第52話 魔王と勇者さま、日本で初の買い物をする (13)

 まあ、俺自身も、そんなに他人の目が気になり恥ずかしくて仕方がないなら、ランジェリーコーナーから出て、通路で奥さま達二人の買い物が終わるのを待てば良いのでは? と、いうことにもなるし。傍から俺達家族のことを見ている者達もそう思うだろうが?


 実際俺もそうしたい。


 と、いうか? そうしたのだがこんな感じでね。


「レヴィア~?」


「ん? どうした~、殿~?」


「ほら、レヴィアにこれ渡しておくから……」


 俺はこんな感じで、自身の持つ財布をレヴィアに手渡したのだよ。


 すると家の魔王な奥さまは、自身の首を傾げながら。「何だ、これは?」と、訊ねてきた。


 だから俺は、魔王な奥さまに。


「な、何って、この国のお金が入った財布だよ……。俺はこの場にいるから、二人で気に入った物を購入しておいで~」


 まあ、俺は、これといって気にした素振りもしないでレヴィアへと告げた。財布を渡しながらだよ。


 すると今度は、家の魔王な奥さま、何が気に入らないのか? 急に顔色を変え、不機嫌な顔を……。不満をあらわにしながら。


「もしかして殿は? 儂等二人だけでお店に入れと申しているのではないだろうな?」


 と、怪訝しい顔で訊ねてきた。


「ん? そうだが? それが、どうかしたの? レヴィア?」


 余りにも家の魔王な奥さまが不機嫌な御様子だから俺は、恐る恐ると訊ねた。


「ええ~、酷い~。旦那さま~」


 家の魔王な奥さまが、一体何が気に入らないのだろうかと、俺が思案をしていたら。今度は勇者な奥さまが、他人の目など気にせずに声を大にしてこんな台詞を叫ぶ──。


「えっ? えええ~、どうしたの、エヴァ? 急に大きな声を出して、びっくりするじゃない……」


 俺は、人目もはばからず声を大にして叫んだエヴァへと注意──。


 その後は、『どうした?』と、訊ねた。


「どうした、こうしたでは無いぞ、殿~。エヴァが憤怒して、声を大にして叫ぶのは当たり前じゃ~」


 俺がエヴァに訊ねると同時ぐらいに、今度はレヴィアから俺へと諫めの言葉が告げられる。


 俺自身何故だかわからないけれど?


 だから俺は魔王な奥さまに。


「ど、どうしてレヴィアは、俺のことを怒るのだよ? 俺、何か二人の気に障ることをしたかな……」。


 とにかく二人の、俺に対する怒りの感情が良くわからないので。俺は動揺をしながら二人の奥さまに、気落ちをした声で訊ねた。


「だって、旦那さまが~。エヴァ達二人がどのような酷い目に遭おうが、気にもしない素振りで、この場で待つというものですから~。エヴァ達二人のことを旦那さまは、愛おしく大事に思っていないのだと悟りましたから落胆……。声を大にして叫びました。旦那さまは先程、エヴァのことを好きだ! 愛している! 一生寄り添い守ってくれると告げてくれたのに……」


 まあ、何だかわからぬが? 我が家の勇者な奥さまは落胆……。気落ちをした声で俺に不満を告げてくる。


 まあ、告げてくるだけならいいのだが?


 家の可愛いエルフな奥さまの碧眼な瞳を涙で濡らし始め。そして漏らし始めるのだよ。『ううう……』と、嗚咽を漏らしながら泣く。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る