第39 魔王と勇者さま、日本で初の買い物をする (1)

「はっ、はい! そっ、そうですか! では、お手数ですがよろしくお願いします」


「(いいえ、こちらこそ、宜しくお願いします)」


「はい、では後ほど伺いますので、すいませんが、よろしくお願いします」


「(いいえ、こちらこそ、お待ちしていますので宜しくお願いします……)」


 スマートフォンを自身の耳に当て──。頭を何度も『ペコペコ』と下げながら会話をしていた俺を、十数年ぶりに復縁した奥さまと、彼女さま? 新妻さま?


 まあ、どちらなのか? 未だよくわからない関係の御二人が俺のことを不安そうに見ている様子が、相手との電話の会話の最中に。俺が横目で『チラリ』と見る度に確認が取れた。


 だから俺は電話を切り終えると直ぐに、我が家の魔王さまと勇者さまへと交互に微笑んで見せたのだよ。


 でないと、俺の宝物である二人がいつまでも不安な様子でいるから。俺自身も二人の百万ドルの笑顔を見ないと安堵できないので、二人の奥さまに微笑んでみせたのと。


「二人とも宿の方の人数追加と食事追加の件は、宿の方も大丈夫だと言っているから心配しないでね……」


 今晩の二人の食事と安眠できる宿をちゃんと確保できたとも告げた。


「そうか~、御苦労だったな、殿~。本当に手間をかけさせてしまった~」


「有り難う御座います旦那さま~。エヴァはこれで野宿をしなくて済みました~。これもみな旦那さまのおかげです~。本当に今晩は久しぶりに安堵しながら暖かい布団に包まり睡眠を取ることができるので、エヴァは大変に嬉しいですよ。旦那さま~」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る