第55話 魔王と勇者さま、日本で初の買い物をする (16)

 と、俺に不満と諫めの言葉を告げたところで、レヴィアはまた唇を閉じたのだよ。未だ何かこの後に、妻は俺に何か不満を告げたい感じではあったように見えたが。レヴィアはあえて俺に告げなかったよ。まるで俺自身が自分自身で思案をして、考慮して下さいとでも、妻は言いたい様子に見えたのだよ。


 だから俺は、二人の奥さまに「ごめんね、二人とも。今後は俺も気をつけるようにするからゆるして欲しい……」と告げて、手を差し伸べた。


 すると二人は俺に女神の微笑みをくれた。


 まあ、魔王さんと勇者さんなのだが。この世の者とも思えない程美しい二人だから、女神の微笑みだと思う。


 その後は、店内にいるオスと世に呼ばれる者達の羨望の眼差しを一斉に浴びながら俺は、美しい妻二人を両手に抱えながら。奥さまとの初のショッピングを堪能した。


 特にあれ程俺自身、入店するのに抵抗があったランジェリーコーナーの方もいざ入ってしまえば、俺が考える程照れ恥ずかしいこともない。どちらかと言えば、俺にとっては好都合ばかりで、この世の者とも思えない程美しく。その上、素晴らしい容姿を持つ奥さま二人が、俺の好みを聞き購入してくれるから、『やった~』と、声を大にして叫びたい衝動に駆れる方が多かった。


 それと先程御機嫌斜めになった我が家の妖艶魔王さまだが。大変に機嫌も良くして、夫の俺に仲直りの言葉を囁いてくれた。


「殿~、今晩は、この下着を着衣した儂の容姿を見せてやるからの~。楽しみにしていてくれの~。殿~」


 まあ、我が家の魔王さまは、こんな感じで、俺の脳内が蕩けてしまいそうな甘い声色で囁いてくれた。


 それを聞き俺はいつまでも、『うんうん』と、頷き続けた。


 本当に新婚生活はいいなと思いながら……。


 ッて、俺とレヴィアは新婚ではないか? 大きな娘もいるようだから。


 う~ん、でも? エヴァと俺とは新婚だから、『まあ、いいか~』と、脳内で呟き、幸せを堪能しながらショッピングを続けるのだった。



 ◇◇◇◇◇


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