第28話 俺と魔王さんと勇者さん (13)

「しくしく……。許しておくれ殿……。本当に儂が悪かったよ。だからそんなにも冷めた顔で、儂に冷たく接しないでおくれ殿、お願いだから……」


「もういいから~。泣かないでくれよ、お願いだから、レヴィア……」


「いや~ん、未だ儂の対して怒っているもの殿は~。だって~、全く儂に優しくしてくれないもの~。殿は~」


「ほら、これでいい? レヴィア?」


「ん? う~ん。い、いや~ん、やっぱり未だ怒っている殿は~。今儂のことを面倒くさい女だと思って、気だるげにあしらった~。だから殿は未だ儂に怒っている~」


「いや~、レヴィア。本当に俺はもう怒っていないよ~。それに今後は俺の傍にいてくれるのだろう~? レヴィア~?」


「うん、いる。ずぅ~と」


「じゃ、いいよ。もう怒っていない。ほら~、これでいいかい~? レヴィア~?」


 ハァ~ア~。思わず超がつく程長い溜息が俺の口から漏れそうになった。


 まあ、本当に漏れたら大変なので、喉の辺りまで出かけた時に、俺は『グッ』と堪え、耐え忍んだ。


 でッ、傍から見ている皆さんは一体何が起きたのだろう? と、思わず俺達の三人の様子を凝視して思ったのではないかな?


 う~ん、実はね? 泣きながら俺に甘えるレヴィアを見ればわかる通りで。俺と妻であるレヴィアとが口論になってしまってね。十数年ぶりの再会らしいのだが?

 まあ、俺自身、その時の記憶をどうやらレヴィアに消去されているようだから全く覚えていない。


 だから先程レヴィアに俺の妻だと告げられた時に驚愕こそしたが。その後は妻に対して他人行儀で『上村レヴィアタンさん』と、呼んでいた訳で。赤の他人と同じように接していた。


 まあ、当たり前のことだが、十数年も音信不通でご無沙汰もない状態で俺はレヴィアに記憶を消され放置されたのだから。今更女房気取りで嫉妬心をあらわにしながら。


「何で殿は、儂という妻がいるのに、儂等家族の敵である勇者を生涯養い守ると申すのだ! 殿はぁあああっ! 可笑しいではないかぁあああっ!」


 夫である俺に怒号を放ってきた。


 でもさ、十数年も俺を放置して別居生活をしていたということは?


 俺達夫婦は既に他人──。離婚というものが成立しているのと同じだから、レヴィアが俺の奥さま面するのは可笑しいと思うから。


 俺も相手が異世界の魔王であろうと容赦はしないし、言いたいことは言わせてもらう。


 いくら魔王が憤怒して怒りを抑えきれずに俺のことを襲い殺傷しようとも別に構わない。


 どうせ俺は両親が他界してからは一人ぼっちで寂しく暮らしていたから現世には何の未練もない。


「はぁあああっ !お前の方こそ、一体何を言っているのだ! 上村レヴィアタン? 今迄俺を放置していたのに。急に現れて女房気取りをされても。こちらも困るぞ、上村レヴィアタンさん?」


 まあ、俺はこんな感じで、荒々しくレヴィアに怒号を放ってやった。



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