第3話 スケボーとイラスト

男は23時に新宿で飲もうと誘ってきた。

時間帯もおかしいが今思えば何故この時間に

対応してしまう自分も更に馬鹿げていた。


新宿に到着。

23時で始発は5時だから6時間で帰宅だな。

軽い考えだった。


男は名門の大学を出ている理工学部卒の

公認会計士だった。

こいつは裏金で稼いでるのは知っていた。


私はこいつと何故かこいつの友人の男と

新宿のバーで飲むことになった。

男は金はあるようで山崎18年をボトルが

空いてしまうほど飲まされた。


最初は自主的だったが、三倍目から

きつくなり、辞めようとしたが

煽るように注がれまくった。


気づけば視界はハッキリしなくなり

タクシーに乗っている事は自覚したが

都会のネオンが眩しすぎて余計に

視界が何なのか解らなくなった。


何故男のマンションに居るのか。

タワーマンションだから防音だった。

そしてクラブで流れるようなEDMが

流れているのは解るが私は記憶が消えてしまった。


何故か眩しい。

フローリングに裸で倒れていた自分。

辺りを見回すと使用済みのコンドームが

散っていたのとタワーマンションの19階くらい

なせいか、ガラス張りから太陽の日差しが

照らされてくる。


ガラステーブルにはウイスキーが散乱。

私は頭の痛みと目眩で事の重大さを

把握出来ていなかったが、

裸なのと落ちているコンドームを見て

頭は真っ白になった。


男は暢気にベッドで寝ている。

勝どきという土地勘のない場所。

まずマンションから出られない。


こいつを起こさないと帰れないのか。


とりあえずこの男を起こした。

男は完全に開き直っていたが

酒で不調すぎる私はとにかく部屋から

出させろと男のマンションを出た。


すぐ帰宅して疲れ果てて、何故か

下を必死に洗い流して眠ってしまった。

目覚めたら夕方だった。

不安は過る。

コンドームが落ちていた。

レイプされていた。

もしコンドームを使っていなかったら。


すぐ友人に連絡した。

友人からは早く病院へ行けと言われて

念のために緊急避妊用ピルを飲んだ。


畜生。

私としたことが。

あの男は一切医療費を払おうともしない。


頭に来て警察に行ったら刑事から

「これは完全なる強姦罪ですね。

事情聴取します。」

と約一か月近く事情聴取された。


事件当日やLINEのやりとり、

全て刑事に公開に憂鬱になり

ついに外に出られなくなってしまった。


引っ越して犯され15日が経過して

水道の蛇口を捻り、そのまま口で水を飲んだ。

絶望しかなくあの男だけでなく世の中の

男全てに殺意を覚えた。


もう今度こそ終わりだ。

私はロフトを漁った。

くだらない雑貨など出てきた。


懐かしい。

三日坊主でやめたスケボー。

外に出るのが恐かったがスケボーに乗るには

外に出ないと乗れない。


私は全身ジャージと軍手と帽子を被り

スケボーを担いで外へ出た。


電柱にしがみ付いて乗ってみるが

上手く前に進まない。

恐くて片足だけ乗せて滑らしてみた。

繰り返すうちに夕方になっていた。


よし、また明日もやろう。

今日は撤収して翌朝にまたチャレンジしてみた。

来る日も来る日も続けるうちに事件の事を

すっかり忘れていたが、刑事から電話が

鳴ると吐きそうになった。


唯一スケボーだけが自分を救ってくれた。

乗り始めて二週間。

スイスイ滑れるようになった。

時々転ぶが心の傷より痛みなし。


外に出られなくなった自分をこの

スケボーが救ってくれたのだった。


私は警視庁に行くにしても何処へ

行くにしても、このスケボーだけは

手放さなかった。

まさに相棒状態。


夜には帰宅して以前店に落ちていた

ボールペンを発見した。

目に映らない創造だけの絵を描いてみる。

憎しみが多いほど良い絵が完成する。

不思議だった。


外に出られるものの仕事が出来ない為に

私は貯めた金でパソコンを買った。

何か売ってみよう。


頭の中で子供の頃、母に言われた台詞が

カセットテープのように流れた。


「絵なんか世の中に役に立たない。」


畜生、今こそ世の中に渡ってやるよ。

最初は展示会など考えたが

買ったものはパソコンだった。


デザイン能力ゼロだが

思いついたのがLINEスタンプだった。

死んでも残せるし、世界に知れ渡れる

手っ取り早い方法。


無知だけど無知なら調べればいい。

買ったパソコンで片っ端から調べて

ペンタブを買ってクリエイターズマーケットに

エントリーしてみた。


最初は何回もリジェクトされた。

背景透過のやり方が解らなかった。


調べたらPhotoshopを使えば簡単、

などと書かれていたから落として

やってみたら簡単に透過することが出来た。


またエントリーしてみた。

結果、審査は通り現在も販売されている。


これを機に色々ビジネスをやっていこうと思った。


そんな矢先、犯人は逮捕され、ただ証拠が

不十分だった為に前歴は付けたが前科は

付けれず損害賠償請求のみした。


実は被害者は私だけではなく、

告訴をしたのが私だけだったと

後から刑事から聞いた。


事件は無事終わり、28の年を迎え

私はその一年は貯めた金で専門学校へ入学した。

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