第91話 五味の市で魔王と勇者さま、販売するかも? (10)

 まあ、妻の言葉……。自分に娘が似ていると告げられて動揺をする俺自身もどうかしていると思われるのだが。


 一応はちゃんと信用しているのだよ。レヴィアのことは……。妻が俺に告げてくれた。『殿と儂の間には娘が一人いる』と、言ってくれた台詞なのだが。ちゃんと信用もしているし。俺にはレヴィアとの間に娘がいるのだ! と、自分自身に何度も言い聞かせたよ。


 だからレヴィアと、その姫……エヴァを含めて、俺が守るべき家族なのだと。


 ……で、でもね、レヴィアに対して、『姫は本当に俺の娘なのか?』と、いった気持ち……。レヴィアへの猜疑心自体は少なからずある。俺の嫉妬心も含めてね……。


 でもさ、昨晩の妻が漏らした台詞──。


『儂よりも殿に似ているかも知れない?』の言葉を聞き、俺は正直安堵した。


 他人から小さい男だとか? こんな美しい女性を伴侶にできるのなら、少々他人の子が一人や二人いようとも気にすることすら可笑しい?


 それに、お前と別れた後に何人もの雄と交わろうが気にすることもなかろうに? こんなにも魔王は美しいのだから。


 と、囁かれても。やはり俺自身は納得ができないところがあった。


 だって魔王レヴィアタンの最初の男で純潔を奪ったのは俺だから、小さな男と他人から思われようが、レヴィアに対して嫉妬心と猜疑心があったことには間違えない。


 でも娘が俺に似ているとの話しを聞き。俺はレヴィアへの邪な想いは、全くと言って良い程消え失せた。


 その後は、こんな感じで夫婦感は良好──。


 今迄離れ離れで過ごした時間を取り戻すように。傍から俺達夫婦を見てもわかる通りで、大変に仲の良い状態なのだ。


 まあ、昨晩は我が家の娘の話しも色々としたなぁ~。


 後は広島の自宅に帰宅して、早く俺の可愛い愛娘に逢いたいなぁ~。


 と、自身の顔を緩ませ、娘のことを多々思案をしていたら。


「あの~、旦那さま~。この緑色した丸い物は、何ですか~?」


 ん? 今度はレヴィアではなく、我が家の可愛いエルフな奥さまが、夫の俺に問いかけてきたから。


「えぇ~と、どれかな~? ああ、それはねエヴァ~。抹茶豆と言う名前のお菓子だよ~」


 大変に機嫌の良い俺は、高らかな声色でエヴァへと説明をした。


 我が家のエルフな奥さまが指さすお菓子は、エメラルドグリーンの色をした『抹茶豆』と呼ばれる豆菓子だとね。



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