第58話 魔王さまと勇者さま、日本の宿に泊まるよ! (3)

 宿の女将は、こんな感じで我が家の奥さま二人の容姿を絶賛してくれた。

 だから俺は、嬉しくて仕方がないのと。


 自分の宝物を宿の女将に自慢したくて仕方がないから。


「そうでしょ~。そうでしょ~。女将~。家の奥さま二人の容姿は日の本一だから~」


 と、高らかな声色で告げたよ。


 でッ、今度は苦笑い。『惚気話しはいいから』と、でも言いたい素振りをして、その後、宿の女将は。


「それはそうと? 上島さん? 奥さんは二人揃って外国のお人なのかな~?」


 と、俺に訊ねてきたから。


「えっ、ああ、そうです」と、俺は言葉を返して。『ハッ!』と、思うと。


「そうなのですよ。実は二人揃って、外国生まれの外国育ちで。二人揃って箸が未だ使用出来ないから。できれば二人にはホークを用意して頂けると助かるのですが……」


 と、慌てふためきながら言葉を返した。


 す、すっかり忘れていたよ。多分、二人が箸を使用できないことをね。俺自身も宿の女将に、『家の奥さま二人は外国生まれの女性なのか?』と、訊ねられことがなければ。自分自身もすっかりと物忘れをするところだった。


 だって我が家の魔王な奥さまと勇者な奥さま二人は、余りにも流暢な日本語を使用して俺に話してくるから。俺自身も外国生まれ……。


 ではなく。奥さま二人が、異世界人だということを直ぐに忘れてしまうのだ。

 だから俺は宿の女将に対して、こんな感じで慌てふためきながら言葉を返したのだよ。


 すると宿の女将は。


「ええ、じゃ、上島さん。奥さん二人にホークを用意しますね」


 と、俺に言葉を返してくれたから。「ありがとうございます」と、俺も軽く会釈をしながら言葉を返した。


「ああ、それはそうと、上島さん? 部屋の方は、昨日使用してもらっていた菊の間から、二階の広い桜の間に代えておきましたから。今日はそちらの部屋を奥さん達と使用してくださいね。それと上島さんの荷物の方も、既に桜の間の方へと移動しておきましたから……」


 ん? あれ? 昨日迄俺が使用をしていた部屋では無く。トイレが近い方の部屋へと移動みたい。


 う~ん、どうやら、先程俺が玉屋さんへと人数追加の電話をしたので、いつも俺が使用している一人部屋の菊の間では無く。広い桜の間へと気を遣ってくれて代えてくれたみたいだね。俺の人数追加の電話は、急な話しだったのに。俺は有り難いなと直ぐに思ったよ。


 だから玉屋の女将さんには『感謝!』だと思うから。


「本当に申し訳ございません。ありがとうございます……。わざわざ、広い部屋に迄代えてもらって、本当にすいませんでした」


 と、お礼を告げた


 すると玉屋の女将は笑みを浮かべ、自身の手を軽く振りながら。


「いやいや、別に構わないですよ。上島さんは家の大事な御得意様だから。全然気にしないでくださいよ」


 と、告げてきたのだよ。


 でッ、その後は自身の顎に指を当て──。


「え~と? 後は何かあったかな……?」と、独り言を漏らしながら思案……。


 そして少し間が空けば、何かしら思い出したように彼女は口を開く。


「ああ、そうだそうだ、上島さん? 食事は部屋へと持っていけばいいでしょうか? それとも下の大広間で皆さんと一緒に食べるように準備をしましょうか?」



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