第6話ここにタッチあなたから

「‥‥‥」

「付けれませんよねぇ~」

安西は押し黙ったまま、清野を睨み付けている。清野はほくそ笑みながら

「まず、今日ジャネットさんは安西さんをマリオさんに会わせて婚約破棄しようとしていたんです。しかし、あなたは事前にそのことを知っていた為、安西さんには部屋は取ってあるから直接部屋に来てほしいとでも連絡していたんでしょう。安西さんが旅館に入る前に先回りをして、チェックインをすませる。わざと偽名を使ってね。財布は目につく場所に落としたんでしょ、堂本さんが拾って身分証なんかをを確認するだろと思って。それに大金が入ってたんじゃないですか?」

「はい‥‥」

堂本は申し訳なく頭を下げながら答えた。

「まあ、取りたく気持ちもわかりますがね。大金ですから」

清野は口元をさらに歪めてほほ笑んだ。

「その時にマリオさんのヒゲを印象付ける。その後マリオさんはヒゲを取り安西さんとしてチェックインする。そして安西さんを殺し入れ替わった」

「そんなこと!不可能だ!」

「ふふっ、高山さんがやって見せたじゃないですか」

「高山さんには悪かったのですが、あの手紙私がオーナーさんに頼んで置いてもらいました。マリオさんが容疑者になってますよって脅したら快く協力して頂きました」

「清野さん酷いじゃないですか、私はジャネットに何かあったと思って必至だったんですよ!」

高山は力が抜けた声で呟いた。

「まっ、ヒゲ実験も成功したし結果的に良かったじゃないですか」

そう言うと清野はほくそ笑んでいた。

「いい加減にしろ!もう茶番は聞き飽きた!俺が犯人だと言う証拠があるのか!」

安西は痺れを切らせ大声で叫んだ。

「ありますよ~、証拠~」

清野は馬鹿にした口調で答えた。

「そういえばさっきから気になっていたんですけど、まだ付いてますよ鼻の下」

そう言いながら清野は鼻の下を指差した。

「ヒゲを張り付けてた残りカス、両面テープかな?ノリかな?」

それを聞いた安西と高山は、あわてて鼻の下に手を伸ばした。

「あれ?高山さんに言ったのに」

その瞬間清野はニヤリと笑った。安西は気が付いたのか呆然としたまま動かなかった。

「これが証拠です。安西さん、いえマリオさんあなたが犯人です」

「‥‥‥」







長い沈黙が続いた‥‥







「私が全てやりました…タライは事前に仕込んでました…。思い起こせば…」


とルミコが話り出したが、その言葉をさえぎるようにマリオが語り出した。


「その通りです探偵さん。安西が憎くて憎くて…。全て私がやりました。ジャネット…。申し訳ない…。」


泣き崩れるジャネット。真実の重さに、その体を引き起こすには、その後相当な時間を費やしたのであった。


そして、この悲しみに包まれた事件は終幕を迎えるのである。

いとしさとせつなさと心強さを残しながら…


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