第59話 魔王さまと勇者さま、日本の宿に泊まるよ! (4)

 宿の女将は俺に、今晩の食事の方は、二階の自分達家族が使用する部屋で済ますのか?


 それとも一階の大広間で、他のお泊りのお客さま達一緒に済ますのか? 訊ねてきたのだが。


 我が家の魔王な奥さまと勇者な奥さまは二人揃って、人種には無い、左右に大きな笹耳をお持ちの上に。レヴィアの頭には、水牛のような大きな角まで二本もあるので。


「お手数ですが、二階の桜の間の方へと運んでもらえますか」


 俺はこんな感じで直ぐに玉屋の女将さんへと告げたのだよ。


 だって、そうしないと、家の奥さま二人がいつまでたって安息できない。どうしても一階の大広間だと他人の目が気になるから魔法を解くことはできない。


 そうなると、先程エヴァが俺に漏らした言葉……。


 今晩からやっとゆったりと安息した生活が送れるのと、安眠がとれるから嬉しいといった言葉が実現できなくなる。


 ましてや、家の奥さま達二人は、数時間前迄は、お互いの国の威信をかけ、生死を賭けた争いをしていたわけだから。尚更夫の俺としては、奥さま二人をゆっくりとさせてやりたいのと、二人のことを労いながら晩酌ぐらいはしてやりたいと思うので。宿の女将さんへと俺達家族が使用する桜の間へと、夜の食事を運んで欲しいと嘆願をしたのだ。


 すると玉屋の女将さんは。


「じゃ、上島さん。食事は何時に運びましょうか?」


 と、俺に訊ねてきたので、少し思案を始める。


 今の時間はおおよそ、十八時半前後ではないかと思われる?


 と、なると?


 家の奥さま二人にトイレや洗面所などの器具の取り扱いの説明と……。二人の奥さまをお風呂に入れないといけないなぁ~。(ウフン~)


 まあ、最後に俺が脳裏で漏らした言葉はあくまでも願望であり。奥さま二人に拒否されれば、『シュン』としながら諦めます。はい~と。


 まあ、少しばかり俺の邪な想いの為に話しがずれてしまったが。


 少しばかり時間を遅めにしていれば、慌てて身支度をしないで済むから。


「じゃ、すいませんが。女将……。食事の時間の方は八時でお願いします」


 と、告げた。


「はい、では八時ですね。上島さん……。奥さま達二人も御ゆるりとしてくださいね……」


 玉屋の女将は俺達家族に、こう告げると、宿の奥の部屋と歩き消えていった。


 だから俺も奥さま二人に、「二人ともいこうか?」と、声をかけ。二人の衣服道具や化粧品などが入った二つのキャリーケースを両手で持ちあげ、階段を上り始めたのだよ。


 するとさ、家の奥さま二人も。


「うむ、いくかのぅ~。殿~」


「はっ、はい。旦那さま~」


 と、言葉を返しなから、俺の背につられるように階段を上り始めたのだった。



 ◇◇◇◇◇

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