第48話 魔王と勇者さま、日本で初の買い物をする (10)

「……ん?  二人の住んでいる世界には、こんな感じの商業施設はないの?」


 先程から赤穂市のショッピングモールの大きさと煌びやかさに、空いた口が塞がらないといった様子で大変に驚愕をしている我が家のエルフさまと、以前広島市の中心地にある八丁堀の本通りの夜を俺と肩を並べ歩いたことがある我が家の魔王さまへと。俺は問いかけてみたのだよ。こんな商業施設は無いのかと?


「うむ、先程も儂が殿に申したが、こんな巨大で煌びやかな建物は、儂等の住んでいる世界には存在しないのだよ。まあ、大きさだけなら儂の居住しているお城が良い勝負ができそうだが。儂の住んでいる城は、こんなにもネオンと呼ばれる、明るい光が設置してある煌びやかなものではないから。やはり殿~。儂等の住んで居る世界には、こんな建造物はないとは思うぞ~?」


 う~ん、やはり、レヴィアの収めている亜ノ国には、赤穂市にあるような全国チェーンのショッピングモールのような商業施設は無いと告げてきたのだよ。


 じゃ? エヴァの住んで居た俺達と同じ人種が住んで居る国の方はどうなのだろうか? と、俺は思っていたら。


 今迄俺に説明をしてくれていた魔王な奥さまの方が艶やかな唇を開き、エルフな勇者さまへと声をかけ訊ね始めたのだよ。


「なぁ~? エヴァ~? 儂等の住んで居る世界には、こんな巨大で煌びやかな商業施設は存在しないよのぅ~?」


 今迄赤穂市のショッピングモールを呆然として見ていたエヴァなのだが。レヴィアの問いかけに。


「ええ、レヴィアの言う通りですね。エヴァ達の住んで居た世界の王都でも、こんな巨大で煌びやか建造物は存在しませんね。旦那様~。それのこのショッピングモールと呼ばれる建造物に到着するまでの道のりにあった大小様々な建物ですらエヴァの住んで居た王都にはございませんよ。旦那さま~。だからエヴァは先程からずぅ~と驚愕と困惑の繰り返しですよ~。本当に驚いています。旦那さま~。鋼でできた自動車だって沢山停車していますし。このショッピングモールと呼ばれる建物の駐車場には~」


 とにかく家のエルフさまは、興奮気味で俺に話しかけてくる。


 その様子がね、また可愛いのだ。いくらエルフ独特の大きな笹耳がなくてもね『萌萌キュン~』な感じで、声色だってアニメのヒロイン達みたいなキャピキャピした声色だから本当に可愛いくて仕方がない。


 だから俺はエヴァに、「へぇ~、そうなんでね~。それは知らなかったよ。エヴァ~」と、言葉を返すと。


 そのままエヴァのくびれた腰へと、俺の二の腕を回して引き寄せ抱き締める。


 エヴァのことが可愛くて仕方がないから、人目もはばからず抱き締めたよ。


 それとこの美しいエルフの少女は俺の物だと、他の男達に自己主張する為に。


 だってさ、このショッピングモールに着いてから、入店しようと駐車場から歩いていると。俺以外の男達が、家の奥さま二人のことをやたらと見てくるのだよ。

『チラチラ』と、いった様子で。まあ、さり気なく、なのだが、俺の大事な宝物を、自分達の頬を薄くピンク色に染めながら見てくるので。


 俺は歯痒くて仕方がないし。嫉妬心もあらわにしそうなのだよ。


 と、いうか。しているから。このようにエヴァの勇者さまらしくない華奢腰へと、俺の二の腕を回して自身の方へと寄せ引き抱く──。


 すると我が家のエルフさま、新妻らく俺に甘えながら。


「はぁ~い、旦那さまが、エヴァ達の住んで居た世界に未だきたことがないから知らないだけで、実はそうなのですよ~。旦那さま~」


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