15. 買い物とお茶
「お客様、何かお探しのものはありますか?」
「あぁ、いえ。探し物は今たくさん試着中です」
苦笑いで受け答えする郁弥さんが目に浮かぶ。
ごめんなさいね。もう3件目なのに買い物付き合わせちゃって。まだまだ終わらないでしょうから先に謝っておくわ。
「あはは、ご兄妹ですか?」
「いえ、従姉妹なんですよ。まあでも、ほとんど
「そうなんですかー。可愛らしい妹さんですね」
「はは、可愛いんですよねこれが。僕は一人っ子だったのでなんでも聞いてあげたくなっちゃって…」
「ふふ、それで今、ですか」
「ええ、はい。仕事帰りに捕まりまして」
…楽しそうに話してるじゃない。
「もう何店舗か回っているようですけど、お疲れですか?」
「ええ、少しは」
そう…よね。全然ゆっくりできてないもの。疲れて当然だわ…。
「でも」
自分が思っていた以上に舞い上がっていたようで、相手のことを考えられていなかった。
外の会話に一人で肩を落としていると、続いての言葉が耳に届く。
「楽しいですよ。家族…そうですね。家族のように接して、話して、一緒に笑えるのは本当に楽しいです」
「…妹さんのこと、好きなんですね」
「はい。大事な家族ですから」
……。
「大事な家族、か」
どうしてかしら…嬉しいはずなのに、聞こえた声に違和感があって…わかんない。悲しいとか苦しいとか辛いとか、そういうの全部混ざったような…。
郁弥さんのことだから表情にも出てるような気がする…よし。
―――ばさっ!
勢いよくカーテンを開けば、服屋の店員らしきおしゃれなお姉さんがいた。もちろん隣には予想通りの消え入りそうな顔をした人がいて、あたしに気付いてすぐさま驚きに目を見開いて苦笑いを浮かべた。
「んん、こほん」
突っ込まれたくないんだと思う。だから取り繕って誤魔化そうとして…ばかな人。これだけ一緒にいて気づかないわけないのに…もう少し、もう少しだけあたしに預けてくれてもいいじゃない…。
「それで、いったいなんの話をしていたのかしら?」
色々考えてネガティブ思考になりつつも、そんな自分はおくびにも出さずいつも通りの笑顔で話す。
「あぁうん。日結花が可愛いって話をね」
「っ!?そ、そうなの」
「はい。お客様がお手すきのようでしたので、少々お話をさせていただいておりました」
やけに丁寧な言葉遣いの店員は置いといて、唐突な呼び捨ては卑怯だと思う。いくら設定だからってあっさり呼び捨てにされても困る。こっちの心の準備だってあるのに。
「…その話はいいわ。それよりどう?似合う?」
その辺のことは後できちんと話しましょうか。
「また買っちゃったわねーお兄ちゃん」
「…そろそろ許してほしいなぁ」
「ふふ、まだだーめ」
結局、さっきのお店でも服は購入した。これで冬用の服も3着。どれもこれもバーゲンで安くなってて助かった。
「僕の心臓に悪いからほんとにやめてください」
「あら、そんなにドキドキしてるの?もしかしてそういう趣味?」
振り向きながら笑顔で問いかける。
妹か…悪くないわね。今でさえ遠慮しないで接してるんだから、もし妹なんてなったら…ううん。甘やかされすぎて堕落しそうだわ。少し考えただけでこれなのよ?だめね。
「ドキドキはしてるけど、趣味じゃないよ…日結花ちゃんだからドキドキしているんだし」
「っ」
さらりと返された言葉にドキリと胸が高鳴った。
「ともかく、兄呼びはやめてほしいな」
「え、ええ。わかったわお兄ちゃん」
「…全然わかってないよね?」
「ご、ごめんなさいわざとじゃないの」
今のはほんとにわざとじゃないのよ。つい流れで言っちゃっただけなの。上手い返事をするどころか口が回らないわ。とりあえず、お兄ちゃん呼びをやめればいいのよね?いつも通りに戻せばいいってことで…。
「まあ…べつにいいよ。嫌なわけじゃないからさ」
ふっ、と視線をそらして小さく呟いた。ちらりと顔を見れば薄っすら赤みが広がっている。
…少し落ち着いたわ。あたしが思ってたよりずっと兄呼びに照れてくれてたみたい。ちょっと複雑。嬉しいには嬉しいけれど、妹は妹で問題色々ありそうだもの。
「それじゃあ次行きましょ?」
冷静を装って言葉を吐き出した。なんとか頭も回るようになったし、一応大丈夫。
「…ねえ郁弥さん」
「…なんだい?」
「また買っちゃったわ」
「うん…」
「これで8着目よ」
「…だね」
お店は5軒目。だらだら話しながら買い物をし続けて、気づいたら8着も購入していた。
「買いすぎだと思うのよ、あたし」
「僕もそう思うよ」
「誰のせいかしら?」
「さぁね」
まったくわからないとばかりに両手を軽く上げてわざとらしく肩をすくめる。
久々にこの人のかっこつけたところを見た…相変わらず違和感なく自然体だわ。変な人。…まあ、嫌いじゃないけど。
「あなたのせいよ?」
「僕の?どうして?」
実際、こじつけなところもあるにはある。でもねぇ…一人だったらこんなに買い込むこともなかったはずなのよ。ていうかこんなに買わないし。
「毎回毎回似合う似合う可愛い可愛いって褒めてきて…買っちゃうに決まってるでしょ!」
「ええ!?そんな理不尽なっ!?」
理不尽じゃないわよ…服を試着するごとに褒めちぎってきて…しかも褒め言葉毎回違うのよ?そんな嬉しいこと言われたら買いたくなるのも当然だわ。
「えーっと、じゃあ次から褒めない方がいい?」
「…なに言ってるの?そんなのだめに決まってるじゃない」
「ええぇ…」
まったく、この人はなにを言っているのかしら。冗談もほどほどにしてほしいものね。
「たくさん褒めつつあたしが買わないようにセーブしてちょうだい」
「そんな無茶な…」
「ふふ、あなたならそれくらいできるわ。頑張って」
「…ほどほどに頑張るよ」
苦笑しながらも頷いてくれた。
さすがね。郁弥さんならそう言ってくれると思ってたわ。あたしも少しはセーブするから、次からは大丈夫でしょ、たぶん。
「とりあえず、今日はここで終わりにしましょうか。これ以上買っても
「おーけー。それで、どうする?」
どうするって…今日のことよね。どうしよう。全然考えてなかった。あたしのやりたいこと終わったし…あっ。
「そうだ。郁弥さんのやりたいことは?」
「僕の?」
「うん」
まだ日が高い位置にあるとはいえ、ここまで付き合わせちゃったからね。なにかあれば今度はあたしがついていくわ。なんなら洋服選びでもいいのよ?
「うーん、そうだなぁ…特にやりたいこともないな、うん」
…そんなことだろうと思ったわ。のんきな顔してるから何もないとは思っていたけれど予想通り。
「…むぅ」
「え、なんで怒ってるの?」
「怒ってないわ。呆れてるだけ」
こんな程度じゃ怒らないわよ。むしろお礼言いたいくらい。だって楽しいんだもの。今みたいなちょっとした会話でもする機会なんてなかなかないからほんとに楽しいの。
でも…楽しんでばかりはいられない。お話をするにしても場所を変えないと。どこかお店入るとか…。
「それはそれで…ええと、じゃあカフェでも入ろうか」
「いいわよ。どこのにする?」
「この辺色々あるから…まあどれもチェーン店だし、この通りのでいいかな?」
「わかったわ。行きましょ」
今いる通りの反対側にもお店が色々あって、そっちにもカフェがあったりする。そこまで有名なお店もないし、ひとまず一番近いところへ行くことにした。
「そういえばさ、日結花ちゃん」
「んー?」
平日だからか人はまばら。
注文したアイスミルクティーをストローで口に含み返事をする。
「今日学校だったんでしょ?」
「うん」
「土曜日なのになんで学校だったのかなって」
学校ねぇ…よく考えたらこの人に学校の話するの初めてかも。お仕事の話は色々してきたしプライベートな話もたくさんしてきたのに、学校についてはノータッチだった気がする。
「んー、気になる?」
「え、まあ、うん」
「む、反応がつまらない…」
「えー…」
ちょっと遊ぼうと思ったらひどく淡白な答えが返ってきた。これは面白くない。楽しいけど面白くない。
「じゃあ…すっごく気になるな。日結花ちゃんのこともっと知りたいからさ」
「っ!…ずるい。だめ!口説くのも禁止!」
「えぇ!?口説いてなんかないよ?」
こんな恥ずかしいセリフ言っといて口説いてないなんて……こっちの気が休まらないから絶対禁止。
「…はぁ」
「な、なにかな?」
じと目で見つめると動揺して詰まり気味な返事をしてきた。
…この人に口説く口説かないの話しても無駄ね。天然で自然に話すから何言っても効かないのよ。
べつに…あたしも嫌なわけじゃないのよ。本心だろうから嬉しいし…。
「ま、まあいいわ。今日は進路調査だったのよ」
「進路調査?」
「そ。あたしはもう決まってるから早めにやってもらったの。空いてる時にやっちゃった方が、ね?いいでしょ?」
「あはは…日結花ちゃんは仕事があるからね」
最終の進路調査なんて2月3月なんだから、予定でいくとあたしだってきっと問題ない。
1月はともかく、2月も中旬を過ぎればさすがに余裕ができるはずだわ。面倒事は先に済ませておきたかったっていうのが本音。それが功を奏して今があるんだから、本当にやってよかった。
「進路調査っていうとさ。日結花ちゃんは結局どうすることにしたの?」
「あれ、言ってなかった?」
「うん」
「そっか。ええとね。あたしは卒業したらお仕事に専念する予定なの。進学はしないわ」
「あ、大学行かないんだ」
「ん、行かないとだめ?」
ここで行った方がいいって言われても行かないけど、そんな風に言われたら少し寂しい…郁弥さんのことだから、"行かなくてもいいよ全然"とかなんとか言ってくれないかな。
「ううん。日結花ちゃんが選んだことだしそれでいいと思うよ。日結花ちゃんの選んだことならどんなことでも応援するから」
「…ありがと」
ふわりと柔らかい笑みを浮かべて嬉しいことを言ってくれた。予想以上の返事。全肯定なんて思ってもみなかった。
…胸の奥がふわふわする。
「…ふぅ、日結花ちゃんもついに社会人なんだね」
「あと数か月なのよね…」
「どうかな。実感ある?」
「んー…」
実感か。どうだろ。これまでは学業とお仕事で忙しくしてきて、これからはお仕事一本。やることもそんなに変わらないと考えると…学校に通わなくなるだけで結構違うのかしら。
「よくわからないわ」
「あはは、そうだね。なってみないとわからないかもね。というか日結花ちゃんの場合既に社会人だから変わらないかな?」
「社会人はともかく、お仕事に専念できるとは思うわ」
「応援するよ?」
「ふふ、ありがとう」
ニコニコと笑顔を浮かべる姿を見て頬が緩んだ。
「あ、そうだ日結花ちゃん」
「ん?」
二人して飲み物を口に入れ、少しまったりしたところで郁弥さんから声がかかる。
「今日これからどうしようか?」
「これからねー…」
時計の針は3を過ぎて、あと1時間もすれば夕方を迎える。
買い物も終えて、一休みもした。この時間からだと映画を見るのもタイミング悪いし、買い物だって今日はお腹いっぱい。
「もう少しここでお話して、それから帰りましょ?」
「わかった。それでいいよ」
わざわざ遅くまで引っ張るのも気が引けるわ。だから今日はこれでいいの。もし引っ張ったとしてもやることないし、そもそもあたし制服だから遅くまで出歩けないのよ。
「…ところで郁弥さん」
「はい」
「眠くなってきたんだけど」
「ええぇ…」
買い物して話もたくさんして、いい感じに疲れて。空調の効いたちょうどいい場所にいたら眠くなっても仕方ないと思う。
「日結花ちゃん寝不足?」
「ううん、ちょっと疲れただけ」
「そっか…」
どことなくしょんぼりした声を聞いて目の前に視線を合わせた。声の通りに少しだけ暗い表情を浮かべている人がいて、一瞬で眠気が飛ぶ。
…こういう、感情が声とか表情にすぐ出るところって素敵だと思う。口に出さないのがいじらしいのよね。
「暗い顔しているけれど、どうかした?」
「え…そんな顔してた?」
「うん」
わかりにくいけど。
隠しきれてないから、よく見ていれば誰でもわかると思うわ。
「…なんというか、日結花ちゃん忙しいのにこんな連れ回してよかったのかなって思ってさ」
「…むぅ」
一理ある。郁弥さんがいなかったらもっと早く切り上げてあっさり終わってるはずだから。ただ、それは彼から誘ってきた場合に限るし、今回はなにを言おうとあたしから誘ったわけで、わざわざ責任感じることもないのに…。
「一つ、忘れてることがあるわよ?」
「え、な、なにかな?」
暗い雰囲気が消えて動揺に変わる。
ん、いい感じ。
「そもそも誘ったのはあたしだってこと」
「それは…でも」
「ああもうっ、うだうだ言わないの!」
「んんむ!?」
ミルクティーのストローを彼の口元に近づけて無理やり口を閉じさせた。
「どう?美味しい?」
「ん」
口を開けないからか、こくりと小さく頷いて意思表示をしてくる。
「はいおっけー、どう?落ち着いた?」
「…ええと」
手を引いて問いかければ、頬を赤く染めて戸惑いがちに口を開いた。
顔色良くなったのはいいにしても、どうして赤くなってるのよ。謎だわ。
「…ストローよかったの?」
「ストロー?……っ」
…お、大きい声出さずに済んでよかったぁ。あぶなかった。今のはギリギリだったわ。そんなの全然意識してなかった…べ、べつに間接キスくらいなんともないわよ。友達ならそれくらい平気だもの…うんうん、あたしは大丈夫。
「え、ええ、そうね。うん。平気よ?気にしてないから。あたしが気にするはずないじゃない。もう郁弥さんってば気にしすぎ」
ぱたぱたと手で顔を仰ぐ。頬が熱い。人差し指で自分の唇に触れると頬の熱が強くなった。
「…はぁ、気にするに決まってるよ」
あたしと同じく指で唇に触れる。彼の唇はアイスティーで濡れているからか薄く光を反射して、つい視線が吸い寄せられた。
い、意識してない!ちょっと見ただけ!
「ええっと、どうしてそんなに気になるのかしら?」
「そんなの日結花ちゃんが可愛いからだよ」
ううう。真っ直ぐ見ないで!普通に言い切らないで!即答しないで!もっとこう…躊躇うでしょ普通!!
「こほん…そ、それは光栄ね。あ、ありがとう」
「どういたしまして?」
なんであなたがキョトンとしてるの…まあいいわ。引きずればそのぶんあたしが不利になる話題は避けましょ。
「話を戻すわ。あたしがあなたといて楽しくなかったかどうか、だったわね?」
「うーん。それは違う、かな。だって日結花ちゃん楽しかったでしょ?それくらいならわかるさ」
ほわりと微笑んで話す。さっきまでの照れはどこにも見当たらない…あたしがまだ引きずってるのに!ていうかそこまでわかってるなら全部わかっててもいいと思うのだけど…。
「うん。楽しかったわ。じゃあ疲れたのも問題ないでしょ?」
「そう、なのかな…」
「…むぅ」
これでもまだ釈然としない顔。
…しょうがない。あんまり言いたくなかったけど言ってあげよう。きちんと話しておかないと納得してくれなさそうだもの。
「郁弥さん」
「ん?なにかな?」
「人が眠るときってどんなときだか知ってる?」
例えば、疲れたとき。身体が心が疲れていたら動くにも動けない。当然よね。
例えば、満腹のとき。お腹がいっぱいで満たされてたら動きにくいし、眠くなるのも当たり前だわ。
例えば、病気のとき。これは疲れてるときに近いけれど、体を治そう癒そうとして頑張るから眠っちゃうのよ。
「疲れてるから、かな」
「それもあるわね。ただ、色々な理由をまとめると、
少しもったいぶった言い方になったかも…直球で話すの難しいのよ。そんなことするのは郁弥さんだけで十分だわ。
「確かに…」
「あたしが眠くなっていたのも当然安心できるからで…もうわかった?」
「つまり、僕は信頼されてるってことだね」
「…やっとわかったみたいね」
自分から"あなたといると安心できるの"とか言うはめになるとは思いもしなかった。まともに彼の顔が見れない…あたし、いつか羞恥で死ぬんじゃないかしら。
「でもさ…そんなに僕のこと信頼していいの?」
「うん?どういうこと?」
「いや…仕事事情とか親御さん事情とか」
「んー…」
たぶん平気。ばれなきゃ平気。お仕事の方はばれても大丈夫。悪いことじゃないもの…ただ年齢が、ね。あたしが20超えていれば特に問題もなくなると思う。それまでは大きく声には出せないかな。いや、わざわざ
「お仕事の方は気にしなくてもいいわ。年齢ならあと数年もすれば20歳だからクリアだし」
「そっかー。交友関係くらい気にならないかもね。ガラが悪い人でもなきゃさ」
「ふふ、そうね。郁弥さんがガラ悪いなんてなったら世界中が悪い人だらけになっちゃうわね」
この人ほど温厚な人はそういないわ。話し方から笑い方、雰囲気だってぽかぽかよ。
「…僕ってそんなにいい人そう?」
「すっごく」
「ううん…」
どこか不満げで、納得してない様子。そんな表情のまま一口抹茶ミルクティーを口に含む。
飲み方も手を使わずストローに口をつける形でちまっとしてる。ちょっと可愛い。
「あら、嫌なの?」
「そうじゃないけど…」
ニッコリ微笑んで聞くも、言い淀んできちんとした答えが返ってこない。
「けど?」
「…そんな良いことした気がしないんだ」
軽く追及しただけであっさり答えてくれた。
良いことって…あたしにとってはこれまでに郁弥さんが話してきてくれたこと全部が良いことなのに…。
「ふーん…どんなことが良かったか知りたい?」
「え、日結花ちゃんわかるの?」
「当たり前じゃない。あたしがあなたに感じてる印象なのよ?」
「…じゃあ教えてくれるかな?」
どうしようかしら。結構恥ずかしいのよね。あたしが彼に抱いてる印象なんて好意的な意見しかないから…やめておきましょ。まだ言わなくていいと思うの。いつかよいつか。こういうのはタイミングが大事なの。
「嫌よ」
「ええ…」
「ふふ、自分で考えることね。いつか教えてあげるから」
「うーん…わかった。考えておくよ」
真面目な顔してる郁弥さんには悪いけど、いつになるかはわからないわ。数週間後か。数カ月後か。数年後か。もっと仲良くなってから話すわね。
「ん。それと、良いことした実感ないならこれから良いことすればいいんじゃない?」
「あ、それもそうだね」
ようやく満足したのかふにゃりと表情を崩して笑ってくれた。
これよこれ。この空気。そこにいるだけで癒されるような、そんな人なのよこの人は。
「話を戻すけれど、あなたが信頼に値するか、だったかしら?」
「ええと、僕を信頼して日結花ちゃんの周りはどう思うか、かな」
周りの人…。どうせ従兄弟とか親戚の知り合いとか説明するんだし、同業の人とお仕事でかかわる人は問題なし。
だからお仕事全般は大丈夫なのよ。ネックになるのは両親。これからも一緒に出かけると考えたら軽い説明くらいしておかないと。ママは…たぶんあんまり気にしない。パパもそこまで気にしない……なんか、割と大丈夫な気がしてきた。
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