第89話 五味の市で魔王と勇者さま、販売するかも? (8)
「殿~、この黒い物は、なんじゃ~?」
「ん? あっ? これ?」
「うん、そうじゃ~? これじゃ~?」
五味の市の店頭──。出店用の店出しの準備を早々に終えた俺達家族なのだが。未だ開店時間迄には一時間以上もあるので。俺が奥さま二人に開店迄ゆっくりとくつろいでいればいいよと告げると。
魔王な奥さまと勇者な奥さまは、我が家の販売用に並べた商品──。
お菓子屋や豆菓子、ドライフルーツに小魚の味醂干し……。その他の食品包装用のビニールポリの袋に入った多彩な商品達を奥さま二人は興味津々に見ている。
そして何か気になるお菓子があったのだろうか?
魔王な奥さまが、これは何かと指さして訊ねてきたので、俺は確認──。
そして、自身の目に映るお菓子を見て確認すると、こんな感じで説明をするのだよ。
「ああ、これはね~、レヴィア~。家の看板商品の竹炭豆と言う名の豆菓子でね。便秘にも良いとされている豆菓子で。珍し上に、大変に美味しいお菓子だから食べてみて~。レヴィア~」
俺は魔王な奥さまが指さす商品をこんな感じで、笑みを浮かべ優しい声色で説明をしたのだ。
すると我が家の魔王な奥さまは、漆黒の色をした豆菓子に抵抗があるのか?
俺が優しく試食をするようにと告げても、手に取ることをしないで見詰めるだけ。
だから俺は自身の手に握る食品用のトングで、竹炭豆を『カチン!』と掴み──。
そのまま、レヴィアの右の手のひらに乗せた。
「レヴィア、美味しいから食べてみ?」
と、再度優しく奥さまに告げたのだよ。
するとさ、我が家の魔王な奥さまは、俺の強引さにまた諦めたのか?
「うむ、わかった……」と頷き、声を漏らしながら竹炭豆を自身の口へと運んだ。
その姿を俺は呆然としながら凝視──。
我が家の美しい魔王な奥さまの艶やかな唇が動く様子を堪能したのだ。
「ん? お、美味しい……」
我が家の魔王な奥さまの、艶やかな唇が動く様子が止まれば、自然とこんな言葉が流れてきた。
だから俺はレヴィアに、「ねっ? 本当に美味しいだろう、家の竹炭豆は、レヴィア?」と。やはり先程と一緒で俺は、魔王な奥さまに優しく訊ねたのだよ。
「うむ、殿言う通りで、真っ黒い物だから、見た目容姿は余り良くはないが、本当にこれは美味しいな……。味覚の方も儂等の住んで居る世界にはない味覚ではあるが。流石日本のお菓子は美味しくて素晴らしいと言わざるおえない味じゃなぁ~、殿~。この味ならば我が家の姫にも、早く食べさせてやりたい味だよ……。きっと姫も喜ぶと思うぞ、殿~」
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