25. 年末話その②
「…ええと、今、電話って言った?」
ニコニコと、何が楽しいのか笑顔で問いかけてくる。
「言ったわ」
「無理!」
「大丈夫。私もいるわ」
「全然大丈夫じゃないから!あんたがいてもなんにもならないでしょ。第一電話なんてしたことないわよ…」
ネミリでの文通ならともかく、電話はしたことない…番号は一応登録してあるけど…。
「そうなの…ちょうどいい機会ね。さっさとしましょう」
「…
知宵にとってはそうでも、あたしからしたら一大事よ。電話って…まだ早いと思う。
「だって他人事だもの」
「くぅ…」
「それに日結花」
あたしがもどかしくしているのは一切気にせず、普段通りに話を続ける。
「こんな程度できなくて積極的になんてできないわよ」
「う…」
それは…言い返せない。卑怯な。恋愛経験0の知宵なのにっ。
「うう…」
自分のため…自分のため…あたし自身のため…無駄に緊張する。やばい。どんなこと話せばいいかな。そもそも郁弥さん出てくれるかどうかもあるのよね…こんな年終わりの夜にいきなり電話なんて迷惑だし…前にもっとお話したいって言ってたけど…限度はあると思うから……ううん。かけるだけかけてみなきゃ。頑張るのよ日結花。
「よし…する、電話するわ」
「はいはい。早くしなさい」
「ぐ…」
落ち着けあたし。知宵なんかに動揺させられてたら埒が明かないわ。早くかけるのよ。
「…」
連絡帳を開いて電話番号をタップする。そのままコールの画面に移動…ってもうかけてる!もう一段階あると思ってたのに!!心の準備が――。
『…もしもし?』
「あ…さ、咲澄日結花ですが…ええと…」
わー!!まともに会話できてない!!なに言えばいいのよ!!郁弥さんも疑ってるような声だし!
『…日結花ちゃん?』
「う、うん…あたし」
よ…よかったぁ。一応伝わった。なんとかこれで話せる。
『そっか…画面には名前出てたんだけど、いきなりすぎて違う人かと思ったよ』
「…ごめんね。こんな時間に電話しちゃって」
『あはは、いいよいいよ。時間ならあるからさ』
「…えへ、ありがと」
だから最初固い声してたんだ…はぁぁ、落ち着く。やっぱりいつもの柔らかい声の方がいいわ。心が安らぐ…。
『それで、何か話があったんだよね?』
「うん…えっと…今なにしてる?」
…さっき話したけど、ほら…電話だと色々聞けるから…。
『今年の振り返りだよ。日結花ちゃんは?』
「あたしは知宵と話してたわ…"あおさき"じゃ話せないこととかね?」
軽く含みをもたせて言うと、携帯越しに小さく笑いが返ってきた。
『楽しそうだね。僕も加わっていい?』
冗談まじりに楽しげな声が届いた。こんな年終わりの電話なのに全然気にしていないらしい。
よかった。不機嫌だったらどうしようかと思った…郁弥さんが不機嫌なんて想像もつかないけど…でも、電話してよかった。
「あら、いいわよ。あたしは気にしないから」
くすりと笑ってから知宵に視線を流した。さっきからあたしの様子をうかがっていた瞳と目が合う。
「…何の話?」
「郁弥さんが話に入りたいってさ」
「そ、そう…私も何か言った方がいいの?」
なぜか緊張感漂わせて言う。
あたしならともかく、知宵が緊張する理由はないと思うんだけど…。
「言いたいことあるなら?」
「…いえ、ないわ。とりあえずスピーカーにしてちょうだい」
「おっけー」
さっとタッチしてイヤホンからスピーカーに変更。これで三人の会話が成り立つ。
『…さっきのは冗談だったんだけど』
「ふふ、残念。もう手遅れよ。ほら、知宵も」
「こ、こんばんは。初めまして、青美知宵です」
…そうじゃない。そんな真面目に自己紹介してもらうつもりじゃなかった。
『ご丁寧にありがとうございます。藍崎郁弥です』
「…と、突然ですけど、質問いいですか?」
『え、はい。どうぞ』
緊張したままさっそく入れてきた。おそらく住んでいるところについて…挨拶してすぐに思いっきりプライベートな質問とは…あたしじゃ無理ね。
「んん…こほん…まず、声者は好きですか?」
『好きか嫌いかだと好きです。あ、青美さんの声も好きですよ?』
「っ、は、はい。そうですか…ふふ」
軽く咳払いして落ち着いたあと、変な質問をした。あたしの驚きは無視して会話は進み、いつも通りな褒め言葉に照れる知宵。
ずる…じゃなくて、なんでそんなこと聞いてんのよ。あと郁弥さんギルティ。
「はいはい、照れてないの。郁弥さんはいつもこんなんだから、いちいち照れてたらきりがないわ」
「べ、べつに照れてなんか…」
『僕はそんなんじゃ……え、日結花ちゃん。そんなんじゃないよね?』
「…自分の発言を省みた方がいいわよ」
『……普通、だと思うよ?』
自分の言ったことわかってもそれか…あぁ、自然と出た言葉だから気にならないのね…やっぱり郁弥さんの天然言葉は気にしないに限るわ。
「彼のことは置いといて、知宵、まだ何かある?」
若干照れが残り、薄っすら頬が赤い知宵に問いかけた。
何かあるなら先に話してもらって、ないならあたしが聞いちゃう…今さら躊躇ったって意味ないもの。
「ええ。あるわ。…郁弥さん、日結花のことは好きですか?」
『と、突然ですね。もちろん好きですよ。大好きです』
「~~っ!っ!」
な、なんてこと聞いてんのよばか!!なに"やりきったわ"みたいな顔してんの!?全然やりきってないから!!あやうく声あげそうになったじゃない!…お、落ち着けあたし。この好きはラブじゃなくてライクの好きなのよ…うう、それでも嬉しい自分が憎い。
「私のことも好きですか?」
『え、うーん…声者としては好きですけど、人柄はあんまり知らないので…今話した限りだと好きにはなれそうです。日結花ちゃんの友達というのもありますし』
「そうですか…あ、あの」
一人悶えていたところに不審な会話が届いた。
あたしのことを声者としても人としても大好きだというのはいい…いやよくないけど。すっごく嬉しいからいいの。それより、なにをトチ狂ったのか自分への好意を尋ねている知宵についてよ。なんか、この子また照れ気味だし…。
「私の声、好きですか?」
『え、ええ。好きですよ?さっきも言いましたが。綺麗な透き通った声してますよね。青美さんがナレーションしてる『地方名産』。見てますよ。結構好きな番組なんですよね』
「え…えへ、ありがとうございます」
にへらとだらしなく笑ってお礼を述べる。
…なにが"えへ"よ。あんたそんな緩い笑い方しないでしょ普段…ていうか郁弥さん、あなた『地方名産』見てたのね…そういえば旅行番組とか観光番組とか好きって言ってたわ…不覚。
「はいそこまで!知宵は変な質問ばっかしない!郁弥さんは口説かないの!」
「へ、変な質問なんてしていないわ」
『口説くって…前にも同じようなこと言われた気がするよ。口説いてないからね』
「はいはい。で、郁弥さん。あたしの用件伝えるわよ」
訂正する二人をよそに、自分の話を始める。このまま知宵を野放しにするとよくないし、さっさと聞くこと聞いておかないと。
『うん』
「ええと、とりあえずビジョン入れるけど、いい?」
『え、どうして?』
「んー、気分?」
せっかくなら顔見て話したいじゃない?一回話し始めたら電話する前の緊張とかもうなくなったし、それならいっそのことビジョン使った方がいいと思うのよ。
『そっか。うん。別にいいよ?携帯の置き場なら今困ってないから』
「おっけー。こっちで入れるから許可してね」
『うん、わかった』
彼から許可をもらったところで、設定を終えた携帯を枕より奥に置く。ふわりと空中に投影された薄青半透明なウインドウを確認して、連絡先をタップ。
「じゃあかけるわよ」
『どうぞー』
キャストのマークを押して繋げる。10秒ほど経って向こうと繋がったのか、ウインドウに色が付いた。透明さが完全になくなって、映るのは郁弥さんのいる場所。彼自身はもちろん、椅子が見えることから机にでも座っているらしい。後ろにはベッドが見える。
「郁弥さん見えてる?」
『見えてるよ。水色のパジャマ?だよね。僕の方も見えてる?』
あたしのことをまじまじと見つめて言う。
純粋に見えてるかわからなくて聞いてるんだろうけど…こんなパジャマ姿なんて見せたことなかった。照れる。
「ええ。見えてるから…そんなにじっくり見ないで」
『ごめんごめん。日結花ちゃん可愛くてさ。髪下ろしてる姿もすっごく可愛いよ』
「…もう、ありがと」
可愛い…うん、慣れてきた。郁弥さんに褒められても軽く返せるようにはなってきた。嬉しいのは全然変わらないけど。
「郁弥さんは…それパジャマ?」
上は着る毛布みたいなもふもふの服を着ている。下は…見えない。
全身が見えているわけじゃないのよ。この人携帯を机の上に置いてるみたいだし、上半身から腰あたりまでしか見えないわ。
『ううん。上は着る毛布だけ。あとは全裸だね』
「っ!?な、なに言ってるのよ!」
う、うそっ…え、じゃあ着る毛布の胸元から見えてる肌って…わーっ!もう!こっちが恥ずかしくなってくるじゃない!!
『あはは、冗談だよ冗談。普通にヒートテック着てるさ、ほら』
こっちがこんなにも狼狽えてるのに!!冗談ってなによ…そういう悪質なやつはだめっ。
「んぅ…変な冗談言わないでよ…次やったらあたしも脱ぐから」
『ええ!?や、やらない!やらないからやめてね!?』
なんとか意趣返しはできた…着る毛布はだけて見せられても…これはこれである程度フィットした服だから、結構身体のラインが見える。あんまり目によくはない。意識すると変にドキドキする。
「…ほら、早く毛布着て?寒いでしょ?郁弥さんが変な冗談言わなきゃあたしもしないから」
『うん…はぁ…ええと、日結花ちゃん話があったんだよね?確か』
服を着直させて、お互い落ち着く。彼が本題を切り出してくれたおかげで、ようやく話に入れるようになった。
「ええ。知宵…あれ、知宵?」
質問をしようとして知宵にも話をと思ったのに、その本人がいない…ううん、いたわ。
「…なにやってんのよ」
どこにいるかと思いきや普通にベッドの上。枕はあたし側にあるまま頭だけ反対に移動していた。声が聞こえたのか、軽く頭を傾けて反応する。
「私はここでいいわ」
「いやそこって…声聞こえないでしょ。郁弥さん聞こえてないわよね?」
『うん。ほとんど聞こえないね』
この距離だもの。ベッド一つ分プラス少しもあるのに聞こえるわけないわ。
「ほら知宵。こっち来て…ていうかなんであんたいきなり逃げたのよ」
「…当然でしょう?男の人の前にパジャマで出るなんてできないわ。むしろ、あなたの方がおかしいわよ。どうして平然と姿をさらしているの?」
どうしてって…郁弥さんだから…。恥ずかしいっちゃ恥ずかしいけど、そこまで気にならない。彼も同じようなもんだし、お互い様よね。
「そこはほら、郁弥さんだから?第一、人前に出るなんて慣れてるでしょ」
「…仕事と私生活を一緒にしないでもらえるかしら。それに、仕事のときは服もきちんと決めているじゃない」
「…んー」
…めんどくさ。この子定期的に面倒なところあるわね。このまま話に付き合うのも楽しそうだけど…今は話を進めたいのよ。…よし。
「……うん」
「寒い…日結花、"うん"じゃないわ。寒い。早く布団返して」
「さて知宵。ベッドで丸くなってるところ悪いわね」
とりあえず知宵の抗議は無視して、剥いだ布団と毛布をあたしのお布団の上に置く。
「な、なに?それより布団を」
「二者択一ってやつよ。自分から映りに来るか。あたしがあんたを映すか」
話を遮って選択肢を突きつける。ビジョンが空中に投影されているとはいえ、結局は携帯から出ている映像に変わりはない。もちろん携帯は移動できるから、寝転ぶ知宵を映すのは簡単。
「…せめて着替える時間をちょうだい」
「はい残念でしたー!」
「きゃっ!ちょ、ちょっと待ちなさ…あっ」
知宵が上体を起こしたところで素早く腕を掴み、そのままこっちまで引っ張った。ビジョンの取り込み位置は、携帯を斜めにしたことでベッドの上も一部は入るようになっている。そのため、これで十分ビジョンに映る。
「…ん?」
可愛く悲鳴をあげ、映り込んだと思ったら変な反応。まじまじとビジョンを見つめる。
『え?…』
知宵だけじゃなく郁弥さんまでも驚きの声を上げ、お互いの顔を見つめ合う。
…もしかして…一目惚れ?
『え、ええと…青美さん?』
「ええ…そうです。青美知宵です。そちらは郁弥さん?」
『はい…あの、失礼ですが、最寄りの駅はどちらですか?』
「
『僕もです』
衝撃の事実が発覚した。知宵と郁弥さんが同じ場所…この言い方は
あたしにとって非常によろしくない展開だわ。
「最近雨宿りしましたか?」
『しました。南庭園の中ですよね』
「…やはりあの人があなたでしたか。少し雰囲気違いますね」
『青美さんも…以前より柔らかい雰囲気してますよ』
なぜかお互い優しい表情で話している…いったい何があったらこんな風になるのよ。
「郁弥さん…一ついい?」
『はい、いいよ。どうかした?』
「知宵とはどうやって知り合ったの?」
最寄り駅が同じっていうのは、さっきの話からなんとなくわかった。ただ、最寄り近くても知り合いになる機会なんてそうそうないと思うの…同じマンションでもない限り。
『あぁ、それはジョギングだよ』
「ジョギング?って…」
「日結花の思い描いている通りのものよ」
同じマンションじゃないのよかった…けど、ジョギングって、健康のために走るあれよね。
「…二人ともやってるの?」
「ええ」
『まあね』
健康志向か!
良いとは思うわ。健康は大事よね。あたしもちょくちょく運動してるし。でも、それで偶然知宵と親しくなるって…ずるい!!
「いつから仲良しになったの?」
「仲良しって…挨拶する程度の関係よ?ですよね?」
『はい。顔合わせたら軽く挨拶するくらいですね』
…うーん。セーフ?
「さっき雨宿りがどうとか言ってたじゃない?それは?」
「それはそのままの話よ。夕方のランニング中に雨が降って雨宿りしていたら、そこに郁弥さんが来ただけ」
『あはは、雨予報なかったので驚きましたね、あれは。真面目に青美さんと話したのはあのときが初めてくらいでしたか?』
「はい。それまでは本当に挨拶して頭下げる程度でしたから」
「なるほど…」
…セーフ。二人の顔見ても嘘っぽくないわ。そもそも郁弥さんが嘘つくわけないけど…と、とにかくセーフ。
「だいたいわかったわ…ええと、郁弥さんは結局八胡南駅に住んでるってことでいいのね?」
『うん。そうだね』
「そう…今もそこ?」
『うん。実家には明日か明後日にでも帰ると思う』
「ふーん…」
知宵と同じ感じか…この人の実家ってどこなんだろう。気になる。…今聞いちゃおうかな。
「実家というと、どこに帰られるんですか?」
『岐阜ですよ』
聞こうと思ったら先に尋ねてくれた。ナイス知宵。
岐阜って…飛騨牛と下呂温泉と、あと白川郷?…違う違う。観光じゃなかった。別にあたしが行くわけじゃないわよ。DJCDの収録でもないわ。
「岐阜ですか。結構遠いですね」
「…あんたが言う?それ」
『あぁ、青美さんは石川出身でしたね』
「っ、どうしてそれを?」
それはこっちのセリフ。なんで今さらそんな出身がどうとかいう話で動揺するのよ。
「そんなのあたしが話してるからに決まってるでしょ」
『あと、"あおさき"でも聞きましたから』
そそ。"あおさき"の方でも話してたわね。忘れてた。
「…日結花、彼が私たちの番組を聞いてるというのは、本当なの?」
「当然」
「…本当ですか?」
『はい』
短く答えるとのっそり首を動かして郁弥さんにも改めて尋ねた。笑顔とともに帰ってきたのは同じく短い言葉で、知宵は気持ちを抑えるように目を閉じる。
「…あんなラジオ聞かれたらおしまいだわ。もう無理よ」
なにを言うのかと思ったら、予想以上にひどい言葉だった。自分の番組を全力でディスるスタイルは嫌いじゃないけど…あたしの番組でもあるから全然喜べない。
「…あんなって、なかなかにひどいわよ、それ」
「私は…プライベートではピュアな人間でいたいの」
「…こんなこと言ってるけど、どう?」
ピュアがどうとか真顔で言い放つ知宵を無視して、そのままの質問をビジョンに投げかける。
『どうと言われても…僕は"あおさき"好きだからなんとも…』
「そうよねー」
うなだれる知宵を他所に二人で会話を進める。
「ねえ、郁弥さんって八胡南のどの辺に住んでるの?」
『また難しいことを聞くね…』
「ふふ、少し前に知宵の家まで行ったのよ」
『石川じゃないよね?八胡南に来たってこと?』
「正解」
この話はまだしてなかったはず。知宵の実家に行ったとか石川で色々あったとか、その辺は話したけれど、知宵の家までお見舞いに行った話はしてなかったと思う。
『へー、じゃあ僕の住んでるとこ通り過ぎたかもね』
「えっ、もしかして駅から近い?」
『うん。歩いて15分くらいだし』
…はぁ。郁弥さん。言いたいことはわかるの。あたしもそれくらいの時間なら近いって思っちゃうし…でもね?
「15分って近くないから。そんなに歩いたら十分道は分かれるわよ」
『…そうかな』
「あ、納得してないわね」
『…よくわかったね』
表情からして納得してないし、声だって固かったのよ?すぐわかるに決まってるわ。だいたいあたしがどれだけあなたのこと考えてると…そうじゃない。今はそんなことに文句言ってる場合じゃなかった。
「洞察力なら任せなさい。声や表情については演技で学んでるんだから」
今のは演技がどうとか関係ないけど。"あなたのことずっと見てるから"なんて言えるわけないわ。
『はは、そうだね。忘れてたよ。君はそういう子だったね。ところで、洞察力ついでに日結花ちゃん顔赤くなってない?』
「ない!!」
爽やかに笑って変なことを言う彼に即答で返した…はー、顔が熱いっ。
「赤くなっているわよ」
「ぐ…こんなときだけっ。それよりあんたもう吹っ切れたの?」
「ええ。プライベートとはいえ所詮郁弥さん一人のみでしょう?最初から私が"あおさき"の青美知宵だと知っていて話していたとすれば、問題はなくなるわ」
「ふーん…じゃあ聞きたいこと聞けば?ちょうどいいんじゃない?」
『聞きたいことって、僕に?』
「そそ。知宵が質問あるってさ」
よし、落ち着いた。話もそらせたし完璧。
あとは…一つ気になったこと話すくらいかな。聞きたいことは聞き終えたもの。案外家が近いのと知宵の最寄りと同じだったっていうのは予想外だったけどね。
「こ、ここで聞くの?」
「ええ」
『僕に答えられることでよければ、いくらでも聞いてください』
「え、ほんと?じゃあっ」
「ちょっと!」
「…うん、ごめん。後で聞くわ」
郁弥さんのセリフに反応して、つい口を開いてしまった。若干語気強めに声をあげる知宵に少しだけ申し訳なくなる。
…聞きたいことなんでもだなんて普通色々聞きたくなっちゃうわよ……はぁ、今は後で何聞くか考えておこうかな。
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