられて

愛情というものを沢山注がれて居た。


脳内では少しずつ記憶が戻り

喋れなかった言葉が漸く話せるようになった。


なんせ歯がない自分。

母から母乳かコンデンスミルクばかりで

そろそろ牛丼とカレーと餃子が恋しい。


喋ってみた。


「お母さん、牛丼食べたい。」


洗濯物を畳んでいた

母がギョっとした顔で振り向いた。


え?ああ、そうか、自分生まれ変わりかぁ。

たしか死んだんだっけ。

あ、そうか、0歳に戻れたんだ!

ただまずいぞ、、、

母が気味悪そうに此方を見ている。


流石に記憶あっても牛丼発言はまずかった。

反省してます。


「うきゃうきゃきゃ」


わざとらしく0歳児ってこんなもんだろうと

演じてみたら母は微笑んできた。


「ああ、お母さん疲れてるだけかもね。

こんなまだ小さい子が牛丼なんて言うわけないか。」


母を安心させた。


母はまた洗濯籠に入った洗濯物を畳みだした。


なんだかいい匂いがする。

唐揚げ、、、

え?唐揚げ作ってんの?


「はーい、由香ちゃんはコンデンスミルク。」


え、私にも唐揚げよこせ。

もうミルクは飽きた。

肉が食べたい。


何故か兄と姉が唐揚げ騒動で喧嘩をしている。


くっそー、0歳だからか

まだ脚がぐにゃぐにゃだよ。


此処で立って唐揚げよこせ、なんて

言ってしまったらホラー映画のチャッキーに等しい。


私は生まれ変わった事の喜び以前に唐揚げが

食べたくて仕方なかったが、

確実に生まれ変わっているから

これから人生で失敗した部分を

修正しなければならないのである。


私の人生、生まれ変わり成功。


まずはたしか3歳児の時だな。

思い返せば保育園に入れられて

集団リンチや虐めが酷かった。


かなり楽しみ!!!


あいつら全員片手でフルボッコにする。

それまで頭悪い部分の勉強もしないとだ。


たしか保育園に入る前は、めちゃくちゃ

くだらない遊びしかしてない。


今は平成元年か。

1989年。


見とけ、平成30年はこのスーパーファミコンの

時代でなくSNSの時代なのだから。


まって、火曜日のサザエさん懐かしすぎる。


0歳に生まれ変わった自分は火曜日の

サザエさんを眺めていた。


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